「肌色? 橙色?」 | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

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国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

 家庭菜園をしておりますと、しょっちゅうあちこちをすりむきます。絆創膏のお世話になります。アメリカでは、「絆創膏(日本の商品名で言うとカットバン、バンドエイドなど)」に、今まではいわゆる「肌色」だけだったのですが、昨年、新たに黒色が加わったそうです。「黒人の方への配慮」、というよりも、人種によって肌の色は様々なので、一色限定ということに、そもそも配慮不足があったものと思われます。

 ところで、クレヨンや色鉛筆、絵の具の色の名称に、以前は「肌色(はだいろ)」があったのに、現在ではそれがなくなって、いつの間にか「うすだいだい」や「ペールオレンジ」などという言い方に変わったとのこと……。みなさんのお持ちの絵の具などもそうですか? 「ペール」とは「淡い」、「薄い」、「色があせた」、「血の気がない」などの意味です。英語で、

 

「きみ、顔色が悪いよ」

 

という時に、

 

「You look pale.」

 

と言いますね?

 一方、「だいだい色」の「だいだい」って何のことなのか、みなさんは御存じですか? 「だいだい」とは「橙」という字を書きます。柑橘類の一種で、欧米圏では「ビターオレンジ」とか柑橘類全般を表す「シトラス」の中に入れられて一括りにされてしまっているようです。日本では、ポン酢の原料として用いられたり、漢方薬の原料にされたり、皮だけがマーマレードに使われたりしているそうです。果肉自体はあまり生食に適さないのでしょうね。

 でも、最もおなじみなのがお正月の「鏡餅」、「門松」、「しめ飾り」です。みなさんのお家では飾りますか? 今は、安易にみかんを使っちゃうのでぴんと来ないのですよね。そもそも、

 

「なぜ、鏡餅やお飾りにみかんなのかな?」

 

と思ったことはありませんでしたか? みかんは橙(だいだい)の代用(間に合わせ)だったのです。本当はみかんでは意味がないのです。橙は「代々」を意味する縁起担ぎなのですね。

 

「代々、幸せや繁栄、健康が続きますように」

 

ということなのです。

 みかん、伊予柑、オレンジなどは熟すと緑からオレンジ色に変ります。レモン、夏みかん、グレープフルーツは緑から黄色に変わります。熟したら収穫して食べます。ところが橙は、収穫せずにそのままにしておくと、再び緑に戻ってしまうのです。3~4年くらいは緑とオレンジ色を繰り返すそうです。そこから「代々続く」という意味が込められるようになったわけです。

 「肌色」という名称の代わりに「うすだいだい」を用いることになったとしても、そもそも「橙」を知らなくては解決に至らないだろうという思いで長々語ってみたところでした。季節外れなお話でした。