私が応援しているピアノの神の化身「辻井伸行」さんは、
2009年に「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」で優勝した時に、
「ヴァン・クライバーン」さん御自身から「奇跡のピアニスト」だと言われました。
それ以来、「辻井伸行」さんを紹介するキャッチフレーズには、
しばしば、「奇跡のピアニスト」という言葉が使われるようになりました。
では、何故、ピアノの神の化身「辻井伸行」さんは「奇跡のピアニスト」なのでしょうか。
生まれながらの全盲だからでしょうか?
全盲の演奏家は日本にも世界にも何人もいらっしゃいます。
その方々が「奇跡の演奏家」と言われているかと言えば、そうでもありません。
それは、「辻井伸行」さん独特の奏法にあります。
テレビや動画サイトで「辻井伸行」さんの手元を見ていただけると分かりますが、
「辻井伸行」さんは鍵盤を叩きません。
打鍵とはピアノの鍵盤を叩くことで、
弱い音は弱く叩き、強い音は強く叩くものであり、
それがピアノの正しい奏法であると、
日本でも世界でも信じられているようです。
しかし、「辻井伸行」さんのコンサートに行かれた方は、
ご自分が弾くピアノの音や、
他の演奏家のピアノの音と、
「辻井伸行」さんのピアノの音が随分違うことに気が付かれると思います。
「辻井伸行」さんのピアノの音はなんと澄み切った音なのだろうと。
「辻井伸行」さんは生まれながらの全盲の為、
周囲から聞こえる雑音が恐怖でした。
特に大きく聞こえる雑音はとてつもない恐怖でした。
その結果幼少時から、
ご自身が発するピアノの音からも、
徹底的に雑音を排除したいと思い、
日々血の滲むような努力と創意工夫をしました。
その結果、ピアノの鍵盤は底まで叩くと、
ハンマーがピアノ線を叩く音と同じ強さの雑音が発生するので、
鍵盤が底を叩く手前までの距離で、
鍵盤を弱く遅く押して、ハンマーを弱く振れば弱い音が出て、
鍵盤を強く早く押して、ハンマーを強く振れば強い音が出るといことを、
6歳の時に「川上昌裕」先生に出会うまでに徹底的に鍛えました。
「川上昌裕」先生は、「辻井伸行」さんの、
鍵盤上を滑る様に動き、
伸ばした指で鍵盤を押す様に澄み切った音を出す奏法を、
「辻井伸行」さんの素晴らしい個性だと考え矯正しませんでした。
そして、運命の12年間の特訓によって、
「辻井伸行」さんの澄み切った素晴らしい音が確立されるのです。
「辻井伸行」さんのコンサートにいらっしゃった方はお分かりだと思いますが、
「辻井伸行」さんの演奏は実にダイナミックです。
しかも、全ての音が澄み切っています。
最弱音から最強音まで、
どんな超絶技巧の部分も、
全ての音を鍵盤の底を叩かずに、
滑る様に押し込んで音を出しているのです。
その様な演奏をするピアニストは、
世界に「辻井伸行」さん唯一人です。
「ヴァン・クライバーン」さんは、
その様な「辻井伸行」さんを「奇跡のピアニスト」と言ったのです。
ではでは。