朗読「銭形平次」は
「正月の香り」、UP致しましたー。
「馬鹿々々しいぢやありませんか、親分」
八五郎が
この季節にしては生暖かい、曇り日のある朝でした。
「何が馬鹿々々しいんだ、朝つぱらから」
平次も朝飯が濟んだばかり、
長火鉢の前に
心靜かに煙草にしてゐたのです。
「安吾捕物 冷笑鬼」 に続き、
“ご隠居さん” の出てくる話… ですが
「冷笑鬼」の殺伐とした感じより
今回のは
「たくあん石の首くくり」
というユーモラスな出だし。
…ユーモラス、なのか?
ユーモラスということにしておきましょう。
なんとも不思議な事件。
そういえば、八五郎が
「澤庵石の首吊りを 検屍したのは、
ケい闢《けいびゃく》以来」
と 言ってますが、
「けいびゃく」
… まあ、幕府始まって以来ってことだよなあ。
一応、辞書で調べとくか、で調べてみたところ
あら? 見つからない。
最近、私の朗読のどれかにも出てきた
言葉なんだけどなあ…
と、よく考えたところ、
正確には
「けいびゃく」 ではなく
「かいびゃく(開闢)」 ですね。
本文に「ケい闢」と カタカナひらがな交じりで
書いてあるのは、
江戸っ子の八五郎の 江戸訛り なんだわ。
そうそう、
私の朗読に出てきたのも
「江戸開闢」だったか「幕府開闢」だったかで、
もう、「開闢」という言葉自体に
江戸幕府が開いた…
ような意味があるのかと思ってたら、
正確には 天地の始まり、世界の始まり、
信仰地としての山や寺院を開くって
意味なんだそうですね。
たくあん石が羽織を着てるって
どういう状態よ?
と、絵を描く際には
ちょっと 悩んだのですが…
上の絵は、たくあん石にしては
ちょっと 大きかったですかね?
しかし、
一貫は、江戸時代で約3.736Kg、
なので、十貫目もありそうな石、は
30~40㎏くらいありそうな石。
で、あんまり 詳しくないのですが、
漬物石ってどんなのがあるんだろう。
今なら、ホームセンターなどに行けば
買えるのだろうか?
などと 漬物石について調べてみたところ…
フツー 漬物石って
1㎏とか 10㎏とか…
大きくても せいぜい 20㎏くらい。
30~40㎏の石って
そうとうでっかい(重い)ですね(汗
業務用かな……?(^^;
でも、実際のところ
お話上、平次や八五郎は
「沢庵石」と言ってるけど、
忠左衛門が言うには、
ホントは 沢庵石ではなくて
土台石の残ったのを
庭石の代わりに据えておいたもの。
「羽織に包んだ澤庵石の十貫目もありそうなの」
という文章は、
「十貫目もありそうな沢庵石」 ではなくて、
“沢庵石の” ような形 の、
“十貫目もありそう” な石、
という意味なのかも。
ん? ん? 伝わるかな……?(^^;
ま、フツーの沢庵石よりは 大きめでもよさそう。
ちなみに 漬物石は、
最初は 材料の2~3倍の重さのもので漬け、
つけ汁があがってからは
半分強の重さにすると 良いそうです(^^;
石の綱をとく 手代兼下男の 宗吉。
その後も、
隠居が寝ているはずだった部屋に
十貫目以上もある石が 放り込まれたり、
隠居の身代わりに寝ていた 宗吉が
大怪我をさせられたり と事件が続きます。
平次たちが駆けつけると、
店の外に出てきた 番頭の 徳三郎。
石の投げられた日は
忠左衛門は たまたま別の部屋に寝ていて
助かったわけだけど、
自分が寝ているはずの部屋に石…
つまり
確実に
自分を狙っている人物が
どこかにいる
っていう状況は、ちょっとこわいなー。
こちらは サムネイルに使った絵の
色違いバージョン。
ではでは、 また。
次回につづく!
【(二)(三)の語句解説など】
(二)
【十貫目】 じっかんめ
一貫は、江戸時代で約3.736Kg、
なので、約37㎏くらい。
【三、四尺】 さんよんじゃく
一尺は約30.303Cmなので、
約90~120㎝くらい。
【番頭】【手代】 ばんとう てだい
江戸時代の商家の役職のひとつ。
番頭は、商家で、使用人の内で最高の地位にあるもの。
10歳前後で小僧として住み込んで、→ 手代 → 番頭 となる。
(三)
【新し橋】 あたらしばし
神田川にかかる橋。現在の美倉橋。
【左義長】 さぎちょう
正月に行われる火祭りの行事。
小正月を中心に、14日の夜、15日の朝などに、
正月の松飾などを集めて焼く。
とんど、とんど焼き、どんど、どんど焼き、さいと焼き
などとも言われる。
【戌刻半】 いつつはん
夜九時頃。
【本所相生町】 ほんじょあいおいちょう
現在の、墨田区両国2~4丁目と緑1丁目あたり。
1丁目から5丁目まであった。
現在もある、両国回向院のあたり?