『税金を払わない巨大企業』を読んで | オプトHLD CEO 鉢嶺登 オフィシャルブログ

『税金を払わない巨大企業』を読んで

※当該文章は雑誌「財界」の書評に投稿した内容となります。

「1000億円以上も税前利益が出ている大企業の納税額がわずか500万円!」という帯広告に目を惹かれ、手に取った書籍。1期だけならまだしも、5期遡っても法人税率が1%にも満たない大企業があるという事実や、資本金が100億円超大企業の法人税は平均で11.54%と他の企業法人税に比べ格段に低い状態なことも純粋に驚いた。

どのようなカラクリがあるのか、企業経営者や財務担当者には興味深いと思うが、9つの主な節税策が紹介されており、その視点でも参考になる。

IT業界では、アップルやアマゾン、グーグル等、米国のIT企業の節税はつとに有名である。
グローバルに戦うのであれば税率の多寡はそのまま競争力の差になり、競合企業が節税により優位になるのであれば、経営者としては対策を考えざるを得ない。

一方で、国や地域あっての企業活動であるから、税金を納める事は至極当然である。
一企業として競争力を維持するべきか、社会の公器として納税を優先すべきか考えさせられる。
私は上場企業を目指すことを決めて以降、「節税」という考えは捨てた。節税に知恵を絞るぐらいなら、その分、利益を更に伸ばすことに知恵を絞った方が健全だと考えたからだ。
しかし、利益額が1000億円を超える規模になってくると、節税効果もバカにならないし、グローバルに戦う企業が増える今後は企業と国家双方にとって大きな課題になろう。

著者は消費税よりも大企業から法人税をしっかり徴税すれば、消費税以上の税収を見込めると主張する。一方で大企業がグローバルで競争力を失っては、間接的に国力は減退する。

国家と企業の方針、戦略が関わってくるので多面的な議論が必要となる難しい問題である。



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