『王様と私』観てまいりました!
すみません正直虚無を予想していたのですが、めっちゃめーーーーっちゃよかったです。
既に公演自体は終了していますが、一応ネタバレしています。↓
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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高校時代に英語の授業で見た時は「いきなり死んだな」という印象しかなく、昨年末に改めて映画を観ました。
やっぱりちょこちょこ出てくる男尊女卑とかオリエンタリズムが引っかかってイマイチ理解できなかったんですよね。
ユル・ブリンナーの役作りもあまり好きではありませんでしたし、70年前って怖…くらいに思っていました。
 
で、実際観劇して逆に70年前にこの作品がつくられていたことに驚きました。
絵柄こそ往年のディズニーアニメーション映画のようですが王様とアンナの関係性は恋愛関係ではなくまさに現代社会が求めている人間同士の絆です。
でもこの2人、恋愛関係にはならないけど親密になるまでの道のりがきちんと描写されていて、その芝居の絶妙な間に2人の心の機微が伝わりロマンスが生まれる直前のトキメキが止まりませんでしたね。
アンナの東洋蔑視vs王様の女性蔑視で最悪ミュージカルが生まれる可能性だって十分あったのに…小林さんなのでそこは大丈夫だろうと思っていましたが、流石でした。
しかしそれでもこんなに頭を働かせたミュージカルは久々かもしれないです。エリヘレやCFAなど比較的最近作られたミュージカルって今の価値観に即して作られている作品が多いので、初見でもわかりやすいんでしょうね。
ほんとに作品の表面だけすくうと(この表面が看過できない価値観に覆われている)イライラして思考停止してしまいそうなのですが、そこに気を取られると核心まで辿りつかない、このあたりが古典の難しさなんでしょうか。
ただ今回の新演出版も含めタイで上演禁止されるのは当然だと思いました。ラムゼイ卿が到着した時の妃達やクララホム、役者さん達のお芝居は笑ってしまいますがこういうシーンを外国人が作って外国人が笑う図ってすごくグロテスク。
 
 
作品の感想とはずれますが、この主演2人×古典作品で連日満員御礼なのもびっくりしました。正直日生3週間と聞いた時は、これ売れるのかなぁ〜…と思っていたんです。新演出ではありますが新作ではないのでリピーターも見込めないだろうし、歌ウマ好きのミュージカルファンならこの2人は避けそうだなと。
なので何回か見て好きそうだったら公演期間中に増やすかな、と2月あたりにとりあえずナビザから3枚取り、3月末に覗いたら完売していました。あぶねぇ…。まあFCでも3枚取っていたので計6回は観ることができたのですがもっと観たかった。
 
 
そんな主演2人ですが歌も素晴らしく、何と言っても芝居の相性がとても良かった。
北村一輝さん×明日海りおさんの相性がいいなんて誰が思いつくんだよ…。
ほとんどの方の感想に書かれていますが2人がとにかくチャーミングで愛すべき意地っ張り。王様もアンナも現代の我々からすると受け入れられない価値観を持っている部分もあるのですが、それを差し引いても有り余る可愛さでした。
2人の掛け合いも息がぴったりで、東京千秋楽近くではお互いに色々仕掛けあったりしているように観えました。仕掛けあってやり返す様子がもう可愛くて可愛くてよだれ 
正反対だけど、どこか似た者同士な2人が愛おしかったです。
だからこそやっと分かり合えた瞬間の後に訪れる決裂の悲惨さに胸が引き裂かれそうでした。王様とアンナだけでなく、タプティムや王妃、クララホムも皆それぞれ信念や思いを持っているだけで決して悪者ではないが故に、あのシーンは起こるべくして起こってしまったということも辛い。
育った文化や立場が違う者が完璧に理解しあうことの難しさ、王様とアンナがチュラロンコンとルイスのような関係になることを阻むものこそが現代でも分断が解消されない原因そのものなんだと劇場で痛感しました。
 
北村さんは歌への不安をよくインタビュー等でお話していましたが、むしろ歌の部分が北村さんならではになっていて素晴らしかったです。
王様が自身の葛藤について歌うThe Puzzlementはコミカルさすら漂う曲調ですが、恐らく最近のミュージカルならめっちゃドラマチックになって歌唱力がないと歌えないような曲になると思います。笑
音楽から芝居をつくるのではなく、芝居で歌を紡いでいくというのはミュージカル初挑戦で「芝居と歌の融合」を謳っていた北村さんだからこそ!
それから王様はそもそもシャムの国民にとっては神のように敬われる人物なのに、王としての威厳をしっかり描くシーンがないのでそこを役者本人が持つカリスマ性と登場時の演出で補っていて、演出とキャスティングの妙に唸りました。
 
明日海さんの歌は特に心配していなかったのですが歌声にも母性がにじみ出ていてなんかまた新しい明日海さんに出会った感…。
ちょっと前まで妖精さんだったのにこんな母親が似合うようになって涙
アンナも明日海さん本人のチャーミングさが活きていたと思うのですが、私が何より明日海さんのアンナで印象的だったのは声!
王様と言い合いをするシーンのアンナがキャンキャンせずしかしドスの効いた声で反論していたのが私はとても明日海さんのアンナらしいなと思いました。迫力のある芝居ができる女性がやはり好きだ〜!
何かのインタビューで「アンナは自己主張する女性だけどキーキーうるさくならないようにしたい」と話していたのですがまさにその通りで。
アンナに小物感が出てしまうと王様を変えるただ1人の頑固な女性としての説得力が皆無になってしまうので、自分のことばかりの煩い女性ではなく王様と対等の立場で話すアンナという役柄に明日海さんの芯が通って凛とした声がぴったりでした。
 

また『王様と私』の主演は王様とアンナですが、この作品は時代の変わり目に生きる人間たちの群像劇なのだと何度か観て感じました。

第一王妃として王様を誰よりも理解し、アンナのことも迎え入れるチャン王妃、この物語の陰の功労者ですよね。王様を変えたのは確かにアンナですが、王妃の後押しなしでは頑固な2人が分かりあうまでには至らなかったと思います。
そんな国母のようなチャン王妃のソロは王様だけでなく王宮やシャム王国を包み込むような貫禄の歌声でした!リプライズは木村花代さんが銀橋(銀橋でいいのか?)に出てきて歌うのですが、2列目で観劇した時は身体全体が震えました。なんて素晴らしい歌声…。
劇団四季は今もちょくちょく観に行きますし四季出身の俳優さんの歌も色んな作品で聴いていますが、木村さんほどの歌声に出会ったことがなかった…。四季すげ〜無気力

タプティムとルンタはまさに時代の犠牲者と言いますか、王様とアンナの決裂に繋がる2人の悲劇が時代の過渡期に生きる難しさを物語っているなと思いました。
希和ちゃんのタプティムは登場時の所作から美しく、そして歌い方を在団時から変えたのかな?アンナやチャン王妃の深みのある歌声に対して若さと危うさすら感じるまっすぐな歌声が際立っていました。
お芝居は元々得意な方だと思うのですが早々に娘役芝居から抜け出したようで、今後の活躍も楽しみです。
ルンタ役は竹内さん。相変わらず素敵な歌声なのですが今回は演技も素晴らしくびっくり!現実を悲観するタプティムを優しく包み込む包容力のある歌声でした。SNSで作品について補足してくださる投稿も。若いのにしっかりしてるんやね…と謎目線で感動しました。※私は竹内さんより歳下です
 
小西さん演じるクララホムもとても良かった。
今まで王様を1番近くで支え、理解していたクララホムだからこそアンナによってどんどん変わっていってしまう王様に戸惑っていたことが台詞のないシーンでもよく伝わりました。
アンナに対抗心を燃やしていたところも可愛かったです笑
小西さんだけではないですが、コミカルとシリアスの塩梅が上手い役者が多いと動きが少ないシーンでも物語が停滞しなくてとても見やすくなりますね。
チュラロンコンの即位シーンではアンナ含む全員が新国王への敬意を示し西洋式のお辞儀をしているなかクララホムはただ1人前王の亡骸に縋りついているというラストシーンも心に残っています。


中河内さんはMRとイザボーで先に見ていたので、今回は珍しく治安が良いガウチさんを楽しめました笑
声からとてもハンサムなのでまーイギリス紳士の似合うこと似合うこと。所作や歩き方も決まっているのに若干むっつりスケべみを感じるところもまた人間らしさを感じて…可愛かったです笑
今さん演じるオルトン船長は丸山さん演じるフラアラックと仲が良さそうで、ここにもまた『王様と私』の本質が散りばめられているんだなぁと思ったり。
 
 
 
映画だと最後アンナは王様のそばにいて終わりだったと思うのですが(違ったらすみません)、2024年版演出だとアンナとチャン王妃はチュラロンコンに向かって敬意を表すカーテシーをし、穏やかな顔をした前王の亡骸のそばにはクララホムのみ縋りついて暗転となります。「継承」と「新時代の到来」を強調したこの演出で号泣しました。
王様とアンナが本編で衝突を繰り返しながらもお互いを理解し築いたものはロマンスではなく、シャム国の未来なのだということが示されていて良かったです。
 
 
 
ただこれだけは言いたい
 
アンナ登場の爆竹拍手がうるさい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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最近ご出演されたドラマ3作についても少し。
ジャンル、役柄、放送局、放送時間帯全て違いますが全部見ていてとても楽しかった!
舞台もドラマも偏った作品選びをしていないのがオタク的にはとても嬉しいです。
 
まず『下剋上球児』、素晴らしいドラマでした…!
杏奈さんの目線で球児たちの成長をうんうんと見守っていたのですが最終回で一気に球児側の気持ちに持っていかれまして…。
今の仕事に直接は繋がっていないけど、文字通り青春をかけて打ち込んだものの中で見た一生忘れられない景色と思い出を胸にそれぞれの道を生きている元球児たちが自分に重なってしまい、ラストで大大大号泣でした。
毎回泣いてはいたんですけどね笑
試合シーンはもちろん全体の画作りも綺麗で、いい意味で日曜劇場らしくないなと。毎クール見ていないので何とも言えないですけど。
あと日曜劇場は度々女性の描き方が気になっていたので、明日海さん演じる杏奈含むメインキャストの女性陣がみんないきいきと作品のなかで生きていたことも嬉しかったです。
大好きな作品になりました。
 
『推しを召し上がれ』はいつか出て欲しいなと思っていたテレ東ドラマだったので情報解禁時は大喜びしました。しかも仕事ができて美しくて何か秘密がある上司役ってそんなご褒美あります?
内容としては1人の新社会人の成長記のなかで自分の過去と向き合いわだかまりを解消していく様子と、そのわだかまりの解消から逃げていた心理を丁寧に描いたドラマでした。私にも心当たりがある部分があったりして、自然と由寿ちゃんを応援したくなります。
まだ前時代的な考えが色濃い地元から大阪や東京に出てきて、自分とはかけ離れていると思っていた人たちとの交流で由寿ちゃんのなかに新しい価値観が形成され、それを地元に持って帰って…とまぁ文字で書くとなんてことないストーリーではあるのですが、毎日楽しく仕事をして好きなことを楽しむ由寿ちゃんがとてもとても眩しかったです。
地元の人も頭が固いという訳ではなく、誠実に話せばちゃんと聞いてくれる人たちで作中に悪い人が一切出てこない!
特に由寿ちゃんのお母さんの「理解できないけど、否定しない」という精神を待ち合わせていない方が社会には大量にいるので、もうほんとこのドラマの世界で働きたい…。
そして明日海さんはやはり店長やらエリザベスやら緑川先輩やら色々経験して後輩を温かく見守る役がよく似合いますね。本人が後輩に対してそんな感じなのかな。
それはそうと緑川先輩が運命の恋に落ちた日の話はちょっと詳しく聞かせて欲しいところですね。
 
『グレイトギフト』は色々新境地の役で新鮮でした笑
前クールの『下剋上球児』で「まープライム帯の民放で主人公の妻役はさすがに取れんよな〜」と思っていたらまさか次クールで実現するとは!しかも不倫してる!?イケメンに取り合いされるドラマは数多くあれど、イケオジに取り合いされるドラマはなかなかないのでは…!あとなんか死にそうになってる!最近の明日海りおさんには生命力しか感じていないのですごく久々に死にそうな明日海さんを見た気がします…!?入院中はメイク薄めで手術シーンはほぼすっぴんだったと思うのですが、メイクが薄くなればなるほど赤ちゃんみたいなお顔になっていたのが個人的にツボでした。
今週こそ死ぬんじゃないかと毎週ヒヤヒヤしていたのですがめでたく最終回まで生存チョキ
放送期間に考察動画を色々見ていたのですが、明日海りお=イナバウアー由衣で認識されてて笑いました。まあ、確かにあれはインパクトのある役でした笑
今回もインパクトが抜群だったので(なおあまりいい印象ではない)、次に考察系ドラマに出た時は不倫妻かイナバウアーとして認識されてそう。
 
 

さて次は10月からの『9 to 5』ですね。
あらすじに「これ現代でやって大丈夫か!?」ポイントがこの作品にも結構あってまた心配しているのですが、楽曲はめちゃくちゃいいです。
そして平野綾ちゃんとおそらぴとの共演がもう何よりめちゃくちゃ楽しみ!この3人、全員パワフルな歌唱ができるのでアンナとはまた違った明日海さんが見れそう。
演出の上田さんは国産オリジナルだと個人的にあまりハマらないのですが、海外作品の演出は好きなものが多いです。今回は海外の作品なので多分好きなはず!

10月まで生きるぞ〜