よく知られた怪談なので、内容は簡単にします。

芳一は安徳天皇と思われる「高貴な御方」の前で平家物語を謡うようにいわれていた。

それが平家の怨霊で、芳一が呪い殺されてしまうと思われたので、和尚は芳一の全身にお経を書いて見えなくした。

ところが耳には書き忘れていたので、耳だけ怨霊にもぎ取られてしまった。

 

平家の怨霊と僧侶というタイアップ。

河童や妖怪、やまんばと対決し、退治する側はなぜか僧侶である。

耳を取られたので耳なし芳一と呼ばれたが、耳成山(みみなしやま)という山が奈良にある。

かつては耳無山と書き、意味もこちらと思われる。

奈良には春日大社があり、春日大社の立つ前は榎本神社があった。

この榎本神社の神(猿田彦または姫神)は耳が悪く、「三尺まで土地をもらう」といわれて承諾したところ、振り込め詐欺よろしく地面の縦横ではなく上下三尺のことだとすかされ、すべての土地、すなわち日本全土を奪われてしまった。

地面の下に埋もれた榎本神の頭に当たるのが耳成山である。

耳の無い(悪い)神の山である。

 

耳とはパンの耳というように、端のことであるとすると、さらにこれを箸とすれば、同じ奈良にある箸墓古墳がある。

この古墳は卑弥呼の墓といわれている。

耳も箸も死を意味するものであった。

春日大社の下に埋もれた榎本神も、実際は死んでいることになる。

春日大社というが、もとは寺である。

 

平家の神は女神の弁天さん、すなわち河童である。

河童の頭は鏡であり、この鏡は卑弥呼の鏡である。

鑑が割れると死んでしまう。

またこの鏡は井戸でもあり、女性器と火山の噴火口や湖をも表している。

仏教の葬式で一膳飯を供え、箸を突き立て割ってしまうのは、女性器に箸を突き立てて死ぬ箸墓古墳の姫、卑弥呼を表している。

春日大社の下に埋められた榎本神もまた卑弥呼なのである。

 

古墳に置かれる埴輪は殉葬者の代わりである。

そのルーツは菅原道真の先祖、野見宿禰にある。

この事績は箸墓古墳の時代のものなのである。

野見宿禰は相撲のルーツでもあり、河童と身代わり人形がつながっている。

 

耳なし芳一の話のルーツは卑弥呼までさかのぼるようなのである。