四季のある日本で、その時どきの季節の行事を体感することは、確かな感覚を備え、心を育んでいきます。

 

「春」になる

その節目となる「節分」もまた、毎年の記憶として刻んでいきます。

 

拙著よりのご紹介です。

 

 

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 「鬼は外! 福は内!」冬から春へと季節の変わる時。二月三日は節分。邪気を追い払い、福を呼び込む日本の伝統的行事。豆まき。それは、あらゆる災いを、そして自分の悪い心を追い払って春を迎えるという儀式です。

物心がついた頃より「節分に海苔巻きを丸ごといただく」習慣があったので、節分の海苔巻きは「母の味」に刷り込まれています。母の海苔巻きは、にんじんとちくわが、お出汁とみりんとお醤油とちょっとのお砂糖で炊いてあります。きゅうりとたくわんの細切りが入っています。茹でたほうれん草が彩りを添えます。高野豆腐は、お出汁が含まれていて、海苔巻きに必須の具です。住んでいた土地柄でしょうか、穴子も必ず入っていました。…この「母の味」は、そのまま継承しています。節分には、せっせと海苔巻きを準備します。

こどもに手伝ってもらって一緒に作るのも楽しい思い出に。ご飯が炊けたらすし酢を入れて、うちわでパタパタしてもらいます。巻き簾に海苔を乗せて、ご飯を乗せて、各色の具を乗せて、巻き巻き。米粒が飛び出してきたり、ご飯が一周しなかったり、形はうまくいかないけれど、巻き巻きと。自分で巻いたのり巻きはまた格別です。その年の恵方を向いて、ガブっと丸かじりします。

海苔巻きに「恵方巻」と名がついて全国区になったのは近年のこと。関西地方発祥だそうです。各地域によっていろいろな風習のあることが日本の良さ。それぞれのお住まいの土地の慣習に倣って、伝統を継承していきます。

「鰯の頭も信心から」鬼が嫌いなヒイラギの枝に鰯の頭を刺して、門口に立てます。諺も、言葉だけ覚えようとしても無味乾燥。実体験の中で生きてくるのです。そんな由来を伝えてあげたい夜。

消費者庁から「歯が生え揃う三歳頃まで、豆やナッツ類を食べさせないようにしましょう」と呼びかけられています。窒息や肺炎の恐れがあるそうです。なるほど危険です。こどもは豆をまきながら、ひょいと口に放り込んでみたり歩きながらほおばってみたり。三歳過ぎていてもじゅうぶんに注意します。ちゃんと座って年の数だけ。数え年で一個多くいただく習慣の地域もあります。こどもにはちょっと嬉しい一個に。

夜には、ご家族揃って豆まきを。我が家に福を呼び込みましょう。我が家に春を呼び込みましょう。健康を祈ります。

 

そして翌日は、春立つ日。心なしか空の青さが 春のものに見えてきて。雪の残る中に梅の花がポツンポツンと咲き。遠くからウグイスの声が聞こえてきます。お嬢さんのための雛人形を出したとか、「合格しました」という嬉しいニュースを耳にして。春がやってきます。

 

「母親偏差値(二)」 第四章 季節・行事 より

 

 

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今年の2月3日は、母の介護で家を空けることになりました。

豆を置いて、「まいておいてね」と出かけてきます。

 

…その前に、

毎年恒例の海苔巻きを作っていくことにしました。

 

食べるのは節分の日ではないけれども、

「今年一年も健康に過ごせますように」の祈りを込めて、巻き巻きします。

 

「今日の夕飯は海苔巻きだよ」と声をかけると

「うん」と嬉しそうに出かけていきました。

 

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「母親にも偏差値があった?」…「母親偏差値(二)」がアマゾンにて発売中です。今回はこどもを豊かに育て心を育むためのテーマを集めました。こどもの生活を占める「遊び」と「勉強」、「経験」から得ること、「四季」を感じることの大切、の4項目についての考察。そして、主に親が自身を振り返る場面を集めたエッセイが掲載されています。


子育てにおける、参考にしたいこと・やってはいけない事例などが「偏差値」という目に見えるスケールで表現され、読者が自身で「気づき」を得ることができる内容となっております。「母親偏差値(一)」とあわせてお読みください。(編集)

 

母親偏差値2 母親偏差値1

 

 

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