クントゥル・ワシを訪ねて【前編】 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

クントゥル・ワシへ

 

クントゥル・ワシというのは、ペルー北部の町カハマルカからミニバスとモトタクシー(3輪タクシー)を乗り継いで2時間ほどのところにある遺跡である。

 

われわれはそこに行くためカハマルカからバスに乗り、くねくねとした道をひたすら揺られていった。

道は舗装されており、山々の壮大な景色は開放感があったので車酔いはしなかった。

 

思った通りバスには観光客など一人も乗っておらず、そればかりか乗り換えのため下車したサン・パブロの食堂で

 

「うちの子ども全員と写真をとってくれ」

 

と言われるほどアジア人は珍しい存在らしい。

 

サン・パブロにはホテルがいくつもあるようだが、そこからモトタクシーで数キロの地点にあるクントゥル・ワシ遺跡付近には、ホテルは一軒しかない(と思われる)。

 

それはわたしが行きたいと思っていた博物館の目の前にあり、予約サイトになど掲載されていないので、わたしは博物館にメールを送り宿の予約をした。

返事はなかなか返ってこず、行ったはいいが本当に泊まれるのかと最後まで不安だった。

 

 

こんなに面倒なところに何があるのか。

 

「クントゥル・ワシ」という一般の観光客にはおそらくあまり有名ではない遺跡にどうしても行きたいと思ったのは、出国前に『アンデスの文化遺産を活かす: 考古学者と盗掘者の対話』(関雄二 著)という本を読んだからだった。

 

この本は考古学者によって書かれており、このクントゥル・ワシ遺跡が出てくるのである。

 

わたしは遺跡の考古学的分析については門外漢であるが、この本では地元住民を発掘現場で雇用したり、住民とともに博物館を運営したりする過程が書かれていて、日本が深く関わったこの博物館をぜひ訪れてみたいという気持ちになった。

 

そんなわけで夫にはその旨何度も説明したが、夫は地名すらおぼつかない様子であった。

 

「トゥン……トゥンクル……トゥンクル・ワシ……?」

 

と何度も言い、その度にわたしは

 

「ク! クントゥル・ワシっ!!」

 

と訂正しなければならず、もういい加減にしてほしいものだ。

 

 

 

村の宿にて

 

夕方なんとかクントゥル・ワシにたどり着いたが、案の定ホテルは無人であった。

 

これは想定内の事態であったので、ホテルの目の前の博物館に行き、受付のおじさんに事情を説明した。

しばらくすると学生らしき2人の女性が現れ、半ば蹴っ飛ばすようにホテルのドアをあけた。

 

ようやくチェックインし荷物を置くと、われわれは女性たちに連れられて近くの学校と思われる建物へ向かった。

ここで祭りのようなものが開催されるらしく、たしかに小規模ながら出店が出ている。

 

われわれはきっと、村の一大イベントのタイミングでここに来たのだ。

女性たちに言われるがまま、明日出店で使えるというチキン引換券を買って、その後宿に戻った。

 

やっとわれわれは落ち着いた気分になり、シャワーを浴びた。

温水が出たことにほっとした。

 

しかしほっとしたのは束の間であり、その後再び学校に引き返し、肉の串焼きを屋台で買って宿に戻ると宿の正面玄関が開かなかった。

別の宿泊客が内側から無理やり開けてくれたが、そのとき錠が引っこ抜け、ホテルの正面ドアは出入り自由の状態となった。

 

わたしは「ここは事件など起きそうにない小さな村だ、だから大丈夫」と自らに言い聞かせ、実際われわれは大丈夫だったのでああよかった本当によかった。

 

 

さて、この宿泊所には、やっぱり、Wi-Fiがなかった。

これも想定内である。

 

人に会う予定がない限りSIMカードを購入していないわれわれは、2日間デジタルデトックス状態になった。

 

Wi-Fiが通じないというのは実にいい。

日本のニュースを見てしまうといらぬストレスがたまるからだ。

 

たとえばある記事を見ながらわたしが「一夫多妻を容認するなら一妻多夫も議論すべきだ」と意見を述べたところ、夫と生物学的・社会学的な議論を繰り広げるはめになった。

最後は夫に「頭ポンポン」してもらい事なきをえたが、このように日本のニュースというのは夫婦喧嘩の火種を増やして有害である。

 

現代人にとってぼーっと本を読み進めたり、星を見たりする機会はけっこう貴重だ。

週に一回くらいWi-Fiがなくなればいいのにと思う。

 

 

このように宿は一般的なホテルとは違い、いかにも「宿泊所」という感じでこころもとなかったが、眺めは抜群であった。

 

山々が目の前に広がり、斜面では馬が草を食んでいる。

夫は大きな鳥が宿の真下にとまっているのを見つけ、「あれはコンドルではないか」と嬉しそうな表情だ。

 

わたしも景色の雄大さという点では、どんな林間学校の宿泊所もここにはかなうまいと思った。

そして遺跡の景色もまた、言葉にできぬ壮大さだったのである。

 

後編に続く。

 

 

(村の宿からの眺め)

 

(同じく宿から。これは夕方の景色だったと思う)

 

(カハマルカを散策していたら、特徴的な階段が現れた)

 

(その階段の下で編みぐるみ露店があり、夫が欲しいと言ったので買った。

夫はこれは犬だと言うが、わたしはペルーで食用にされているクイというネズミではないかと思う。

どちらにせよかわいい。

 

マグカップは重くてかさばるのについクントゥル・ワシ博物館で買ってしまった。

発掘された遺物のデザインが使われている)

 

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