「運の悪い人は運の悪い人と出会って、つながり合っていく。


偏屈な人は偏屈な人と親しみ、心根の清らかな人は心根の清らかな人と出会い、


そしてつながり合っていく。


「類は友を呼ぶ」ということわざが含んでいるものより、


もっと興味深い法則が人と人との出会いを作り出しているとしか思えない。


仏教的な言葉を使えば、宿命とか宿業であったりする。


それは、事業家にも言える。


伸びていく人は、たとえどんなに仲が良くても、知らず知らずのうちに、


落ちていく人とは疎遠になり、いつのまにか自分と同じ伸びていく人と交わっていく。


たくらんで、そうなるのではなく、知らぬ間に、そのようになってしまうのである。


抵抗しても、抵抗しても


自分という人間の核をなすものを共有している人間としか結びついてゆかない。


私は最近、やっと、この人間世界に存在する数ある法則の中の一つに気が付いた。


「出会い」とは、決して偶然ではないのだ。


でなければ、どうして「出会い」が一人の人間の転機となり得よう。


どんな人と出会うかは、その人の「命の器」次第なのだ。
                   


宮本 輝