『ふつうのくま』
佐野洋子
『ふつうのくま』
個人的お気に入り度:★★★
- 佐野 洋子
- ふつうのくま
先祖代々、食べれば食べるほどさびしいくま。
原因は、おじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさん。
彼は赤いじゅうたんにのって空を飛んだという。
それ以来、代々空を飛びたいと思っているのに、
飛べずにいるくまの家系なのだった。
くまはそのことばかり考えているが、
なかなか実行する勇気が出ない。
勇気が出せないままに、先祖代々床下に住んでいるねずみと
ピクニックにいったりする。
でも、そのことが気になっていて、どうにもさびしい。
しかしとうとう決心して、山の上の崖に飛びに行く。
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ねずみとくまの会話が深くて、
勇気ってなんだろう、と考えさせられた。
ちょっとふだんとちがうことをやってみる、
という勇気ではなく、こんなふうに、
命がけで何かをする勇気について。
ひとは命をかけてでも、
何かをしなければならないときがあるのかもしれない。
やりたいことがあって、その勇気が出ないばかりに
いつまでも気になって、人生があいまいになってしまうことも。
しかし、代々飛ぶことができなかった先祖たちが
偉くないというわけでは決してない。
一生決心できずに、「ふつうの人生」を送るのも、
「今が幸せ」(ねずみのせりふから)だと思えればいいのだろう。
なんだか目つきの悪いねずみ(悪いねずみじゃないのに)や、
こわくてぐにゃぐにゃになっているときのくまなど、
絵も独特で面白い。