「銭形平次捕物控 赤い紐(七)(八)(九)」野村胡堂 | ゆづき24時 2nd

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ヤプログ終了のためこちらに移転しました。過去記事順次引っ越し中。

朗読「銭形平次 赤い紐」、

解説&雑談、4回目、最終回です。

 

「銭形平次捕物控 赤い紐」

 

その日は、

昨夜までは 行列に見えなかった、

お多福の面を冠った男が一人、

潮吹の面を冠った市五郎の向うに廻って、

これがまた実によく笑わせます。

 

 

てんとうむし

 

 

今回は、神田祭の間に起こった事件。

 

神田祭

私は行ったことはないのだけど、

山王権現の山王祭とともに

「天下祭」と言われ、

山車が江戸城内に練り入って

将軍の上覧に供した…というのは

有名なところ。

江戸文化歴史検定の過去問にも

よく出てくる。

 

当時は 旧暦の9月15日だったというから

すっかり 秋祭りだと思っていたら、

現在は、5月(隔年、西暦奇数年)なんですってね。

 

とりあえず、

前に 江戸東京博物館の常設展 に行ったときの、

江戸の四季と盛り場のコーナーに展示してあった

神田明神行列の模型神田明神山車の模型

のお写真をどうぞ↓

 

神田明神行列。1/30スケール。

ここに写ってるのは、

大伝馬町の鶏の山車と

旅籠町一丁目の翁の山車かしら。

 

神田明神山車、1/1スケールで迫力ある。

これは 江戸末期の須田町の関羽の山車の模型。

江戸東京博物館へ行った際には

ぜひ、見ていただきたい!

 

 

当時の様子を描いた浮世絵、

歌川芳藤の「神田御祭礼飯田町中坂上ル図」

なんていうのも有名で、

その絵も江戸東京博物館蔵らしい。

ちょっとこちらには載せられなかったけど

ご興味ありましたら 画像検索などしてみてください。

 

 

すみませんが、ここはひとつ、

いろんなもの見て描いた あたしの絵で(笑)。

 

 

そうそう、「赤い紐」本文には、

 

「神輿に続いて 三十六番の山車」

 

とあるけれども、

当時は神幸祭に、

各町から出される三十六の山車

付き添ったそうなんですが、

 

明治に入ってからは

路面電車や電線が整備されて

山車の通行に支障を来すようになり、

さらに 震災・戦災などで

山車が焼失してしまったらしい。

 

当時の 三十六の山車一覧

なんていう資料も 結構 見かけて

それを眺めるのも楽しいんだけど、

 

見る資料によって

その “三十六” が微妙に違かったりもして

 

お話上に出てくる

「金沢町自慢の 坂上田村麿の山車」

っていうのは ちょっと見つからなかった。

 

胡堂先生の創作なのか、

時代によって その三十六が微妙に違うのか。

 

とりあえず、

私の絵の方は なんかいろいろ参考にしつつ、

山車の上の人形は坂上田村麻呂に

しときました。

 

 

てんとうむし

 

 

そうそう、神田明神のHP見てたら、

 

今は 隔年春の神田祭の他に

「神田明神納涼祭り」 っていうの

夏?か秋?にやってるみたいですね。

 

今年は残念ながら

コロナウィルス感染拡大防止のため

中止になってしまったようで。

 

しかし、

youtubeの 神田明神公式チャンネル

「神田明神 X あつ森 納涼祭り」 として

ゲーム・あつまれどうぶつの森 の中で

神田明神納涼祭りを再現した 動画が

あがってるみたいです!

おもしろいので ぜひ見ていただきたい!

 

 

てんとうむし

 

ここからは 多少

注意ネタバレ になりますので…

 

 

このお話の ポイントになってくると

思うんですが、

やっぱり どうも 手拭のくだりが

むずかしいようで、

ちょっと 時系列的に 解説を。

 

最初は

①町内でそろいの手拭をこしらえる

つまり、町内の人たちはみんな

同じ手拭を 持ってるわけですね。

 

②犯人が犯行現場に手拭を落とす

平次が気が付いて 拾ったやつです。

つまり、“手拭をなくした人が犯人”。

 

③犯人が 畳屋の辰蔵の手拭を盗む

自分の手拭を犯行現場に落としたことに

気づいた犯人は、

逃れるために辰蔵の手拭を盗む。

 

④犯人、手拭の端を割いて捨てる

辰蔵の手拭の端には

目印の「た」の字が書いてあったので、

犯人は驚いて 手拭の端を割いて捨てる。

 

⑤辰蔵が 手拭をなくしたと名乗り出る

平次は、辰蔵は犯人ではないと判断。

ということは、

“辰蔵から手拭を盗んだ人物” つまり

“「た」の字の書いてある手拭を持っている人物”

が犯人ということに。

 

⑥犯人、お勢の手拭の端に「た」の字を書く

犯人はお勢に罪を着せようと思ったが、

手拭の「た」の字の部分は割いて捨ててしまったので、

お勢の手拭そのものに「た」の字を書く。

 

↓ さらにネタバレ

 

⑦手拭が 他の人より短い人物が犯人

しかし、平次は辰蔵の手拭を盗んだ犯人が

端を割いて捨てるところまで読んで、

手拭調べの際、

他の人より手拭の長さの短い人物を探していた。

 

※お勢の手拭の「た」の字が偽物だという根拠は

 昼頃 書いたはずの「た」の字なのに

 お勢の手拭の「た」は まだ乾いていなかったから。

 

こんな感じですよ。

 

 

 

てんとうむし

 

 

 

今回は ラストシーンは少し物悲しいお話。

 

でも、わりとこのラストに至るくだりは

私も好きだったり、

傑作選に選ばれることも多かったりするのは、

 

この、正体を隠したお多福の面の男だったり

それについていく市五郎の

ドキドキ感だったり、

 

平次の推理がさえわたったりするところが

みどころなのかしら。

 

 

 

あと、お勢に声をかける 八五郎。

 

 

めったに人を縛らない平次が珍しく… 

の展開ですが、

 

縄もかけずに、

膝の土まで払ってやる平次、

 

ラストシーンの推理から説得のセリフは、

厳しいながらも、

犯行に至ってしまったとはいえ

犯人の辛かった気持ちを思いやる

平次の優しさに溢れていると思うのですよね。

 

 

 

てんとうむし

 

 

というわけで、

今回の「赤い紐」は これにておしまいです。

 

いや しかし、

神田祭そのものには

行ったことなくても、

 

お祭りの夜 の雰囲気って、

なんか お祭りに行ったことのある人は

みんな それぞれ思い出があったりすると思うんですよ。

 

あの、陽も落ちて 夜だけど

なんか 昼とは違う 独特の熱気があって、

あの空気感、

子供の頃 毎年 楽しみだった

夏祭りを思い出す。

 

そんな感じを思い浮かべていただけたら

いいなー なんて思いました。

 

では。

 

ご視聴、ありがとうございました! 虹

 

 

 

てんとうむし

 

 

【(七)(八)(九)の語句解説など】 

 

(八)

【五分】 ごぶ 

一分=約3ミリなので、

1.5センチくらいですかね。

つまり、一寸(約3センチ)の半分。

 

【一寸】 いっすん
約3センチ。

 

 

てんとうむし