幸子は自分の事をずるがしこいのかなと思いながら

駅へ行く道を男と歩いていた。


よく人から大人しいとか

真面目そうと言われる。


だけどそれは単に

ぺらぺら喋るほうではないだけだと

幸子は思っている。

そして簡単に相手に合わせたり

すぐにやりたい事とかを諦めたりするわけではないとも。


今、幸子と歩いているのは

今年入社した会社の上司で、

上司と言ってもまだ20代で、

幸子が密かに思いを寄せてる人でもある。


今日、一緒に会社から帰っているのも、

私の努力が実ったからだ。


彼は営業で外回りをしてて

いつも帰りが遅いのだけれど、

私が帰ろうとする時間、

彼が会社にいる時は

30分は会社に残り、彼から

「一緒に帰ろうか」と

誘われるのを待っていて、

今日それが実現したのだ。


歩きながら,

これが大人しい女のすることだろうかと

考えたが、

女は大人しくてもそれ位するかなと考え、

幸子は少し心の中で笑った。