少子高齢社会の日本のこれからは、ロボットなどによる自動化、ロボット化やワーキッシュアクトなどの活用で省人化して、労働供給力が減っていってもサービスが供給できなくなったり、質が低下しないように、それらを活用していくことが必要なのだと分かった。

また、自動化、機械化などが、省力化に加えて、人が患者や顧客とのコミュニケーションにかける時間を増やすことができ、質の向上にもつなげられると書いてあり、確かに能登半島地震でも感じたが、人命救助へのロボットの活用によって、救助活動、防災活動の質の向上にもつながるなと感じた。

本書で書いてあるように、少子高齢で労働供給制約のある状態を、チャンスと捉えて、省力化産業で日本が先行していく未来に向かっていくべきだなと感じ、そこに意識を向けていきたい。

 

 

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○労働者減る(労働供給制約)

・2040年に日本では、1100万人の働き手が足りなくなる

・これから訪れる人手不足は「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか」という、生活者の問題としてわれわれの前に現れる。

・人が生活の維持にかける時間が増え、結果として生活に一杯いっぱいで仕事どころではなくなってしまう社会。

・高齢者が現役世代の労働力だけに頼らずに生活したり、機械の力を使ったり、さまざまな人の力を活かす社会へと構造的に変わらなければ、経済成長どころか、“生活”が成立しそうにない。

・2025年に1億2254万4000人、2030年に1億1912万5000人、2040年に1億1091万9000人となっている(いずれも全年齢、男女計)。2025年を基準にすれば、2040年に日本の人口は9.5%マイナスとなる。

・日本では、これまで議論されてきたような「いかに労働参加してもらうか」だけでなく、根本的にパラダイムを変えるような解決策が求められている。それは1人ひとりが豊かに楽しく、さまざまな場で力を発揮できる社会の実現。

・島根県による「しまね女性活躍推進プラン」では島根県の女性の現状が整理されており、そこでは働く女性の割合が全国1位であること、子育て世代の女性の有業率が全国1位であることが国勢調査をベースに報告されている。

・鹿児島県警では2014年度の応募者数は1025人。これに対して2023年度では387人。 1025人から387人だ。私も思わず目を疑った。ここ10年で、じつに6割減。

・大阪府警では、2018年度に1万人台だった応募者数が2022年度は6789人と、ここ数年で3割以上減ってしまっている。都市部・地方部を問わず、このように警察官のなり手も急減している。警察官や消防士の不足も、今後大きな社会問題となっていく。

・ガラスの天井(能力や実績があっても、性別などを理由に一定以上の仕事や役職に従事させないこと)

 

○人手が足りないことに起因してサービス水準を切り下げることになる

・介護現場の問題は私たちの生活の質(QOL)に直結する問題であるし、住宅の建設が遅れたり、宅配サービスが休日に届かなくなったりといったことは早晩起こる可能性が高い。 建設や運輸の人材難の問題は、災害後の支援や復旧の遅れにもつながる。つねに災害と隣り合わせの社会である日本において、大きな問題となっていく可能性が高い。

・ 「輸送機械運転・運搬」 職種、いわゆるドライバー。 これはすでに人の大きな不足が顕在化している職種であるが、2030年に37.9万人、2040年には99.8万人の労働供給不足に陥ることが推定される。2040年の労働需要(413.2万人)に対する不足率は24.1%に達し、つまり「4人必要な仕事に3人しかいない」状況だ。

とくにドライバーの供給制約が顕著となる地方部などでは、配送がまったくできない地域、著しい遅配が前提となる地域が出てくる。

・「建設」では、2030年に22.3万人、2040年に65.7万人の労働供給不足が推定され

2040年の労働需要(298.9万人)に対する不足率は20%であり、道路のメンテスや災害後の復旧に対して手が行き届かず、重大な事故の発生や崩落したままにせざる著しい遅配が前提となる地域が出てくる。

・「生産工程」では、2030年に22.1万人、2040年に112.4万人の供給不足が見込

まれる。2040年の労働需要(8450万人)に対する不足率は13.3%で、2040年の日本社会

 

○日本全体で人が足りなくなる、いわば人材の“ゼロサム、マイナスサムゲーム"なのだから、人を右から左へ動かすことで解決することはない。ある地域に人が動けば、その人が前にいた地域の人手が足りなくなるだけだから。

 

○労働供給制約は近代以降の社会、「人間観」に転換点をもたらす可能性あり。

労働供給制約は、人間の行動におけるさまざまな人とかかわる部分(=活動)の領域の重要性が増し、重要性が増すために促進され、その結果として「労働」事態のあり方を変えてしまう。“遊びが労働の代わりになる”

・週に6~7時間はムダな仕事をしている。

・ムダの抽出と削減を徹底する企業が生き残る

・リモートワークによる通勤時間の縮減はその人の可処分時間を増やす。リモートワークを導入している企業は、従業員の可処分時間を直接的に増やしていることになり、それはじつは労働供給制約社会において重大な社会貢献となっている可能性がある。

・解決策「機械化・自動化」「ワーキッシュアクト」「シニアの小さな活動」「企業のムダ改革とサポート」

・10年前の日本は今の日本とは違うし、今の日本は10年後の日本とも違う。廉価な労働力を今後も簡単に外国から調達できるか。5年後、10年後の東アジアで起こる中国や韓国、(オーストラリア、シンガポールなどとの外国人の若者(主としてインドネシアの人になるだろう)獲得競争に日本が容易に勝てると思っているのであれば、それは10年、20年前の成功体験を引きずっている。

その獲得競争に勝つには、外国人の若者が働きたいと思う国にならなくてはならない。結局そのためには、賃上げを含む待遇改善が必須となる。

・日本の真の成長産業は、アメリカや中国のプラットフォームビジネスやビッグテックの分野正面から戦うことではなく、労働供給制約という日本が先行する環境を活かした強い社会課―題を背景とするビジネス、「省力化産業」。

 

○自動化、ロボット化による省人化

・「機械化・自動化」は人の「仕事」「労働」の可能性を転換する可能性を秘めている。そのポイントは以下の3点。

①長時間労働から人を解放することにつながる

②仕事・労働の身体的な負荷が下がる

③タスクが機械へシフトしていくことで、人はその仕事が本来必要とする業務に集中することができる

・医療や介護の分野では、これまで多くの時間を割いていた日々の記録業務や周辺的な事務仕事から解放され、利用者や患者との1対1の会話に多くの時間を割くことができるようになる。結果的に医療・介護の質の向上につながっていく。

接客・販売業務も同様に、対物業務が減少することで本来の業務である顧客とのコミュニケーションの時間が増える。

・自動フォークリフトや自動搬送機が普及すれば、ドライバーは重い荷物の積み下ろし作業から解放される。 住宅建設の現場では資材の運搬や建具の取り付けなどを機械化し、さまざまなタスクを無理のない仕事にしていくことができれば、高齢化が進む建設作業員の人手不足の緩和にもつながる。

・介護に関しても同様に、間接業務の自動化から進んでいく。ただし、三大介助業務と言われる食事介助、排泄介助、入浴介助などの介護従事者の本来業務は、ゆるやかな省人化が進みつつも、根本的に無人化されることは将来においてもありえない。

・幹線輸送の自動化までこぎつけておく必要がある。そのためには、高速道路における自動運転車の専用レーンの設置やセンサーカメラの配備、高速通信規格のネットワーク拡充が欠かせない。

国土交通省や経済産業省は近々、センサーの設置法や走行ルールを固める方針だという。 公共性の高いインフラを整備していくにあたっては、これからも行政がイニシアティブをとって推進していくことが肝要だ。

・生産性向上のヒントになるのが、鹿島建設が進める「鹿島スマート生産ビジョン」。「作業の半分はロボットと」 「管理の半分は遠隔で」「すべてのプロセスをデジタルに」の3つをコアコンセプトに掲げて省力化を進めている。

このうち遠隔管理はITの活用によりほぼ達成されているが、建設業は無人でのロ

ボット操作が難しい現場も多いことから、「完全自動化はまだ先のこととして、当面

は作業の5割を目標にロボットを実装していく」「技術革新と生産性向上により当社の現場が群を抜いて働きやすいとなれば、その取り組みがまた波及し、人が集まりやすい業界になる好循環が生まれます。その日に向け、建設RXコンソーシアムと鹿島単体の両輪で取り組んでいきます」

・セルフレジの導入で人員を3分の1に削減

カスミは、首都圏のスーパー3社が参画するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス (USMH)の事業会社でありUSMHが推進するデジタルを基盤とした構造改革に取り組んでいる。そのなかで現在カスミのほぼ全店に導入されているのが、スマートフォン決済「スキャン&ゴー イグニカ (Scan & Go Ignica)」。

来店客がスマートフォンにインストールしたアプリを自ら操作し、商品のスキャンから決済までをおこなう完全セルフサービスのシステム。レジに並ぶ必要がないうえ、買い物中に使った金額が把握でき、購入履歴やお得情報も届く。システムの導入により顧客にとっては付加価値が高まり、従業員にとってはレジ業務の負担がなくなった。

・「2040年に予測される介護人材の需給ギャップは、テクノロジーによる効率化だけでは解消できない」

・「たとえば現在、介護職員が担っている仕事の一部を有償ボランティアに移行する、また自立支援の観点も鑑みて、施設の中で比較的健康な方に手伝っていただくといった取り組みも必要になります。 テクノロジーによって容易に介護業務に取り組めるよう、人材の裾野を広げることが重要」

 

○ワーキッシュアクト

・本業の仕事以外で誰かの何かを助けているかもしれない活動、「ワーキッシュアクト」の活動が持続的なかたちで広がっているポイントは、①結果的に"誰かの何かを助けていること、②何らかの報酬”があること、③そして片手間でできること。

・人とのつながりについても、わからないときに人に助けを求めることができる」など、ワーキッシュアクトの活動をしている人ほど強いことが明らかになっている。孤立、孤独が大きな社会問題となって久しいが、こうした人とのつながりの実感がもたらされることがワーキッシュアクトを促進する。

また、ワーキッシュアクトをしている人は、「コミュニティに不満がある場合に、提案するなど自ら変えるための行動を起こす」傾向も強い。

・定年後に幸せに活動を続けている人は、利害関係のない人たちとのつながりを持っていた。さらに、それはいつ解消してもかまわないような、ゆるやかなつながりであった。

・パトラン「登録メンバーは約2500人。 30~50代がメイン層で、子育てが一段落ついた世代が中核となりパトランの基盤を支えています。 仕事の合間に参加している人が多く、パトランしながら職場に出勤する人もいます。」

 

省力化産業によって、労働集約型の生活維持サービスを成長産業にする。 まずここに資本と人材を集中することによって、はじめて人手の取り合いの二律背反を脱し、労働供給制約の隘路を脱出できる。そのためには、先端技術への関心を持ち、あわせて生活維持サービスの現場を経験、体感し人材を輩出していかなくてはならない。 リスキリングでプログラミングを学んだ、というだけではない、現場のリアルを体感する学び直しがあわせて必要だ。逆に、現場のリアルを実感している人たちに最先端技術を優先的に学習してもらうことも有効。