悠久のストリング•ホッパー【前編】 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

キャンディ国立博物館にて

 

 

「スリランカ人でもほとんどただ通り過ぎて行くだけなのに、あなたはとってもkeenだから」

 

と言って、keen(熱心)なわたしたちに展示物を丁寧に説明してくれたのは、キャンディ国立博物館のスタッフの女性だった。

 

この国を訪れるまでまるで知らなかったのだが、スリランカの遺物にはライオンをはじめかわいらしい動物がくっついていることが多く、デザイン性や木彫りの技術が高い。

 

キャンディはシンハラ王朝が最後に置かれていた町。

博物館の展示は期待通り歴史にあふれ、

 

「職人技はーい、ぜーんぶ投入!」

 

と言わんばかりに込み入っていてたいへん楽しい。

 

いつものようにカメラとメモの二段構えでじっくり見ていたら、おそらく研究者であろう女性が冒頭のように声をかけてくれた。

正確にいうとこれまた写真を撮りまくっていた夫にまず声をかけたが、いつものように夫が

 

「自分は英語が話せない、ワイフは話せる」

 

と言って英語から逃げたので、わたしのほうに来てくれたのだ。

 

言われなければ注視しなかったような遺物が、彼女の説明によって技術の結晶だとわかる。

 

形態によって違う仕組みが導入されているランプや、植物からオイルを抽出する道具。

ケースのなかの展示品だけでなく博物館のドアも、絶対に外部から開けられない仕組みになっていたり、ちょうつがいを使っていなかったりする。

 

聞けば聞くほどそのテクノロジーに驚かされ、彼女が

 

「かつてシンハラの人々はそれが科学であると知らずに科学を実行していた。

そう表現されているのを本で読んだことがある」

 

と言っていたのが印象に残った。

 

話のなかでその女性は「昔のこと足りる生活のほうがいい面もある」ということも言っていた。

何を指すのか明言はしていなかったが、町を歩いていて思い当たることはある。

空気汚染である。

 

スリランカはバスも車も排気ガスをこれでもかと撒き散らしており、交通量の多い道路では空気が明らかににおう。

健康被害も出ているのではないかと思う。

 

わたしはオーストラリアの先住民アボリジニの生活システムが、周囲の環境と折り合う理にかなったものであったという記述をワーキングホリデー中に読んだことを思い出した。

発展とは何なのだろうかと改めて思わざるをえなかった。

 

 

この女性はわたしのノートを写真に撮らせてほしいと言った。

「こんなに展示を見ていた日本人がいたんだよ」と、同僚などに見せるのだという。

 

たいそうなことは何も書いておらず、それどころかときには遺物が有名人のだれそれに似ているだとか土器の接合がズレているとか書いている。

メモは英語混じりの日本語で書いており彼女は日本語が読めないであろうが、うっかり読める同僚がいたらどうしてくれよう。

 

その女性がガッカリしないことを祈るばかりである。

 

たくさんの面白い情報とあたたかい歓迎をしてくれたこの女性のおかげで、わたしの研究欲はますます刺激された。

 

わたしはスリランカが好きだ。

キャンディが好きだ。

博物館が大好きだ。

 

久々にそのような幸福感で満たされたのだった。

 

 

悠久のストリング•ホッパー

 

キャンディ国立博物館の展示の中にはかつてロイヤル・キッチンで使われていた道具も展示されていた。

 

その一つがこれ。

 

 

これはストリング・ホッパーと言われる料理を作る道具で、ストリング•ホッパーとはそうめんのような見た目の白くて細い麺を円形にまとめたものである。

一度ヌワラ•エリヤの宿でも食べた。

 

研究員の女性によると、

 

「やわらかめの生地を入れて押すと、中にある小さな穴から生地がでてくるの」

 

とのこと。

 

「キャンディは口から何か吐き出す系遺物が多いなあ」などと見た目の愉快さだけに着目していたが、機能もちゃんと備わっているのである。

 

 

女性によるとこのストリング•ホッパーが食べられる店が博物館の近くにあるという。

 

キャンディのロイヤル•キッチンでも作られていた歴史あるスリランカ料理。

そう思うと是が非でももう一度食べなくてはならない。


翌日さっそくその店に出かけ、ストリング•ホッパーと再会を果たしたのだった。

 

後編へ。

 

 

 

(キャンディ国立博物館のお気に入り。

全体にわたって落ち着いた色で植物や動物を描いており、このような彩色は他の地域では見たことがなかった。

ありそうでない美しさ)

 

(国宝級イケメン)

 

(こういう細かい彫りを櫛や飾りにことこまかに施しているのだが、これひとつだけでなくずらーーーっと並んでいるので壮観)

 

(帽子の角がいくつあるかによって、王なのか大臣なのか身分がわかると教わった)

 

 

 

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