読了
めずらしくモノローグじゃないんだなー
なんて思いながら読んだからか
説明文がなんとなく分かりづらかったような。
でも全体としては湊かなえさん炸裂でした。
田舎独自の閉塞感や排他的な考え方。
誰もが持つ自己中心性みたいなものを
さりげなくいやらしく描く。
そこは子どもの言動であっても
容赦ありません。
鼻崎町をアートの街に
という背景がどうしても
湊さんのご出身の瀬戸内を彷彿とさせます。
ほかの作品でも同じように
瀬戸内を彷彿とさせる田舎を舞台に
田舎で育った者特有の葛藤を
描いた(んであろう)作品がありました。
私は地方と呼べるほどの地方でもなく
都会と呼べるほどの都会でもないような
名もなき町の出身なので
湊さんの怨念めいた作品に
そんなにもか?!!
といつも思いながら読んでいます。
でも菜々子のこの部分には
胸が痛くなる思いがしました。
地に足着けた大半の人たちは、ユートピアなどどこにも存在しないことを知っている。ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、ここではないどこかを探しているだけだ。
自分が思い通りに出来ないことを
何かのせいにして向き合わないのは楽なもの
いつか、と保留ボックスに堆積させて
そのくせ現実の自分は頬杖ついて
怠惰に夢想しているような。
自分の中にあるそんな感覚が
もたらしてくれるものなんて何もないと
気付かされます。
今の現実は全部自分が築いてきたもの
その「地に足着けて」
出来ることをやろうと。
この一部だけ読んでも価値がありました。
しかし毎度毎度
かなえちゃん、地元そんなやだったか!
という感想。
この作品の救いは光稀が離婚しなかったこと
クールな自分にしがみつくことこそが
かっこいい生活にしがみつくことこそが
みっともないんだと気付くところです。
今できることを
今やりたいことを





★★★★☆