挫折から再挑戦の彼(内定式での話) | オプトHLD CEO 鉢嶺登 オフィシャルブログ

挫折から再挑戦の彼(内定式での話)

本日内定式では同世代で挑戦し続ける人の話を紹介した。

東大法学部卒というエリートな彼(23歳)が起業し、オプトも出資していたスマートフォン向けテクノロジーサービス会社は今年廃業に追い込まれてしまう。その過程でソーシャルバッシングにもあい、廃業時は相当落ち込んでいた彼はその後約半年世界放浪の旅に出る。

世界放浪の旅話は面白い。まず1泊30㌦上限という予算ゆえに彼が宿泊先として選んだのは米国で一躍有名になり近く上場注目銘柄と言われる「Air B&B (エアー ビー&ビー)」のサービス。世界中で自宅に泊めてあげても良いと言う個人が登録。値段も、場所も、グレードも様々だ。世界中20カ国で、現地人の家に宿泊し、現地の人の家族に交じっての生活は、様々な縁や学びがあったようだ。

彼の話で最も印象的だったのはアラブ首長国連邦アブダビでの話。入国審査官で毎日黙々とパスポートに印を押す仕事をする彼(28歳)の昨年年収は3000万円で、BMW7シリーズに乗っていると。国家公務員である彼は国家収益連動給与。そして毎日ご馳走してくれる彼に恐縮がると、「遠慮するな。これは日本のお陰で得た金だ!」と。事実、アラブ首長国連邦の最大の輸出国は断トツで日本、しかも東日本大震災後の脱原発により、輸出額は急増している。だから、ボーナスが大幅増し、BMWを新車で買ったのだという。

昨年東日本大震災後の原発事故で、日本は一気に電力を自国原子力発電から化石燃料輸入にシフト。原子力発電停止による化石燃料の輸入金額は増加分だけで年間約5兆円、総額約25兆円にも上るそうだ。日々電力の恩恵に預かっている我々日本国民は電気さえ使えれば、そのコストへの関心は薄くコスト変化に気付かないゆでガエル状態。しかし、実際には資源輸出国は大いに潤っている訳だ。このままでは、日本の国富は流出し、衰退してしまう現実に、危機感を持つヒトが少ない。

彼曰く、「深刻なのは日本のエネルギー自給率がわずか4%になった点(以前は18%)米国がシェールガス革命もありエネルギー自給率70%を超え、中東からの輸入に頼らないで済む状況を作りつつあるのとは大違い。エジプト革命をはじめアラブの春にわく中東諸国の背景には、米国のエネルギーの中東依存度低下による米国中東戦略の見直しがある。(だから、米国は中東の争いから手を引きつつある?!)」。

「今後日本の輸出を5兆円上げるのは大変だが、輸入を5兆円削減する方が簡単かもしれない」と。確かに国家の貿易収支と今後の縮小均衡社会を考えると、如何にコストを下げるかを真剣に考える時期に差し掛かっていると言えるのかもしれない。売上増が見込めないなら、コスト削減をしないといけない、でなければ「日本国」は破産してしまう、企業経営の基本だ。

彼は半年の世界放浪の旅で、次代の日本に貢献できる産業は資源エネルギーと体感したそうだ。
その第一歩として、まずはエネルギー工学の勉強を行なう事を決めた彼は、世界の大学に1位から順に直談判して回った。すでに今年の入学受付は3月で終了しているにも関わらず。しかし彼はその「閉じた門」をこじ開けた。世界が注目する「FUKUSHIMA後の日本のエネルギー戦略」という視点で自らの存在価値を世界にアピールすることによって。そして、世界7番目、欧州の再生エネルギーの中心地であるロンドン、インペリアル大学に晴れて入学が決まり来週から渡英する。ちなみに、東大は25番程度だそうだ。そんな彼のバイタリティ、目線の高さ、志の高さを再確認でき、嬉しい夜となった。世間には一度洗礼を浴びたが、私は変わらず彼を応援し続けていきたい。