心臓外科医 × 弁護士 再会・代償・身代わりと萌要素はたっぷり。
受氏は、幼い頃、切ないほどに一途に攻め氏を慕っていた。
でも彼が愛しているのは自分の兄。対して受氏は、殺されるほど憎まれている。
長く疎遠になり、思いも封印していたのに、ちゃっかりと要領の良い兄が借金を残して消え、
攻め氏が借金を肩代わりする代わりに、兄の身代わりになることを要求。
沙野さん、上手い。やっぱり一味違います。
飾り物になりがちな医者・弁護士といった設定もしっかり利いている。
これだけのページ数でよくまとめたなあと感心するほど内容は濃い。
イラストの朝南かつみさんは新人さんのようで、作品数は少ないけど画力抜群。
すっかりファンになってしまった。この人の作品追っかけそう。
扉絵が激しいから鬼畜系かと思ったら(確かに鬼畜なんだけど)
攻め氏の医者として、人間としての描写が実に無理なく、しかもとても善人なので、
鬼畜な部分とのギャップに余計に葛藤と愛を感じさせて、むしろ情緒系。
受氏もありがちな、けなげで一途なだけの人間ではなく、
有能で、自立していてしかもとても自分に正直で素直。
いいとこ取りの兄貴が一番ひどいヤツだと思っていたら・・・
これまた拍子抜けするほど、ただの能天気なちゃっかり兄ちゃんだった。
いや、ただの能天気じゃない、そのちゃっかりぶりは天然最強!!
この悪気のカケラもない、天然兄貴が鬼畜な攻め氏にいじめ倒されながら、
攻め氏を振り回す、凶暴で可愛いニャンコになるような話が読みたくなってしまった。
身代わりと言いながら受氏を陵辱する攻め氏なんだけど、天然兄との関係においては、
むしろ攻め氏の方が一途でけなげ……っていうか、バカじゃないかと……
ネタばれしてみたら、ひたすら同情してしまうキャラばかり。
「蜘蛛の褥」に負けないほど好みの作品。
人間描写だけでも読む価値有り。
「人肌の秘めごと」
カメラマン × 出版社の社長 共にトラウマもち
とはいえ流石に沙野さん、ただのカメラマンと出版社社長ではない。
この方は、職業設定の生かし方が実に上手い。
カメラマン攻め氏が一方的に受け氏に執着するところから始まるんだけど、愛ではなく、まず執着。
とにかく、交換条件で強引に受氏を取り込んでしまう。
むしろ鬼畜さでいえばこちらの方が上。エロもかなり濃く、受氏は結構ひどい目にあってる。
途中がひどい割には読後感はよい。
ただ、私としては、「くるおしく」の方がずっと好み。
もうひとつ残念なのは、イラストの霜月かいりさん。イマイチ私の好みから外れる。
人物の顔がカットによって別人に見えるし、なにより美人に見えない。
イラストがあじみね朔生さんあたりだったら、もっと入り込めたかも。
とはいっても、まだまだ新刊買いからは外せない作家さん。次作も楽しみだ。