タカオの前にあるテレビは動物番組を放送していた。

ゾウがのんびり動いていた。

愛くるしい目をしていた。

タカオはそれを観て、素直に可愛いと思った。



だが同時にある話を思い出してた。

その話とは

「足をクサリにつながれたゾウはクサリをはずしても遠くまで歩こうとしない」

というものだ。



タカオはこの話が嫌いだった。

「歩けるんだから歩けよなー。勝手にもう歩けないって決め付けるなよ」

と思っていた。



タカオはテレビを見終え、車でスーパーに出かけた。


途中、信号待ちをしていると、

赤いセーターを着たおばあさんも歩道の信号で止まっていた。



「車はいないんだから歩行者は渡るだろ、普通・・・」

車の中でタカオは思った。

何となく足をつながれたゾウと、おばあさんを

タカオはダブらせていた。



スーパーについて、買い物を始めようとしてすぐのことだった。

タカオはとても驚き、足を止めた。



それは店内で女性を発見したから、

その女性が昔、少し異性として気になっていた女性だったから、

その女性が彼氏連れだったから、

そしてその彼氏がマンガのゴリラーマンに似ていたからだ。






















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タカオは少し呆然と売り場で立ち尽くした。

彼は「ふりかけ」の棚の前に立っていたので、

目の前にはご飯がススム君がいた。













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買い物どころじゃないな、とタカオは店を出た。

彼女にとってタカオはただの男友達だが、

もし顔をあわせたら、

気まずい空気になるかもしれないと思ったからだ。




それより何より俺がどうしたら良いかわからないもんな、顔をあわせちまったら・・・・

車に戻りまずそのことが頭をよぎった。



「今は彼氏がいるのかぁ。

彼女は美人だけど男の容姿にはこだわらない心の広さも

持ってたんだな。

俺も昔ちゃんと告白してみたら・・・

OKだったのかもな・・・

いや、俺は告白するほどは好きじゃなかったから

告白しなかったのかな・・・・」



タカオはそこまで考えた瞬間、

もう1人の自分の声に愕然とした。





「お前はゾウだ!ゾウはお前だよ!

好きじゃなかったなんてウソだ。

お前は昔、どうせ俺なんて、と決め付けたんじゃないか!」



タカオはその心の声に反論できなかった。

惨めな気持ちでスーパーの駐車場から車を出した。



俺なんて1度だって挑戦しなかったんだなー

ゾウより悪いな・・・



赤信号で止まった交差点は、行きでおばあさんを見かけた交差点だった。



あのおばあさんは悪くないよな。

信号を守ってるってだけじゃないか。


今更過去は変えれないけど、

これからはやりたいことを勝手に諦めたり、

失敗を恐がるのは『なし』だ。



タカオは自分なりの結論を出した。

気分はずいぶん良くなっていた。



おーい、ばあさん!

ばあさんはありだぞー!



くだらない独り言にタカオは自分で笑った。

その優しい目はゾウに似ていなくもなかった。



信号が青に変わったので、

タカオはアクセルを踏んだ。

車は加速していって、

タカオは「鎖を引きちぎれー」と叫んだ。

タカオはすっかりハイになっていた。

別のスーパーに向かっていた。


無駄足を踏んだ、という事実をタカオは

気にしてなかった。























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