昭和の名曲を聴いていると、ふと心に浮かぶ風景があります。
公衆電話の列、改札横の伝言板、海辺を走る貨物列車、赤いポスト、街角の八百屋さん…。
今ではすっかり見かけなくなった、でも歌の中では今も息づいている、そんな懐かしい景色たち。
この企画では、そんな“もう会えない景色”にスポットを当てながら、昭和の歌の中でどのように描かれていたのかを辿っていきたいと思います。
あの頃の空気を思い出しながら、ぜひ一緒に“歌の風景”を旅してみませんか?
第2回:エアメール――心を繋いだ三色の封筒
今回のテーマは「エアメール」。今ではあまり見かけなくなったもののひとつです。
取り上げる曲は、サーカスの大ヒット曲『アメリカン・フィーリング』、そしてユーミンの『青いエアメイル』です。
この曲の中で、主人公はこう歌います。
> 「あなたからのエアメール 空の上で読みかえすの」 (アメリカン・フィーリング)
> 「青いエアメイルがポストにおちたわ」 (青いエアメイル)
今ではすっかり見かけなくなってしまいましたが、かつては海外との手紙のやりとりに欠かせなかったのが、このエアメール。航空便、そして時には船便もありましたが、やはり印象的だったのは、あの薄くて軽い紙の便箋と、特徴的な封筒でした。
1988年、私はアメリカで暮らしていました。当時はまだ電子メールなどの通信手段は一般的ではなく、パソコンも一部の人しか使っていなかった時代です。日本に住む家族や友人との連絡手段といえば、国際電話か、エアメール。
とはいえ、当時の国際電話はとても高額で、1分数百円もするのが当たり前でした。だからこそ、急ぎでない近況報告や気持ちを伝えるには、エアメールが主な手段だったのです。
郵便受けに、あのトリコロールの封筒が届いているのを見つけた瞬間の嬉しさ。親からかな?、友達からかな?と、期待に胸を膨らませて封を切ったときの気持ち。今でも、その手紙を開けた時の情景をはっきりと思い出すことができます。どんな気持ちで読んだか、どんな言葉が綴られていたか、そして部屋のどこでそれを読んだかまで、鮮明に覚えているんです。
日本に帰国する際にも、大切なエアメールの束をスーツケースにしまって持ち帰りました。今もその手紙たちは、どこかに大事に保管してあります。
今は、スマートフォンひとつで世界中と一瞬でつながれる時代。もちろん、それはとても便利で素晴らしいことですが、便箋を広げて、言葉を選びながら書いたあの頃の手紙には、言いようのない「想い」が詰まっていました。
手間も時間もお金もかかったからこそ、一通一通が特別で、心に残る。そんなエアメールのやりとりは、今も私の大切な記憶として心に息づいています。
「アメリカン・フィーリング」/ サーカス
1979年5月25日発売
作詞:竜真知子
作曲:小田裕一郎
編曲:坂本龍一
第21回日本レコード大賞・編曲賞
チャート最高順位
週間5位(オリコン)
「アメリカン・フィーリング」
あなたからの エアメール
空の上で読みかえすの
窓の外は スカイ・ブルー
かげりひとつない 愛の色
心洗う 旅の日々
自由な空に 誓ったのよ
愛するひとはあなただけ
今日から もう何も迷わない
今私は コバルトの風
Feeling in America, in America
ああ きらめく季節の中で 抱きしめるから
It's America
「青いエアメイル」/ 松任谷由実
『OLIVE』アルバム
1979年7月20日発売
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
「青いエアメイル」
青いエアメイルがポストに落ちたわ
雨がしみぬうちに急いでとりに行くわ
傘をほほでおさえ待ちきれずひらくと
くせのある文字がせつなすぎて歩けない
ときおり届いたこんなしらせさえ
やがてはとだえてしまうのかしら
けれどあなたがずっと好きだわ
時の流れに負けないの


