年末年始休みに読む本を買いに、ふらっと訪れた本屋で、新刊の目立つ所に置いてあり、気になったため購入。

池上先生のお話は、やはり分かりやすく、最近の日本のインフレに関する状況については勿論、世界の長者番付の変化や円相場の変遷(歴史)など背景知識も学ぶことができて。(池上先生の他の著書を気になったものは他にも読んでみようと思った。)

 

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〇まずは今の日本が大変な状態にあるんだという危機感を持つこと

・デフレスパイラルから抜け出せない3つのポイント

「少子高齢化」、「お金を使わない」、「企業が稼げない」

 

・物価が上がっているのは事実だが、国際比較で見れば、依然として日本は「安い国」

(日本のディズニーランドの入場券は世界で一番安い(日本は円安が進んだ結果))

 

・円安メリットを活用する。期待できるのはインバウンド。観光庁によると、定住人口が1人分減るたびに年間の消費額は130万円減る。それをカバーするには、国内旅行者が75人が日帰り旅行をすれば1人分の埋め合わせができる。宿泊旅行なら23人の国内旅行者で1人分をカバーできる。

 

・訪日外国人客数は増え続け2023年上半期(1~6月)の外国人客数は約1071万人(推計値)となり、2019年の同期約1663万人(確定値)と比べて6割程度まで回復。

 

・日本企業の内部留保は、2021年度は約516.5兆円、22年度は約554.8兆円に達しました。これだけの大金を企業は自分の会社の中に貯めこんでいる。企業がここまで内部留保を増やすようになった直接の原因は、2008年リーマンショック。(アメリカは内部留保に課税して、企業に積極的にお金を使わせる)

 

・郵政民営化で郵便局を国営から民間企業にしたように、規制緩和を推し進めて自由にお金儲けをしていいという政策をとった。アベノミクスもこの路線を引き継いだ。それによって経済はある程度上向きになったものの、デフレ脱却までいかなかった。しかも、経済成長の果実が十分国民に還元されなかった。給料が上がらなかった。

 

・働く人、特に中間層や貧困層の給料を上げるというのが岸田総理の考え。

看護、介護、保育などで働く人の賃金を上げた。この分野の賃金は国が基準を決めることができるので、月額1~3%程度、段階的に引き上げるという方針を打ち出している。

 

・企業の社員の給料を増やしたら、その会社に対する税金(法人税)を安くする施策。

・中小企業の中にはあまり儲かっていないため、法人税を納めていない企業もかなりある。そうした企業には、逆に国が補助金を出す。

 

・岸田内閣が分配重視、給料引き上げの方針を強調したこともあって、2023年春の労使交渉では、かつてないほどの大幅な賃金引上げが実現した。定期昇給を合わせた23年春の賃上げ率が平均3.58%になったと発表。

 

〇欧米諸国の場合、物価が上がると基本的に賃金も上がっている。

(アメリカの平均年収が約763万円。ドイツ、イギリス、フランスは500万円を超えている。

ところが、日本は韓国にも抜かれてしまい、約424万円。約30年前(1990年)、日本は先進国の中で12位だったが、2020年には22位まで落ち込んだ。)

 

 

〇日本が「安くしないとモノが売れない国」になった理由

一つには不景気が長く続いた点。給料が増えないから値上げもできない。その結果、賃金も物価も上がらなくなった。(デフレ)

売れないから値上げできないとなると、企業が儲からない。儲からないと働いている社員の給料も上がらない。社員やその家族はお金を使わない。みんながお金を使わなければモノが売れない。売れないので企業は仕方なく値段を下げるようになる。(デフレスパイラル)

・日本の場合、正規代理店が値崩れしないように管理しているが、それ以外にいろいろなルートで安く輸入する業者がたくさん存在する。

 

〇円相場の変遷

・1ドルが360円でなくなったのは1973年(昭和48年)。「当分の間、外国為替の売買相場についての変動幅の制限を停止することにした」

・円はどんどん値上がりし、円相場もニュースで取り上げられるようになった。

・1978年(昭和53年)、円相場は初めて1ドル=200円を突破。しかし、一気に進む円高に政府もどうしていいかわからない状況だった。

・円高がもたらしたといわれるのがバブル景気と海外旅行の増加。

・戦後、最も円が値上がりしたのは2011年10月。その額は1ドル=75円台。

・日本政府はアメリカに協力する方針を固め、為替ルートを円高に誘導することを決めた。(1985年9月のプラザ合意)

 

〇日本お金持ちと日本の企業

・「2022年版フォーブス世界長者番付」で1位になったイーロン・マスク氏の当時の総資産は日本円で約25兆円。

マスク氏が23年に2位に落ちたのは、ツイッター社の買収にお金がかかったことと、テスラの株価が下がったことが影響。2023年1位はフランスのベルナール・アルノー氏。総資産約28兆円。ルイヴィトン、ディオール、ティファニーなど世界中の名だたるブランドを数多く持っている会社、LVMHの会長兼CEO。ニューヨークのタクシーで「フランスについて何か知ってる?」と聞いたところ「大統領の名前も知らないけれど、ディオールという名前だけは聞いたことがある」と言われ、ファッションブランドのビジネスの企業を買収して傘下に収めていった。

・時価総額でトップ50以内に入る日本企業が1社だけに減った。日本は世界トップクラスのお金持ちの人数もガクンと減った。

(日本経済がかつての栄光を失い、長い間、低迷していることは明らか)

 

〇人材流出

・1970年代後半から80年代前半にかけての日本は、製造業を中心にさまざまな産業が力強く発展していて、海外に向けて日本製品がたくさん輸出されていた。

・人件費の安い日本、人材が海外流出のピンチ。技術者一人だけではなく、助手も含めチームが丸ごと流出するケースが増えている。

・2011年まで世界一だった特許の出願数が、今は3位にダウンした。(WIPO、2019年)

・台湾の半導体メーカーが九州に工場を作るというニュースが話題になったが、台湾メーカーにすれば、日本は人件費が安いから日本に進出しようという、少し前に日本がアジア各国に工場を作ったの逆バージョンが今起きている。

 

〇景気についてのわかりやすい指標。「日銀短観」「企業短期経済観測調査」

「日銀短観」約1万社の企業の経営者に景気の良し悪しについて聞き、日銀はその結果を集計して公表している。この「日銀短観」をもとに発表されるのが「業況判断指数(DI)」。

鉄鋼、自動車、宿泊・飲食サービスなど業種ごとに景気を聞いて、「良い」と答えた企業の割合が30%、「悪い」と答えた企業の割合が20%だった場合、「良い」から「悪い」を引いて10。これがDI。

・景気が良かった1988年8月のDI(食料品)は19。一方、2023年3月はマイナス11。これだけでも景気の良し悪しがわかる。

 

〇国の財政健全化目標

・国としては「新たに借金をしないようにしよう」という目標は掲げている。具体的には、行政サービスにかかるお金を税金だけでまかなえるようにしようとしている。

これは財政健全化目標と呼ばれて、プライマリーバランス(PB。基礎的財政収支)の黒字化によって達成。

 

・もともと「新たな借金はしない」というのは2011年度に達成する予定だったが、リーマンショックなどの影響もあって先送りになり、借金が増え続けたため2020年度までに達成するという新たな目標を設定しました。

結局、それも難しくなって、現在は2025年度までに達成するというのが国の方針になっている。

新型コロナで国は巨額の対策費を計上した。あの対策費はみな新たな借金。

 

 

〇今回の円安

・今回は円安が急激に進行したため、輸入品が高くなった。

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略の影響でロシア産の石油、天然ガスの供給が減り、ウクライナやロシアからの農産物も減少し、エネルギー価格や農産物価格が高騰した。

・円安がクローズアップされたのは2022年6月。1ドル=135円台になり、「1998年以来24年ぶりの円安ドル高」と報道された。それ以来、円安がじわじわ進み2023年10月27日現在、1ドル=150円となっている

 

・2022年9月22日、政府は急激な円安に歯止めをかけるため為替介入を行った。(為替介入はかなり珍しい。)

・円高になりすぎたため、政府が円高を抑えようとして介入したことが時以来、約11年ぶり。円安を円高に戻そうとして政府が介入したのは実に約24年ぶり。当時、2.8兆円もの大金を使って介入した。

・為替介入は、決定は政府が行うが、現場でお金のやり取りをするのは日銀。

・日銀は金利水準やお札の発行量を決めるという実務をしている。「円安が進みすぎたとき、為替介入をするのか、それともしないのか?」「為替介入をするとしたら、どの程度の規模でやるのか?」といったことは、政治判断が必要。

 

・為替介入で円安を円高に変えるには巨額のお金が必要。これには、外貨準備(政府や日銀が保有するドルなどの外貨資産)を活用。(ドル以外にユーロも保有)全部で日本円にして約190兆円という莫大なお金を保有。

・22年9月の為替介入で使ったのは約2.8兆円。9月22日、1ドルが一時145円を超えた。政府が「これは行き過ぎだと思うくらいの円安になった。そこで円を買う為替介入を実行。でも、すぐに元に戻ってしまった。円安に逆戻りしたため、政府はこの後、22年10月21日、24日と連続して2回目、3回目の介入を実施。3回合わせて使った金額は約9.1兆円。

(為替介入の前にアメリカに相談するのが暗黙のルール。今回も、日本側は1年ほど前から円安を予想して交渉していたといわれている。)

 

〇日本人の気質

・日本語版を出すと評判が落ちる、もしくは評価が厳しくなるから「日本語版は後回しにしよう」「出すのをやめよう」と考えるゲーム会社が増えているそう。

日本人は善意で「こうしたらもっと面白くなるよ」と言っているだけだが、その真面目さが裏目に出ている。

 

 

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