「銭形平次捕物控 橋場の人魚(六)」野村胡堂 | ゆづき24時 2nd

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朗読「銭形平次」

「橋場の人魚」

解説というか雑談、最終回です。

 

「銭形平次捕物控 橋場の人魚」

 

 

橋場へ行くと、伊豆屋へは入らず、裏から廻って、

かねて用意したらしい、一艘の艀舟に潜りました。

「八、頭から、そのを冠れ。少しは埃臭いが、我慢をしろ」
「変な匂いがしますね、親分」
「黙っていろ、舟を少し川の真中へ出して貰うから、

物を言っちゃならねえ」

「ヘエ」
それは
子刻(十二時)近い時分でした。

両岸の灯も消え、吉原通いの猪牙舟の音も絶えて、

隅田川は真っ黒に更けて行きます。

 

 

 

てんとうむし

 

 

もとは お銀のいい人で

向島一帯を縄張りにしていた

侍やくざの 阿星半七郎

 

名前だけ出てきた人物ですが、

この人が住んでいたと思われる「原の郷」

ここだけはちょっと場所がわからなかった。

古地図でも見つからなくて。

 

でも、探ってこいと言われた八五郎が

本所へ向かうから、

きっとそっちの方なんでしょう。

 

 

そして、八五郎が聞き込んできた情報は

 

「あれは潮来生れで、

人魚のお銀と言われた大変な女ですよ」

 

これで、タイトルの「橋場の人魚」

つながってきましたね。

 

ところで、そっかー、

「潮来(いたこ)」って地名なんだー、

と気付く。

茨城県南東部の 潮来市

 

そっかー 橋幸夫さんの有名な曲「潮来笠」

 

イタコの 伊太郎~むらさき音符 

 

は、潮来 出身? 在住?

の伊太郎だったわけですね?

なんとなく、ずっと

恐山のイタコさんが頭に浮かんでいた。

 

や、もう全然 本編に関係ない話で

申し訳ありませんが、

先日観た 野田MAP公演「フェイクスピア」

恐山のイタコが出てきたものですから。

「フェイクスピア」、素晴らしかった!!

 

話を戻します(^^;

 

茨城県の潮来市

霞ヶ浦利根川などがあって、

水には関係が深そうなところ。

お銀が人魚と言われた背景が浮かんできますね。

 

ええ、ええ、先日も書きましたように、

このお銀ってキャラクター

私的には気に入っているのですが、

 

 

「頭へ油をつけるのが嫌いで、

3日に一度5日に一度は洗い髪」にしていると

茶汲み女のお松も証言していますが、

 

つまり、しょっちゅう泳いでいるから

洗い髪の状態のままにしていることが多く、

あまり油も使わないのでしょうね。

 

ということで、絵の方も日本髪というよりは

くし巻きのような雰囲気に。↑

 

 

てんとうむし

 

 

で、先日も書きましたように、

個人的に 人魚モチーフ のお話は

好きなのですよ。

 

多分、子どもの頃に

家にあった絵本の中で いちばん

いわさきちひろさんの絵の

「にんぎょひめ」が好きだった時から。

 

↑いわさきちひろ美術館にも行った

「安吾捕物を巡る旅~後編カレー100人前事件編」から。

 

「にんぎょひめ」

アンデルセンの人魚姫ですね。

なんだろう、

今はわりとハッピーエンドが

好きだったりもするけど、

子ども心に

あの、切ないラストシーンが好きだったのかなあ。

 

その後、大好きな高橋留美子さんが

その後の「人魚シリーズ」となる

第一作目「人魚は笑わない」を描かれたときは

そうりゃあもう大興奮。

 

シリーズの中では「人魚は笑わない」が

好きなのですけども、

その後、単行本のタイトルとなる「人魚の森」

 

今回の「橋場の人魚」も、

水神の森 があって

そこに ミステリアスなお銀という女が

住んでいて…

「人魚の森」という言葉を思い起こさせるような

気がするのですよ。

 

 

てんとうむし

 

 

今回は まあ 注意 ネタバレ 
ってほどでもないですけれど、
一応、お話読んでない、聴いてない、
解決編についてはまだ知りたくない方は
以下 ご注意を。
 
 
 
 
 
伊豆屋の下男・元吉
「今夜 無くなった五百両を探す」と言って
犯人たちが隠した五百両を取りに来るように仕向け、
 
平次と八五郎は
はしけの中に筵をかぶって隠れ、
犯人たちが動き出すのを待ちます。
 
 
 
 
やはり、灯りがパッとついたときに見えた光景は
インパクトのあるものにしたかった。
 
 
調べてみると、ホント、
世界各地に 人魚伝説があるんですね。
 
そんなに詳しいわけじゃないんですけど、
西洋の人魚
妖精や精霊のようなイメージだとしたら、
日本の人魚
妖怪化物のようなイメージ。
 
平次は日本ですからね、
お銀には “日本の人魚” のイメージがある気がします。
ただ美しいだけではなく 少し不気味なような。
 
人魚を食べた人が長寿や不死になるとか、
人魚を見た人が無病息災とか、
「これから病気が流行するけれど、
私の絵を描いてたくさんの人に見せなさい」とか。
 
そうそう、この人↓も 人魚? アマビエさん。
… 魚人?
 
 
高橋留美子さんの人魚シリーズや
日本各地にある八尾比丘尼
(人魚を食べて不老不死になった人物)の
伝説のように、
不老や不死がただ幸せなものかと言ったら
そういうわけでもない。
 
 
人間とは違う生き物として
半分は魚の姿で海に住んでるという人魚もいるけど、
普段は二本足で人間の姿をしているけれど
本来の姿、正体を現すと恐ろしいバケモノの姿に、
っていう場合もあって、
 
フツーの人間から見た場合の、
“妖怪としての人魚が恐ろしい”
というイメージもあるけど、
 
人魚側の立場からしてみると、
同じ人間の姿にはなっていても
寿命の短い人間と一緒には暮らせない、
永遠にひとりで生き続けなければいならないという
“孤独の象徴” としての恐ろしさもあるような
気がするなあ。
 
川での捜索を逃れて、朝、茶屋に戻ってくるお銀。
そこに平次が待っている。
 
 
最後にお銀が寂しい微笑を浮かべるラストシーン、
 
「最後」よりも 
「最期」という字を使ってもいいかもしれないと
思わせるこの場面で 微笑を浮かべるお銀は
やっぱり只者ではないし、
やむにやまれぬ事情があって人を殺めてしまった
同情すべき犯人たちとは違う。
 
フツーの人間ではない気がするし、
平次が「化物だよ」と言うのも頷ける。
 
やっぱり インパクトのあるキャラクターだったなー。
 
 
 
てんとうむし
 
 
最後、八五郎に絵解きをしてやる場面
普段は 帰り道であることが多いのですけど、
 
今回は特別記載はないので
後日談、という形で 平次の家の縁側で、
というのも 良いのではないかと。
 
 
初夏の空を見上げて、
お夏のこと、お銀のことを 考える。
 
う~ん、でも いちばんかわいそうなのは
伊豆屋の主人・徳兵衛だったような気もするなあ。
長男殺されて、次男は行方不明で。

 

 

 

てんとうむし

 

 

ではでは

これにて「橋場の人魚」 終了です。

 

人情、推理、捕物、

というよりは

お伽噺的な情緒のある話だったかな…

 

初夏のひととき、

水辺のお話で

少し涼しい気分になれたらいいかも。

 

 

 

ではではまた。

 

ご視聴ありがとうございました!虹

 

 

 

てんとうむし

 

 

 

【(六)の語句解説など】 

 

(六)

【子刻】 ここのつ 

夜中12時頃 。

江戸時代の時刻の詳しい解説はこちら

江戸時代の時間

 

【猪牙舟】 ちょきぶね

舳先のとがった、屋根のない

細長い小型の舟。

新吉原へ行く客がよく使った。

 

【半刻】 はんとき
約一時間。

 

 

 

てんとうむし

 

 

 

 
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