これは、ストーリーになり始めたしりとりバトンの続きの話を
俺が書いたものです。
前々回からの続きになっていますので、この記事を読んで、
話を把握してから読んでください。
前々回→http://blogs.yahoo.co.jp/hujiji74/30722429.html
前回→http://blogs.yahoo.co.jp/hujiji74/30840391.html
では続きです。最後です。どうぞ!
今、彼女の近くには俺を殺す凶器になるような、
ナイフもなければ鈍器もない。
首を締め付けるタオルのようなものもない。
そうだ!
今、俺にこそ正当防衛が成り立つ情況が与えられているのだ。
そこまで考えると、彼の足はさっきまでの硬直状態から
回復していることに気付いた。
ためしに体の重心を傾けて、その感触を確かめたが、
まるでお湯をかけられたように元の状態に戻っていた。
俺はこの危機を乗り越えることが出来る。
その自信を意識すると、次はレイコへの殺意に突き動かされるように
彼は足を前に出した。
しかしその瞬間。
彼は頭からばったりと倒れた。
彼の推理どおり、レイコは彼の殺害方法を探しあぐねていた。
そしてすぐには今の状況を飲み込めなかった。
倒れた彼から視線を上げて彼女は気付いた。
倒れた彼の背後に、美沙が立っていたのだ。
手にはポットを持っていた。
ポットは重さや大きさがもってこいで、
磁石によって取り外せるコードは
すぐに手に取れる凶器としても
都合が良かったのだろう。
この状況の中、レイコは落ち着きのない頭で
何故かそんな事を考えていた。
「美沙ちゃん!!」
レイコが叫んだ。
先ほどまで表情のなかったレイコが感情を取り戻し、
大きく叫んだのとは対照的に美沙の表情からは感情を読み取れなかった。
「どうして・・・」
「私、タケシさんと不倫なんかしてないわ」
「い、今そんなことは・・・」
「少し強引に迫られたことがあるだけで、やましいことは何もないの。
殺された誰とも何も後ろめたいことはないわ。
みんな愛情を持って私に接してきただけ」
それを聞いたレイコが逆に後ろめたさを持った。
旦那の浮気を疑い、殺害を計画した自分を。
その共犯者が美沙の父親であることを。
「ずっとこの部屋の入り口でね、聞いていたの。みんなの話を。
このままの状況だったらレイコさん、殺されるところだったわよね」
美沙は穏やかに、少し気まずそうに、
小さな笑顔をつくった。
確かに美沙は離れた場所にいたから、
落ち着いて状況を観察できたんだろうと思う。
でも小学生の女の子が父親を殺害し、これほど冷静にいられるものだろうか。
疑問に思うレイコに美沙は言った。
「正当防衛は私よ」
彼女は乾いた明るさでそう言った。
「レイコさんを殺そうとしたお父さんをとめたの。
けちのつけようがないんじゃないかな」
レイコは混乱していた。
「えーっと、父親とはちょっとあってね。
それより、この3人の入った冷蔵庫は
どうにかしなきゃいけないんじゃないかなぁ。
こればっかりは指紋やDNAっていうので、
誤魔化しようがないんじゃないかな」
レイコに気を使っているのか、
少し申し訳なさそうな、からかっているような、
口調で言った。
それを聞いてレイコは思った。
美沙が父親と何があったのかは聞かないことにしよう。
考えないことにしよう。
彼女の行為にとことん甘えることにしよう。
まだ小学生の美沙に、
レイコは頼りがい、いや母性にも似た何かを感じていた。
そして同時に気付いた。
これが美沙の魅力の秘密だったのだと。
女性であるレイコは美沙を子供としか見てこなかった。
まだ小学生のレイコ。
アーモンド形の大きな目。
年齢のわりにすらりと伸びた身長。
長い黒髪。
そういった外見的な魅力に男どもは
惹かれたのだと思っていた。
しかしこれこそが、この子の持つ魅力だったのだ。
この死体になった男達は、
この不思議な魅力に魅かれたのだ。
異性である彼らは、
この天使のような悪魔のような不思議な魅力を
私の知らないうちに感じとっていたのだ。
「レイコさん?」
穏やかな笑みをたたえ、そうやって様子を窺ってくる、
美沙に、レイコは「そうか、冷蔵庫ね」とだけ答えた。
彼女を幸せにしたい。
自分の状況をすっかり忘れ、レイコは今、美沙のことしか考えていなかった。
彼女の魅力にレイコもすっかりとりこになっていた。
美沙はレイコを笑顔で見つめていた。
俺が書いたものです。
前々回からの続きになっていますので、この記事を読んで、
話を把握してから読んでください。
前々回→http://blogs.yahoo.co.jp/hujiji74/30722429.html
前回→http://blogs.yahoo.co.jp/hujiji74/30840391.html
では続きです。最後です。どうぞ!
今、彼女の近くには俺を殺す凶器になるような、
ナイフもなければ鈍器もない。
首を締め付けるタオルのようなものもない。
そうだ!
今、俺にこそ正当防衛が成り立つ情況が与えられているのだ。
そこまで考えると、彼の足はさっきまでの硬直状態から
回復していることに気付いた。
ためしに体の重心を傾けて、その感触を確かめたが、
まるでお湯をかけられたように元の状態に戻っていた。
俺はこの危機を乗り越えることが出来る。
その自信を意識すると、次はレイコへの殺意に突き動かされるように
彼は足を前に出した。
しかしその瞬間。
彼は頭からばったりと倒れた。
彼の推理どおり、レイコは彼の殺害方法を探しあぐねていた。
そしてすぐには今の状況を飲み込めなかった。
倒れた彼から視線を上げて彼女は気付いた。
倒れた彼の背後に、美沙が立っていたのだ。
手にはポットを持っていた。
ポットは重さや大きさがもってこいで、
磁石によって取り外せるコードは
すぐに手に取れる凶器としても
都合が良かったのだろう。
この状況の中、レイコは落ち着きのない頭で
何故かそんな事を考えていた。
「美沙ちゃん!!」
レイコが叫んだ。
先ほどまで表情のなかったレイコが感情を取り戻し、
大きく叫んだのとは対照的に美沙の表情からは感情を読み取れなかった。
「どうして・・・」
「私、タケシさんと不倫なんかしてないわ」
「い、今そんなことは・・・」
「少し強引に迫られたことがあるだけで、やましいことは何もないの。
殺された誰とも何も後ろめたいことはないわ。
みんな愛情を持って私に接してきただけ」
それを聞いたレイコが逆に後ろめたさを持った。
旦那の浮気を疑い、殺害を計画した自分を。
その共犯者が美沙の父親であることを。
「ずっとこの部屋の入り口でね、聞いていたの。みんなの話を。
このままの状況だったらレイコさん、殺されるところだったわよね」
美沙は穏やかに、少し気まずそうに、
小さな笑顔をつくった。
確かに美沙は離れた場所にいたから、
落ち着いて状況を観察できたんだろうと思う。
でも小学生の女の子が父親を殺害し、これほど冷静にいられるものだろうか。
疑問に思うレイコに美沙は言った。
「正当防衛は私よ」
彼女は乾いた明るさでそう言った。
「レイコさんを殺そうとしたお父さんをとめたの。
けちのつけようがないんじゃないかな」
レイコは混乱していた。
「えーっと、父親とはちょっとあってね。
それより、この3人の入った冷蔵庫は
どうにかしなきゃいけないんじゃないかなぁ。
こればっかりは指紋やDNAっていうので、
誤魔化しようがないんじゃないかな」
レイコに気を使っているのか、
少し申し訳なさそうな、からかっているような、
口調で言った。
それを聞いてレイコは思った。
美沙が父親と何があったのかは聞かないことにしよう。
考えないことにしよう。
彼女の行為にとことん甘えることにしよう。
まだ小学生の美沙に、
レイコは頼りがい、いや母性にも似た何かを感じていた。
そして同時に気付いた。
これが美沙の魅力の秘密だったのだと。
女性であるレイコは美沙を子供としか見てこなかった。
まだ小学生のレイコ。
アーモンド形の大きな目。
年齢のわりにすらりと伸びた身長。
長い黒髪。
そういった外見的な魅力に男どもは
惹かれたのだと思っていた。
しかしこれこそが、この子の持つ魅力だったのだ。
この死体になった男達は、
この不思議な魅力に魅かれたのだ。
異性である彼らは、
この天使のような悪魔のような不思議な魅力を
私の知らないうちに感じとっていたのだ。
「レイコさん?」
穏やかな笑みをたたえ、そうやって様子を窺ってくる、
美沙に、レイコは「そうか、冷蔵庫ね」とだけ答えた。
彼女を幸せにしたい。
自分の状況をすっかり忘れ、レイコは今、美沙のことしか考えていなかった。
彼女の魅力にレイコもすっかりとりこになっていた。
美沙はレイコを笑顔で見つめていた。