やがて来る6月は結婚式シーズン! 友人知人の挙式&披露宴に出席予定の方も多いのでは? そこで、想像してみてほしい。感動的なスピーチをする友人代表や、喜びの涙を流すご両親までもが、実は本人とは縁もゆかりもない「レンタル要員」だとしたら……。
そんなブラックユーモア小説のようなことが、今や現実になってきているという。千葉県にてレンタル家族サービス『はげまし隊』を運営するIさんにお話を伺ってみたところ、最近では結婚式以外にもさまざまな依頼が増え、全国に老若男女の登録スタッフがいるそうだ。たとえば、

・自分は独身主義だが、両親が結婚しろとうるさいので一時的に彼女のフリをしてほしい(30代男性)
・結婚相談所に入会するつもりだが、異性経験がないので不安。予行演習? 的にデートしてほしい(30代男性)
・DVが原因で離婚した元夫に、現夫のフリをして、子供の学資保険の名義を変更するよう説得してほしい(30代女性)
・イケメンと親しくして、彼氏を嫉妬させたい。偶然を装って話し掛けてほしい(20代女性)などなど。

最後のは、カジュアルですがそうとう手の込んだ依頼ですよね……。ちなみに、この彼女はとある社会人向けの専門学校の先生に恋していたので、スタッフのイケメン男子とIさんご自身が出向き、「その先生の授業中にイチャイチャする」「エレベーターに偶然、乗り合わせたフリを装って食事に誘う」などの手に汗にぎる!? 作戦を決行。その甲斐あってか「彼女はその先生とこのGWを一緒に過ごすことになったそうです」とのこと。ちなみに、2006年のスタート以来、これまで結婚式などで「サクラじゃないのか?」と疑われたことは一度もないそう。これまでに新郎・新婦の 同僚・友人役、会社の上司役 、親族役などで様々な役どころをこなしてきたそうだが、「披露宴に出席すると、毎回感動して30分は泣いてしまいます」とのことビックリ!
また、「ダイビングインストラクターの父になりきってほしい」という依頼が来た際は、事前に海水浴に行くなどしてわざわざ日焼けしたのだとか。このきめ細かな役づくり(?)と、感情移入能力が成功の秘訣なのかもしれませんね……。

スタッフはやはり、演技の経験があったり、容姿もそれなりの方が多いんでしょうか? と聞いてみたところ、「最近は不況で仕事が減っているのか、モデルやナレーターの方の応募も多いです。でも、人前で話すことに慣れ過ぎていたり、あまりに美人だったりして、目立ちすぎても困りますので……」とのこと。やはり、あくまで頭数としての普通っぽさが求められるようだ。

「批判もありますが、依頼される方は必死です。批判される方というのは友人や家族に恵まれていたり、積極的な性格だったりして、その必要がない方なのでは。でも、世の中そういう人ばかりではないですから」とIさん。
誰かを騙すことは多大なエネルギーも必要だし、自分自身も心苦しいもの。賛否両論あるだろうが、批判する前に依頼が急増しているという背景にある状況や心理を想像してみるべきかも!?

考えてみれば、赤の他人の葬式に出席し、遺族の代わりに泣きじゃくるプロの「泣き女」という職業は古来より世界各地で存在した。そう考えると、「レンタル家族」は現代的なように見えて、意外と昔ながらのお仕事なのかもしれない。(まめこ)