最高のタロットデッキは何か? | 直芯のブログ

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 タロットカードに興味を持ち始め、どれか1つだけ買ってみたいと思ってる人。あるいは映画や小説に占いのシーンがあり、そこでどんなタロットを登場させるか悩んでいる作家。タロットカードに興味を持った人は、人それぞれに様々な理由で最高のタロットが何なのか思案するだろう。タロットを買ったことがない人のため、ここに私の経験に基づいた予備知識を書いておこうと思う。
 まず私がタロットに興味を持ち始めたきっかけは、子供の頃に森永のハイクラウンチョコの懸賞に応募し、奇蹟的に当たったタロットカードに端を発する。初めて見るタロットはそれはそれは豪華に見え、牛革のケースに革表紙の解説本、大判の分厚いカードが22枚入っていた。なかなか気の利いた景品である。絵は松下進だったが、今でもこれはヤフオクやメルカリで3千5百円位で手に入る。


 改めてハイクラウンの森永オリジナル・タロットと今の時代のタロットを比べてみると、カードがどんどん豪華になってるような印象を受ける。例えば『エンチャンテッド・タロット』(25周年記念版)は、頑丈な箱の中にタロットカードだけでなく、オールカラーの本と革製のカードケースまで入っている。


 セット内容が豪華になって行くのは結構だが、どのタロットにも何かしら欠点があることを指摘しておきたい。例えば、タロットに興味を持つきっかけになったハイクラウン・タロットだと、大アルカナしか入ってない。大アルカナしかないタロットは結構よくあり、本屋さんで見かけるタロットのほとんどがそうだ。やはりタロットカードは大アルカナと小アルカナを合わせた78枚入ってる完全版でないと満足できない。その点で私はハイクラウン・タロットに不満があった。そこからタロットカードへの遍歴が始まった。
 タロットの知識がない人のために予め説明しておきたいが、様々な美しい絵柄のタロットが洪水のように出版されている昨今、それら全てが作家のオリジナルというわけではない。大元の原形が3種類あり、どのタロットもそのどれかのデザインをアレンジしているに過ぎない。大元の3種類とは『マルセイユ・タロット』、『ライダー・タロット』、『トート・タロット』の3つである。

 それ以外では、自分で描いた適当な絵や加工した画像を、無理矢理タロットカードに当てはめてしまった物もある。この完全オリジナルと言っていいタロットは、大抵カードの意味と絵の内容が一致してなく、こじつけがましい。タロットの意味を深く探って出来上がった絵ではないと知っておくべきだ。例を挙げると『ボイジャー・タロット』『タロー・デ・パリ』が挙げられる。『ボイジャータロット』は写真が美しいので良しとしよう。標準的ではないが、変わり種のタロットとして手元に残しておきたい。だが『タロー・デ・パリ』となるともはや個人の趣味レベルで、こんな物を売るなよと言いたくなる。


 話は戻るが、大アルカナ22枚のみのタロットは避けよと言ったが、次に注意しなければならない落とし穴は、小アルカナが数札であることだ。数札はデザインに手を抜いてるようで実に味気ない。やはりタロットカードを買うなら全部が絵札であることが望ましい。小アルカナが数札のタロットは、最も古いマルセイユ版をモチーフにした系統になる。元々トランプのようにゲームとして使われていたので、数札は絵ではなく記号が描かれているのだ。
 私は最高に美しいタロットは『クリスタル・タロット』『青い鳥のタロット』であると結論を下したいところなのだが、ここが複雑だ。『クリスタル・タロット』は小アルカナが数札であり、『青い鳥のタロット』は大アルカナしか入ってない。その点でこの二者は共に失格なのである。他にもステンドグラス・タロットとして有名な『タロッコ・ベトラーテ』という大変美しいカードがあるが、これも小アルカナが数札である。いくら絵が美しくてもこれらはお薦めできない。


 次に注意すべきは、人物カードの名称だ。トランプでは「ジャック」「クイーン」「キング」の3種類だが、タロットカードでは「ペイジ」「ナイト」「クイーン」「キング」の4種類がある。この呼び方が「プリンセス」「プリンス」「クイーン」「ナイト」になっているタロットがある。さらにそのアレンジとして「プリンセス」「プリンス」「クイーン」「キング」になっていたり、「プリンセス」「ナイト」「クイーン」「キング」もあったりするので、もう訳が分からない状況である。これらの混乱を呼んでいるタロットの原点が、トート版である。トート版の系譜に属するタロットは、このように人物カードがしっちゃかめっちゃかでイメージが掴めない。願わくば避けたいタロットである。
 トート版の系統としては、『ステラ・タロット』『トランス・タロット』等がある。『ステラ・タロット』は韓国の映画にも登場したので、デザインの美しさは折り紙つきだが、全部絵札ながらも人物カードの名称が先述した状態であること、紙質が薄くてトランプのように安っぽいことが減点である。なぜトランプに合わせたようなチープな紙質と小さなサイズにわざわざしたのか疑問だったが、『トート・タロット』を購入して理解できた。『ステラ・タロット』はわざと『トート・タロット』に紙質もサイズも合わせて作ったのだ。だが『トート・タロット』だとデザインのせいか高級感漂うが、『ステラ・タロット』だとそれが仇となってしまうのである。ちなみに『トート・タロット』も気合の入ったデザインゆえ人気のあるタロットで、中にはこれしか使わないという拘りの人もいる。お薦めと言えばお薦めである。


 一方『トランス・タロット』は、クセの強いデザイン故に人気がないため、これを1番として推すことはできない。だが、私はこのタロットが最も使い易くてよく当たるので、個人的には1番のお気に入りとなっている。
 これまで述べた落とし穴を避けると、結局残るのはライダー版の系統なのだが、ライダー版は大アルカナの8と11が入れ替わっているというクセがある。それでも数札や人物カードの混乱に比べれば、大アルカナの順番が違っていようと使う上で大した差し支えはない。従ってライダー版の系統であることが望ましい。世に出ているタロットカードのほとんどが、このライダー版のデザインをアレンジして商品化しているだけなのだ。そしてタロットカードを占いのカードとして定着させたのも、ケルト十字法というスプレッドを世に広めたのも、全てライダー版なのである。みんなが占いとして認識しているタロットカードは、ライダー版のことである。作者のウェイトは偉大な人だと思う。
 このライダー版のアレンジで、ロングセラーに『アルケミア・タロット』がある。面白いことにこのタロットは、私が初めてタロットに興味を持ったハイクラウン・タロットとカードの大きさや厚み、質感が非常によく似ており、革ケースはないが、大アルカナしかなかったハイクラウン・タロットに小アルカナが付いた完全版と見ることもできる。だが『アルケミア・タロット』には致命的な欠陥があり、なんでこんなことをしたのかと作者を責めたくなる。それは何かと言うと、ライダー版の絵を正確に反映してないことだ。特にソードでそれが酷く、ソードの2などハートに剣が刺さるライダー版のインパクトやイーチンの火沢睽にも似た身内同士の傷つけ合いというイメージが台なしになっている。


 最も美しい最高級のタロットとは何か? ズバリ結論を言おう。それは『ムーンチャイルド・タロット』である。このタロットを持ってる人がいたら、誰もがひれ伏すだろう。文句なしに最強だ。かく言う私も持ってない。一時期楽天で1万円で売っていたこともあったが、既に品切れである。誰もが認めるナンバー1は手に入れるのが難しい。そこでその代用となるタロットは何かということが焦点になる。


 もし映画のワンシーンでタロットが登場するとしたら、こんなタロットならシーンを引き立てるだろうなと思うのが『エーテル・ビジョン・イルミネイテッド・タロット』だ。個人的には一番タロットらしくて気に入っているが、飽くまでタロットを次々と買い込んで眼の肥えた私から見てそう思うだけで、初心者が見たらどう思うか分からない。「あっちのタロットの方がきれいだったのに!」と思い、結局それを買って、想像してたのと違うことを思い知るだろう。


 タロットカードにはアールヌーボー調の絵がよく似合う。『エーテル・ビジョン・イルミネイテッド・タロット』以外にも、アールヌーボー調のきれいな絵のタロットは何点かある。私はそれらの欠点を全て挙げることができる。

  • 『アールヌーボー・タロット』・・・女性の人物像が描かれているだけで、タロットの意味と絵は関係ない。姉妹品に『アールヌーボー・ルノルマン』があり、そちらは大変気に入っている。そっちの方がアールヌーボーの良さが活かされてると思う。
  • 『ハーモニアス・タロット』・・・枠のデザインが単調過ぎやしないか? それと絵の内容がオリジナル過ぎるので、このタロット用に全カードの意味を憶え直さなくてはならない。ある意味完全なオリジナルだが、その知識が他のタロットに通用しないとなると論外だ。『カバラ・タロット』もそうだが、こういう自分勝手なタロットは、たとえ絵が美しくても困る。
  • 『タロット・ミュシャ』・・・品質の評判があまりに悪いので購入をやめている。『バロック・ボヘミアン・キャッツ・タロット』で酷い目に遭っているので、それと同じ匂いを感じた。
  • 『ミスティック・フェアリー・タロット』・・・元々妖精をテーマにして妖精を描いてるだけのタロットなので、標準的なタロットではない。
  • 『フェネストラ・タロット』・・・大アルカナと小アルカナで明確に枠のデザインを使い分けているのが気に食わない。先述した『タロット・ミュシャ』も同じ。
  • 『ムーンガーデン・タロット』・・・枠のデザインは素晴らしいが、印刷が網割れしている。これはあり得ない。それと『ライダー・タロット』の分かり易い絵を反映しているとは言えず、閃きが湧かない。

 というわけで、この中で変わり種として手元に残したいと考えているのは『ムーンガーデン・タロット』だけだ。
 私はルノルマンカードでは2つ気に入ってる物があり、それが『アールヌーボー・ルノルマン』『ゴールデン・ノストラダムス』だ。後者はルノルマンカードとは言えないが、あまりにキンキラキンの金箔がきれいである。両者の美点を一つにしたようなタロットが『エーテル・ビジョン・イルミネイテッド・タロット』なので、これを推した。


 アールヌーボー調以外でもう一つ忘れてはならないのは、CG系のデザインである。この系統では『イルミナティ・タロット』というロングセラーがあるが、私は絵がグロテスクで好きではない。タイトルの「イルミナティ」は秘密結社のことではなく、デザイン的に輝かしいという意味である。


 私のお薦めとしては『ミスティック・ドリーマー・タロット』である。このタロットはとにかく美しさに拘っているため、描かれてる人物は極力美しい女性にしている。何より絵やデザインが美しく、スプレッドを並べただけでも目の保養になる。そして絵の内容がライダー版に忠実で、一目見ただけですぐにライダー版の絵が思い浮かぶ。ただ欠点は、ライダー版に忠実に描いているくせに、ペンタクルの10が生命の樹の配置になってない。世の中のタロットカードのほとんどもそうなってないが、これほどライダー版に忠実ならそこも忠実に従うべきだ。ペンタクルの10が生命の樹の配置になっていることを知らずにデザインしたのではないかと勘繰ってしまう。昔、子供向けのボード・ゲームにポケッタブルというシリーズがあった。その中にもタロットという商品があり、カードは小さ過ぎて使えないものの、アニメ的な絵は素晴らしいものだった。しかし、ペンタクルの10が生命の樹の配置になってないのが気に入らなかった。『ミスティック・ドリーマー・タロット』も『アルケミア・タロット』もそれと同じ。


 『ミスティック・ドリーマー・タロット』とよく似たタロットに『チャクラ・ウィズダム・タロット』がある。絵を描いてる人が同じ人ではないかと疑ってしまうほどよく似ている。描かれている人物のほとんどが美人な女性だ。だが難点は、ライダー版の系統でありながら絵の内容がパッと見で分からず、ちょっとアレンジし過ぎかなというきらいがある。でも、私はなぜかこのカードと相性が良く、よく当たるので頻繁に使っている。すると気づいたのだが、『チャクラ・ウィズダム・タロット』と『トランス・タロット』は同じ系統のタロットだった。デザインの雰囲気は全く違う。だが、ペンタクルをコインと呼ぶ点、そして人物カードが「プリンセス」「ナイト」「クイーン」「キング」になっている点が同じだ。このような共通点を持つタロットは他に見当たらない。


 CGを駆使したデザインの系統で、これはないだろうと思ったタロットは『アーキオン・タロット』である。熱烈なファンもいるようだが、こんな手を抜いたやっつけ仕事のような単調なデザインはないんじゃないかと私は思う。


 アールヌーボーやCG系以外では、漫画調やイラスト調のタロットがある。私はこの世の全てのタロットを手で触って確かめたわけではないので、狭い知見の中での独断になってしまうが、特筆しておきたいタロットに『シャドウスケープ・タロット』がある。


 なぜこれを取り上げるのかと言うと、イラスト自体は人それぞれ好みの問題になるが、それ以外に関してはほぼ完璧にこれまで述べた理想の条件を満たしているからだ。全てが絵札であり、大アルカナと小アルカナでデザインの区別がなく、人物カードも「ペイジ」「ナイト」「クイーン」「キング」という素直な表記になっている。何より凄いと感心したのは、絵がほぼ完全なオリジナルなのである。もっとも、トート版系統のタロットにはオリジナルの絵が多いが、それでもどこか数札に近いデザインになっている。かと言ってライダー版の絵だって、よく見ると大したことない。ワンドの札には必ず棒が描かれているし、ソードは剣、カップやペンタクルも同様にそれぞれのスートが描かれている。例えばペンタクルの8なら、絵の中にペンタクルが8つ描かれているのだ。そういう意味では、絵札と言っても数札に近い側面もある。ところが『シャドウスケープ・タロット』の絵は必ずしもそうとは限らない。1枚1枚が完全に絵であり、それでいてライダー版の意味から遠く離れてない。オリジナルと言っても『ボイジャー・タロット』や『タロー・デ・パリ』のようなこじつけもなく、『ハーモニアス・タロット』や『カバラ・タロット』のように自分勝手な意味づけもない。ほぼ完璧なオリジナル・イラストを描き上げているのだ。見ようによってはこれは革命的である。
 「悪魔」や「死神」や「ソードの10」等、不幸のカードがあまり怖くないという理由で、『シャドウスケープ・タロット』を使っているプロは結構いると聞く。値段も2千円程度で手に入るので、1人で2つも3つも買ってストックしとくにもいい。お薦めである。

 最後に、私が今まで買った中で最悪だったタロットを挙げて締め括ろう。最悪のタロットは『バロック・ボヘミアン・キャッツ・タロット』である。6千円もした最高値のタロットだが、常識では考えられないほど品質は最低だった。カードの体を成してない。(理由もなく)高い物ほど品質が悪い、これは物を買う上で広く通じる原則だと思う。

 

 

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