以前星三つだったんだけど、改めて評価し直し。
★5つでも、いや、10個くらいあげたい。
「私立櫻丘学園高等寮」シリーズを読んだ。
1作ごとにカップルの違うスピンオフ。
高校生ものが苦手な私にとって敷居が高かったんだけど、
北畠さんのイラストもあってすんなりと入る事ができた。
「専属契約」の時も思ったけど、実に淡々とした語り口で行間を読ませる作家さん。
この高校生達ときたら、酒もタバコもやるし、不純同性交遊にレイプ未遂となんでもあり。
でも別に不良って言うわけじゃない。
いやあ、「ガラスの10代」私がすっかり埋め戻した時代だ。
このシリーズの凄さはなんといっても3作目の「朱い熱」に尽きる。
1.2作目はもちろんとてもピュアで壊れやすい10代のうつろいと、作者の感性と
その文体がピタリと合致して、静かな熱を感じさせ、読後感もさわやか。
もちろんとっても「いいはなしやー!!」なんだけど、3作目は凄い。
「熱」どころか「濁流」というか「焔」というか、まさに本編にあるとおり「業火」・・・
心情説明を極力そぎ落として、淡々と綴っているのに、その心理は痛いほど伝わってくる。
そして主人公二人の背負ってるものは、10代のキャパシティをはるかに超えるほど過酷。
これはもう学園もののレベルを超越している。
もちろん1.2作も素晴らしい小説ではあるのだけど、3作目のイントロとも思えてしまう。
悪魔とまで言われる強烈な性格と絶世の美貌をもつ理利(受)が
1作目でなぜ烏丸(受)にきつく当たったか…
2作目でなぜ三尾(受)には優しいのか…
そして従兄志鶴(攻)はどういう存在か……
読み終えたら理利(受)が愛しくて愛しくてしょうがなくなってしまう。
彼は未だ恋という感情を知らないから
この言葉が誰を指しているのか分かったとき、物語でありながらショックを受けた。
ある意味裏切られ、そして「ああーっだから救われないんだー」と強烈に切なくなった。
水原とほる「夏陰」を読んだとき以来の衝撃。
久しぶりに気分が高揚して眠れなくなる小説に出会った。
橘紅緒は、間違いなく新刊作家買いに昇格。
新刊「妓楼の戀水」も独特の文体で、静かな激情を感じさせる。
状況の描写、登場人物が語るリアリティあふれた台詞、これだけで心情がリアルに伝わる。
重要な伏線すら、たった1行で済ませてしまうほど、ギリギリまで絞り込み、
無駄を省いた文章は、1文字も読み逃すことができない。
限りなく抒情詩に近い小説。
この独特の感性は誰にもまねできないものがある。
読了後もその世界観が頭から離れてくれない。
久しぶりに真剣に本を読んでしまった。