これは、ストーリーになり始めたしりとりバトンの続きの話を
俺が書いたものです。
前回からの続きになっていますので、この記事を読んで、
話を把握してから読んでください。
→http://blogs.yahoo.co.jp/hujiji74/30722429.html
では続きをどうぞ。
「ねぇ、私3人も殺しちゃったわ」
「あ、あぁ、そうだな」
「この3人が死んで、あなたは得するわよねぇ。
だってあなたの可愛い娘の美沙にまとわりつく、
3人の悪魔がいなくなったんだもの」
男がその言葉を耳にした瞬間、彼の頭の中で何かがはじけた。
そして、男は自分の感情を抑えるのをやめた。
「あぁ、そりゃあすっきりしたっていう気持ちもあるさ。
でも何を考えているのか知らんがあまり調子に乗るなよ。
その3人は全員お前の家族だろ。
お前の旦那と親父に息子・・・。3人ともそれこそ悪魔かもな」
男の言葉を聞き、
レイコは目を見開いた。
驚きとともに、何かを理解した表情だった。
「今のでわかったわ!やっぱりあなたの筋書き通りみたいね。
自分の手は汚さずに可愛い娘のために3人を私に殺させる・・・」
男は、それは言いがかりだろう、と言おうとした。
だがレイコの目の色が変化したのに気付き、
その言葉を口にするのをためらった。
レイコはこれまでの無表情から、
明らかに憎悪を含んだ、人間とは思えない顔に変化していた。
「ねぇ、私3人も殺しちゃったわ!」
レイコは叫んだ。
「・・・・それはさっきも聞いたよ」
その言葉の真意が男にはわからなかった。
レイコの目の持つ狂気の炎のせいで、
男の持つ恐怖という感情に火がともり始めた。
「私、さっきから話しながら考えていたの。
もし私が捕まってもどうにか無罪にならないかしらって」
レイコはまた、無表情に顔を変え、そう言った。
だが男の心理状態には影響を与えなかった。
男は自覚することを意識的に避けているが、
彼の両足は小刻みに震え始めていた。
「・・お、おい・・。
無罪ってことはないだろう。3人殺したんだぞ。
さっきから何を言ってるんだ」
「それはあなたが事実を知っているからよ。
ねぇ、人を殺しても無罪になるのはどういう時かわかる?」
その台詞を耳にしても、男から言葉は出てこなかった。
レイコに怖気づくところを悟られないようにするのが
精一杯だった。
レイコの質問に答えられる程度の余裕を何とか取り戻した彼は
少し考えた後その問いの答えを口にした。
「自分の身に危険を感じたがゆえの
正当防衛が成り立つ時じゃないか?」
その言葉を口にするのと同時に、
彼の足の震えは止まった。
それは恐怖心が消えたわけではなく、
レイコの考えていることを推測した、
自分の推理の持つ、恐ろしさに体が硬直してしまったからだ。
彼の台詞を耳にしても、レイコは表情も変えなかったし、
動きもしなかった。ただ男を見つめ続けていた。
彼もまた動くことも話すことも目をそらすことも出来ずにいた。
まさに蛇に睨まれたカエル同然だった。
恐らく・・・
恐らくレイコは俺を殺して「自分は正当防衛だった」と
主張するつもりなのだろうと男は思った。
彼の頭は冷静ではなかったが、ある事を考え始めていた。
レイコの旦那も・・・子供も親父も・・・
こいつに比べれば可愛いもんだ!
こいつはたった今3人も人を殺した殺人犯なのだ。
こいつの旦那の、自分の娘との不倫はもちろん許せない。
だが男なら多少の浮気心はあるもんだ。
ロリコンとはいえ、俺の可愛い娘に惚れるのも
わからんではない。
こいつの親父だって単なる子供への愛情から
可愛がらせただけの、介護のようなもんだったのかもしれない。
息子にいたっては同じ位の年の女に愛情を持っただけの話だ。
レイコとは1度は愛し、逃避行を考えていた相手だったが・・・
今の状況とレイコのこと。
男は何度もそのことを考えているうちに少しずつ、
冷静さを取り戻していた。
レイコが動きを止めたまま時間がかなり経ったからだ。
さっきまで彼は脅えていた。
だが今はある考えに気持ちが揺れ始めていた。
勝てる!
俺は男だ。
殺される前に殺そう!
さっきまでは恐れていたがこの様子をみると、
こいつは俺への殺意をほのめかす台詞を口にしたがゆえ、
俺にそれを気づかれたがゆえ、
躊躇しているのだ!
続く