「歓喜」と「換気」 | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

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国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

 みなさんは「ドーハの悲劇」という言葉を御存じのことと思います。1993年10月28日にカタールの首都ドーハのアル・アリ競技場で行われたFIFAワールドカップアジア地区最終予選「日本代表対イラク代表選」を意味する通称と定義づけられているようです。ワールドカップ出場決定寸前のロスタイムで、イラクに同点に漕ぎつけられ、ワールドカップ初出場の夢が無残にも潰えたことを指します。

 それに対して、一昨年の11月から12月にかけての2022FIFAワールドカップのグループステージE初戦の対ドイツ戦、および第三戦の対スペイン戦における大方の予想を裏切る日本代表の勝利のことを「ドーハの悲劇」に対をなす形で「ドーハの歓喜」とネーミングされてしまった感があります。決勝トーナメントで「ベスト8入り」を目指していた大会だったわけですから、「ドーハの歓喜」は、やや「ネーミング先行」というか、ちょっと安直で大袈裟すぎた気がしなくもありませんでした。まあ、さほど異論があるわけではありません。異論があるのは別件についてです。

 この「歓喜」についてですが、発音をする際のアクセントはどこでしょう?

 

A「歓喜」kanki

B「歓喜」kanki

C「歓喜」kanki

 正解はAです。

 

 ところで、新型コロナの流行以降、学校では感染予防のための換気の励行がなされています。こまめな換気を促す校内放送が頻繁になされます。では、この「換気」を発音する際のアクセントの位置はどこですか?

 

A「換気」kanki

B「換気」kanki

C「換気」kanki

 正解はBです。

 

 このように、「読み」は同じでもアクセントの位置が違うことによって、私たち日本人は会話の中で同音異義語を識別して豊かな日本語の会話を繰り広げることができるのです。

 ところが、最近、学校生活の中で、「換気」を「kanki」と発音している人が多いような気がしてなりません。校内放送を通してもその発音が聞こえてきます。個人的な会話についてまでとやかく言いつもりはないのですが、校内放送というTPOを考えれば、教師も生徒も共通語に沿った発音ができる日本人でありたいものだと思うのです。また、わかればいい日本語発音ではなく、美しい豊かな日本語発音がなされる学校が嘱望されます。

 

 ちなみにこの時、長友選手が連呼して流行語みたいになった

 

「ブラボー(bravo)」

 

ですが、これ、イタリア語です。

 外来語として用いる場合にはそんなに目くじらを立ててどうこう言う必要もないかとは思うのですが、外国語っぽくお洒落に使いたいなら、長友選手のように

 

「ブラボー

 

ではなくて、アクセントを「ラ」において、

 

「ブラーヴォー」

 

と発音したらかっこ良かったのにな、と思います。ま、余計な話ですけど。