イギリスのEU離脱は経済的に合理的な選択だ

ダイヤモンドオンライン
2016.6.30
「イギリスのEU離脱は経済的に不合理な決定であり、世界経済を混乱させる望ましくない決定だ」とされることが多い。しかし、この議論は大いに疑問だ。とくに、金融活動について、イギリスの離脱には十分な理由がある。

大勢だった残留支持の論調離脱で短期的には世界経済が混乱

 イギリスのEU離脱問題に対して、世界の主要な報道機関のほとんどは、残留が望ましいとしていた。ユーロ参加には反対だったイギリスの経済誌「フィナンシャルタイムズ」(FT)も、今回は社説で「残留に1票を投じるべきだ」としていた。また、イギリス財務省、イングランド銀行、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)等のさまざまな機関が、こぞって離脱のコストを指摘していた。

 短期的に見れば、イギリス離脱によって世界経済が混乱することは避けられない。なぜなら、それは突然の体制変更をもたらすからだ。

 以下に述べるように、イギリスとEU加盟国との関係がどうなるかは、今後決められるさまざまな取り決めに依存している。ところが、これらがどうなるかが現時点でははっきりしない。それが不確実性を強めている。現在の世界経済の動揺は、これによるものだ。さらに、離脱派は、最後の段階で、移民問題に焦点を当てた主張を展開した。これが労働者や一般市民の共感を呼び、離脱派の勢力が増したことは無視できない。そしてこれが、「移民を受け入れたくないイギリスの身勝手な決定」という良識派からの批判を強めた。

イギリスの離脱の根底には巨大官僚組織と規制への反発がある

 こうした状況下で、「イギリスの離脱には、経済的な観点から見て合理的な理由がある」と指摘すれば、「何とへそ曲がりのことを言うのか」と批判されるだろう。しかし、それを認識することは、大変重要だ。なぜなら、「イギリスの離脱が経済的に不合理」との考えは、前提に基本的な問題があるからだ。

 この問題の根底には、「巨大官僚組織による規制の強化と、それに対する反発」という問題が横たわっているのである。多くの論調は、ヨーロッパ統合を目指すEUの理念は絶対的に正しく、また単一市場が経済的に望ましいとしている。だから、「イギリスの行動は自国中心主義、孤立主義であり、ヨーロッパにとっても世界経済にとっても望ましくない」という結論になる。

 しかし、以下に見るように、統合がつねに正しいという考えには、再考の余地がある。

 イギリス商工会議所のホームページにあるEU referendum briefingsは、離脱派と残留派の意見を、いくつかの論点について手際よく要約して整理している。以下では、これを参考としつつ、いくつかの論点について考えることとしよう。

むしろEUの規制から逃れるメリットのほうが大きい

 EUは単一の市場であり、自由な経済活動が認められていると言う。しかし、実際にはさまざまな規制が押し付けられる。

 2010年以来にEUが導入した新しい法規制は3500にも及び、イギリスのビジネスに影響している。イギリス商工会議所によれば、EU規制のコストは、毎年76億ポンド(1200億ドル)に及ぶ

 さらに、巨大な官僚組織ユーロクラットに対する人々の不満と反発も大きい。高い給与を得、しかも税金がかからない。そして、規制を押し付けてくる、というわけだ。

 貿易に関して、残留派は、EUに残れば、5億人の単一マーケットへのアクセスを維持できるという利益を強調する。それに対して、離脱派は、EUの外にいてもEUメンバー国と貿易できるし、無関税の取り決めをすればよいとする。その半面で、離脱すれば、EUの法規制やEU裁判所にわずらわされず、EU以外の国との自由貿易協定がやりやすくなるという。

 現在はEU加盟国との間で国境検査もなく、パスポートもいらない。離脱すれば、これらが必要になる。

 しかし、離脱派は、そうなっても通常の貿易を阻害することにはならないとする。そして、非合法の移民や難民、あるいは密輸をコントロールできるメリットを強調する。

 要するに、単一市場へのアクセスは今後の交渉で十分獲得可能であり、むしろ、EUの規制から逃れることのメリットのほうが大きいというわけだ


*私はEU離脱に賛成する立場で、イギリスは海洋国家なのに、なぜ大陸になびくか、という疑問がある。

第二にEUの官僚主義と多くの規制が、EUの本来のグローバリズムの理念と逆行していることだ。

官僚層が特権階級化していて、官僚支配を強めている。

EUの大統領もその官僚の一人にすぎず、カリスマ的な政治家ではない。EU議会は5年に一度直接選挙で選ばれていても議会の力は弱い。

言い換えれば、日本の官僚が優秀だから、いろいろ規制を設けて、自分たちが責任をとらないように画策する。政治家は官僚の言いなりになって原稿を読んで議会で答弁する。官僚を夷のままに使える政治家はよほどのカリスマ性が必要だ。官僚の無作為で事態は停滞する場合もある。

今回のEUの話題を聞いて、例えば「風船を子供が膨らましてはいけない」、「鰹節は輸入できない」とか、あまりにも愚かしい規制があり、それらが多岐にわたれば、何のための市場かわからない。

「規制のための規制」を官僚が作り出して、自由を奪っているのだ。

EUに加盟するメリットが問われているのだ。それに向けてきちんとした回答を出す努力をしていないように見える。


新しいパスポーティング協定ができれば金融機関はロンドンからは逃げない

 金融はイギリス経済の重要なセクターである。全就業者の約4%を雇用し、GDPの約8%を生み、税収の12%を占める。貿易収支にも重要な貢献をしている。

 EUの規制は、保険業に340億ポンドの負担を課しているとされる。他方で、イギリスが離脱しても、EUの規定により、大陸諸国との資本移動や決済は阻害されない。

 金融に関して問題となるのは、「パスポーティング」だ。これは、協定に参加している1ヵ国で免許を取得した業者は、新たな免許取得を必要とせずに加盟地域で金融商品・サービスを提供できるという措置だ。

 残留派は、離脱すればこの権利がなくなるので、金融機関は大陸でビジネスをするために、支店をロンドンから大陸に移すだろうという。 JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモンは、イギリスが離脱すれば金融機関のスタッフはイギリスを逃げ出すとした(6月3日のザ・テレグラフ)。

 FTも、銀行がロンドンから出る準備をしていると報じた(Banks begin moving some operations out of Britain)。しかし、離脱派は、金融機関がロンドンから逃げ出すことはないだろうとする。

 なぜなら、イギリスはEUとパスポート協定を結ぶことができるからだ。EUに所在する金融機関はロンドンで業務を行ないたいと考えるから、こうした協定に応じるだろう。こうして、ロンドンの金融市場はさらに発展するだろうとする。


*離脱派を脅かすための言論に過ぎず、ロンドンの地位は変わらない。むしろEUの制約を受けないことで、金融資金はロンドンに集まるだろう。なぜロンドンから逃げ出す必要があるのか。EU依然においてもロンドンは金融の中心地であった。その地位が変わる要因はないと言える。


金融取引税という大問題ベルギー、スウェーデンも離脱!?

 金融に関する大きな問題として、金融取引税がある。これについては、すでに週刊ダイヤモンド連載「超整理日誌」で述べた(イギリスのEU離脱と金融取引税の関係、2016.3.19)。

 これはEU域内での、株、債券、為替、デリバティブの取引に0.05%の課税をするものだ。こうした税が課されれば、金融取引はロンドンから逃げ出し、シンガポール、ドバイ、ニューヨークなどに移ってしまうだろう。税構想は今年初めに変更され、取引主体のどちらかがEUにいれば、株・債券に0.1%、デリバティブ取引に0.01%の課税をすることとされた。

 この新しいルールの下では、イギリスがEUから離脱しても、EUの金融機関との取引に関しては、金融取引税を免れることができない。ただし、イギリスの金融機関の取引先は、EU加盟国の金融機関とは限らない。イギリスは世界的な金融取引の中心になっており、取引先にはオイルマネーなどもある。したがって、こうした取引について金融取引税の負担を免れることができる効果は大きいだろう

 これに対して、エストニアはすでに反対している。今年の5月にベルギーも反対した。(EU Transaction-Tax Plan on Brink as Belgium Inches Toward Exit)。 この問題は、まだ決着がついていない。

 金融取引税が発端となって、ベルギーとスウェーデンが離脱する可能性も指摘されている


EUという巨大組織につきつけられた重大な疑問

 イギリスは共通通貨ユーロには加盟していない。EUへの加盟も遅かった。 ユーロが導入されて、イギリスの金融業は衰退するだろうと言われた。しかし、実際には、ロンドンに資金が集中し、大陸の金融センターが衰退した。 イギリスの経済成長率は、大陸諸国より高い。失業率もイギリスが低い。

 ユーロに参加しなかったイギリスのほうが、概して、ユーロ圏諸国より経済パフォーマンスが良好だったのである。

 これから分かるのは、EUのような経済統合がつねに望ましい結果をもたらすわけではないことだ。

 すでに述べたように、イギリスのEU離脱によって短期的に世界経済が混乱することは避けられない。しかしこのことと、長期的な制度選択の問題を混同してはならない。

 今回のイギリス離脱の最大のポイントは、「EUという組織に重大な疑問がつきつけられた」ということなのだ。イギリス離脱に触発されて、スウェーデンとデンマークが続くのではないかと言われる。さらに、イタリア、フランス、オランダでも、国民投票を求める声が出ている。

 EU離脱は、イギリスという特殊な一国に限定された問題ではないのである。


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EUそのものの理念は悪くないものだが、EUの在り方が問われているのに反省の声がない。むしろ英国パッシングをしているようだ。やりすぎれば残留派も方針を買えるだろうし、他国への見せしめ的に行動をとれば余計にいやなになるだろう。

ドイツ・フランスが中心になっていたとしても、後は小国ばかりで、国ごとの格差は大きい。貧しい国のボロムアップの政策なしに、大国が域内市場を独占するようなやり方をすれば、格差が一段と広がるばかりで、統一の意味がなくなる。まして新官僚貴族を生み出すだけであれば、このEU自体が衰退する。

英国の離脱を大騒ぎしている人たちの思惑が私にはよくわからない。

日本が中国や朝鮮に依存して経済を運営していたら、主導権を大陸に奪われてしまう。もし、中国や朝鮮の市場がないものとしても、日本が成り立つ政策こそとらなければならない道だろう。

イギリスは、EUに加盟した時から、方針を間違えているのだ。

分裂しても、不自由になっても、そこで身動きもとれずに衰退すると、眺める人が多いけれど、歴史はそんなに単純ではない。もしイギリス人が能力のない民族で、まとまりのない国になるのなら衰退するだろう。だけど、もう一度団結するならば、新たなブリテンが生れるだろう。

イギリスの姿は日本のすがたでもある。

日本は孤高の国家>として存続すればいい。

日本は独自の文明国家であり、

日本は海洋国家である。

また、西洋も東洋も理解できる思想の受け皿を持っている。


「離脱劇に見る若い世代への教育を考える」

今回の選挙で若者が残留派に多くの票を投じたことにある。

おそらく、若い人たちの教育はEUを推進する方向での教育がなされてきたと思う。イギリスの歴史について若い世代が肯定的ではなくて否定的にとらえていて、EUに依存することで未来を描こうとしているように見える。

私にはそれこそが英国の縮小化であり、ヨーロッパ大陸の一部となる傾向に進むものに見えた。

日本では、70年間、平和主義、戦争反対思想に若い世代が包まれて、思考停止状態になっていた。

幸いに、日本の若い世代が、中国の勢いに負けているようには見えないので、未来は独自の道を勧めると思うけれど、やはり歴史の教育はとても大事だということだし、自立の気持ちを強く育む教言も必要だという事だ。本来<自立の精神>などと言うのはイギリスや西洋から日本が学んだものであるのに。

戦後70年、日本とイギリスは真逆の歩みをしてきた。日本はなにもかも奪われて<自尊心>だけを頼りに艱難辛苦を乗り越えて来た。イギリスは覇権国家kら帝国の没落という時代を送ってきた。この70年の2世代の教育が、国内に目を向けるだけの思考と、世界に向ける思考とをはぐんで来たと思う。日本は自虐史観で絶えず西洋を先生と仰ぐような思考を強いられて来た。イギリスはむしろ内向きになっていたのだろうか。


単なる経済の損得で、EU離脱問題を見るのは、賎民資本主義的な金・金・金の思考だ。

欧州自体が中国のマネーに媚をうるような”はしたない”行動に走っている。その結果についていうならば、私は未来が無いように思うだけだ。