スモタン(ザ・スモールタウンボーイズ)への道 2回目
おまたせしました!佐藤と浅田のスモールワールド!この二人が結果的に入ったのはフォークソング部!しかし佐藤が目指すはロックンロールバンド!はたして何が生みだされるのか!
2回目です!どうぞ!
スモタン(ザ スモールタウンボーイズ)への道 2回目
浅田は明らかに苛立っていた。
額に汗を浮かべながら分厚いタラコ唇をとがらせながら
「なんでドラムセット作らなあかんねん!意味わからんわ!オレは絶対叩かんで!おまえがどうしたいんかしらんが・・・」
佐藤は浅田の言葉を無視しながら黙々とバスドラやタム、シンバル類を組み立てていく。嫌々ギターを置いて浅田がタムやシンバル類を佐藤に渡している。
密封された楽器室の温度は上昇し、二人とも額から汗がしたたっている。
30分後に、楽器室に立派などドラムセットが出現した。
急に佐藤は黒目を大きくさせて手で額の汗をぬぐいながら言った。
「オレのビートに合わせてギター弾いてみろ!お前のソウルを聴かせてみろ!」
「えっ!どういうことやねん!」
浅田は細い目を大きく見開いて驚いた。確実に狼狽している。
「んだからよー!オレがドラム叩くからよー!そのリズムに合わせてギター弾いてみろ!っつってんだよ!」
となりの音楽教室からは太った石田純一が歌う尾崎豊の「シェリー」が聴こえる。
「シェリ~ オレ歌う~ あひすもほもほすべてに~」
石田はかなり悦に入っているようだ。
「くっだらねえー!バカじゃねーのかあのイモ野郎!いい年こいてシェリーってよー!外人かよ!」
佐藤は楽器室の壁を睨み付けながらめんどくさそうに言った。
「あーっ!めんどくせー!さっさとやろうぜ浅田!」
「えっ!何を?」
「ロックンロールに決まってるやろ~が!」
また竹内力が難波金融道で、敵を追い詰めた時に見せるような笑顔で答えた。
浅田はあっけにとられていた。佐藤は自分が8ビートを叩くからそれに合わせてGのコードをジャカジャカ鳴らせばいいということであった。そしてそのキーに合った音程でとりあえず歌ってみろと。
でタイトルも決まっている。そのタイトルのイメージでドラムに合わせてGのコードでギターを弾きながら歌えということだ。無理な注文である。
浅田は全くのど素人である。
「で・・・そのタイトルは?」
浅田が不安そうに尋ねた。
佐藤はまだ竹内スマイルのまま言い放った
「かわが長い!やろう~があ~!」
長い沈黙があった。
浅田は念のため聞いてみた
「かわって何?リバー?それともチンポの皮?」
佐藤は竹内スマイルのまま
「どっちでもええやないか?おたくはあん・・・ロックンロールは自由なもんやんと思わへんのか!ええ?どないやねん!」
とのたまいながらドラムセットの前の椅子に腰をかけスティックを持った。
「行くで浅田! お前の魂を聴かせたらんかい! みんな聴いてくれ! 浅田が歌うぜ!魂こめて歌うぜ! 聴いてくれ! かわがながい!」
と叫んでやたらと遅い8ビートを叩き始めた。
ツッツタタツッツタタツッツタタ・・・
ぎこちなくもやたらとデカイ音の8ビートのドラムの音が楽器室に響き始めた。
もう石田のシェリーも聴こえない・・・。
浅田はギターのフレットを凝視しながら戸惑っていた。
頭の中では「かわがながい・・・かわがながい・・・」のフレーズが繰り返されていた。