ステイゴールド その2
「んで、なんで手術すんねん。どこを手術すんねん。」
佐藤が急に成人誌を浅田兄の机の棚にしまいながら問いかけてきた。
予測外であったため浅田は戸惑った。まさか奴から聞いてくるとは…。
浅田は急に恥かしくなってきた。
佐藤が浅田のほうへ向き直って犬目の眼差しで凝視してきた。
「別にどこも悪そうには見えへんねんけどなー…」
浅田は迷いに迷ってオペをする局部ではなく、ぼかして伝えてみようと思ってこう言った。
「顔やねん。」
佐藤の犬目が大きく見開かれた。
白目も際立ったため浅田は半分に切り分けられた茹で卵を思い出した。
佐藤は口をあんぐりさせてしばし黙っていたが。堰を切って
「顔!顔!おまえはその顔をどうするつもりや!整形か?美容整形ってやつか?どうなんや?」
圧倒された浅田は「まっ そんなもんや」と答えてしまった後に失敗したと思った。
佐藤は余計に混乱して
「なんや!なんなんや!いったいどうするつもりや!耳を頭につけるのか?鼻の穴をもう一つ増やすのか?」
いったいどんな整形やねんと思いながら浅田は落ち着きを取り戻し、腹を決めて打ち明けた。
「ちゃうわ!歯や!このドス黒い前歯を白くすんねや!」
それを聞くと、佐藤の表情が急に冷めたものになった。
「なんや。そんなん手術せんでええやん。ポスカかなんかで塗ったらええやん。」
「ちゃうねん!そんなんではアカンねん!オレはこの歯を本当に白い歯にして生まれ変わるねん!」
浅田は佐藤にインプラントの説明をした。今のドス黒い前歯を抜歯して、その歯根の穴に新しい人工の歯を埋め込むための処置をする。それは手術に近く、麻酔をするとはいえたいへんな痛みを伴うものであると。それで歯医者に一人でいくのが心細いため佐藤についてきて欲しいというわけであった。
佐藤は意外にも事情を理解し、すんなりと歯医者付き添いを承諾した。おそらくただ単純に興味本位からだと浅田は思った。
今回の新前歯ゲット作戦においての医療費は保険外であった。浅田の母は新前歯の必要性はあまり感じておらず金を出す気はさらさら無かった。泣く泣く浅田は母に借金をしてこれからの小遣いから月賦で返済することとなっていた。それほど浅田は新前歯ゲットに懸けていたのであった。
そして運命の日。
自転車に乗った二人は、これから浅田のオペが行われる歯科に着き、その看板を見上げた。
小岩井歯科。
「大丈夫かコレ?歯医者だろ?牛乳屋みたいじゃねーか。歯科医が牛やったりして。うひゃひゃひゃひゃ」
佐藤がいやな声で笑った。
浅田の緊張は最高潮に達していた。額に変な汗を感じていた。
*ご愛読していただいている皆様、いつもありがとうございます。
枚方コーリングは来週は夏休みのため休刊となります。
次回は8月26日に「ステイゴールド その3」で再開いたします。
浅田の黒前歯の運命はいかに!!!!
こんごともよろしくお願い申し上げます!