モモです。


久しぶりの投稿になりますが、今回は最近読んだ本について
書きたいと思います。


村上春樹さんの 『アンダーグラウンド』 読んだことありますか?
私は10年くらい前に、村上さんの小説にはまったことがあり、
片っ端から読んでいたのですが、この本の事は知りませんでした。


この本を知ったのは、河合隼雄さんの本の中でした。
何度かこの本について書かれているのを見て、
なぜか、読まなければいけない!
という気になっていました。


図書館で、この本を見つけた時、そのあまりのボリュームには
一瞬ひるみました。(全部で700ページ以上もあったから。)
でも、思い切って借りて正解でした。


内容は、地下鉄サリン事件の被害者やその家族、
治療にあたった精神科医など、約60名の方に、
村上さんがひとりひとりに会ってお話しを伺い、
その内容を、その言葉のままテープ起こしして
1冊の本にまとめたものです。



この本を読んでいてまず、すごいなあ、と思ったのは
村上さんが、ひとりひとりの方について
その外見や話し方、生い立ちやお仕事などから
その方の印象を書いているところです。


インタビュー時間は1~2時間程度ということでしたが、
その短い時間に、その人の生き方や内に秘めた部分を
鋭く洞察しているのです。
もちろん、そこには村上さんのフィルターを通した見方も
あると思うのですが、
この文章を読んでから、個々の方の語ったインタビューを読むと、
まるで実際にその方が目の前に居て、お話を聴いているような
錯覚を受けてしまいます。


これについて、村上さんが本の最後に書いている部分を
抜粋しておきます。


私は人々の語る話をそのままそっくり自分の中に受け入れよう、
血肉として取り込もうとした。意識を集中してできるかぎり
相手の立場になってものを考え、相手の視線でものを見て、
相手の心でものを感じようとつとめた。

    < 中略 >

私は一人ひとりの人生に、あらいがたく魅了された。
人間というものは、人生というものは、じっと目を凝らして
見ていくとそれぞれにこれほど奥の深いものなのかと、
あらためて感心させられた。


次に、この本を読んでみて思ったのは、
ひとつの地下鉄サリン事件というものに遭遇した
これだけ多くの人々が、それぞれ別の捉えかたをしていること。


被害に遭った状況に、若干の相違はあったとしても
体に現われる症状も人それぞれで、その時に感じたことや、
事件後に感じていること、その事件がきっかけとなって
人生に起こった変化も。

すべて、ひとつとして同じものはないんだなあと。


そして、最後の章で著者が、約40ページにわたり
この本を書くきっかけとなった理由、
そしてこの取材を通して何を受け取り感じたのか。
今後の自分自身の作家としての歩むべき道
について語るところは圧巻でした。



ここに、その章を全部抜粋したいぐらいだけど、
残念ながらできないので、機会があったらぜひ読んでみてね。

全編読むのが難しいならば、前書きとあとがきだけでも
とても意味深い内容でした。



この本は、被害に遭われた方を取材して、編集されていますが
この続編として、オウム真理教の信者に取材した本もあるので
今度、ぜひそちらも読もうと思っています。

それについても、いつかここに書ければ、と思っています。