※2023年3月加筆修正

 

【タイトル】マリア 君たちが生まれた理由 

【ハード】PS セガサターン

【対象年齢】

【ジャンル】テキストアドベンチャー(インタラクティブ・ドラマ)

【発売日】1997年12月11日

【開発/発売】ブレイク/アクセラ

【収録内容】ディスク3枚

【その他】

 

【あらすじ・導入部】

 

 自殺を図り、慈愛堂病院へと運ばれた筒井マリア。一命を取り留めたマリアは、その後無事意識を取り戻す。担当医の高野潤は、彼女の傷の治療とともに、自殺を図ったことすら記憶になく看護婦に対する暴力などの問題を起こすマリアのカウンセリングも行っていくことになった。マリアと話しているうちに高野潤は、マリアが多重人格なのではないかという疑念を抱く。過去にマリアの両親が惨殺されていたことを知り、原因がそこにあるのではないかとマリアの周辺を調べていくうちに未解決であった事件のことや自分自身の過去の秘密も明らかになっていく…。

 

 

 昔PS本体を買ったばかりの頃に買ったソフトのうちの一つです。当時TVCMも見たような記憶があります。マルチエンディングで、ゲームをあまりやらなかった私はED回収大変だったなーという思い出深い作品です。

 

 このゲームは「インタラクティブ・ドラマ」と呼称され、各章の終わりにエンディングロールが挿入されるという、今見ても珍しい作りでした。最近?では九龍妖魔學園紀がこれに近いかな…。ゲーム性というよりは、ドラマ性優先といった感じです。ムービーが多めで、ビジュアルと音楽に拘っていると感じます。ストーリーの進行は基本的にテキストで行われますが、一部3Dフィールドを一人称視点で歩いて探索するという要素もあります。※これは現在のシステムとは違った表現なので、好きなところを自由に歩いて調べられるものとは違います。

 

 要所要所に選択肢が出てきて、選択によって展開が変わっていきます。インタラクティブとはこの部分を指しているのではないかと思います。自分がドラマの中にいるような感覚を味わうことが出来るというものです。

 

 昔プレイした時も感じましたが、文章が簡潔で読みやすい、当時流行していた書き方…軽妙な文章といった印象です。今の感覚で言えば画面には装飾が少なく感じる人もいるかもしれないです。当時のポリゴンで作った…人形のようなビジュアルに慣れない方もいらっしゃるとは思いますが、表情の表現については当時としては細かく美しく表現されていたのではないでしょうか。勿論メインはテキスト部分であり、全ての細かい表現を映像で表しているわけではありませんが…。

 

 基本システムですが、早送りは出来ますし、ログを辿ることも出来ます。セーブについては各章の終了時に出来ますが、それ以外の場所では出来ません。ディスクは3枚で、交換しながらプレイすることになります。

 

 お話については、主人公である新人外科医の高野潤の視点で語られます。ムービーのあとまずはプロローグから入ります。

 

 

 

【プロローグ「余計なお世話だよ」】

 

 

 

 自殺未遂をし、病院に運ばれた筒井マリア。三日も眠っていたという彼女の左手首の傷は神経まで達するほど深いもので、マリアと書かれた陶器のカケラで切られたものだった。手首を切ったことすら覚えていない、そして突然人が変わったように暴れ出し、看護婦(当時の表記そのまま)に暴力を振るうこともあるマリアに、今は新米外科医だが、元々精神科志望で勉強をし、心理カウンセラーの元で助手をしたことがあるという高野潤がカウンセリングを行うことになった。

 

 高野潤は天涯孤独の身のマリアと、父親が行方不明になり母も過労で亡くなって16歳で一人になった自分を重ね合わせる。今は母方の高野性になっているが、元は「吉田」潤であった。

 

 同じ病院の、精神科医である友人本田に相談しつつ、高野はマリアのカウンセリングを開始した。マリアは昔から時々記憶がとぶことがあり、記憶を取り戻していくことに恐怖すら感じているようだった。その時、病室に飾られた薔薇の花びらが散っていく様を見たマリアの様子は一変する。今までずっと一人称が「私」だったマリアは自分の事を「僕」と呼び、これ以上マリアの過去を探るのはヤメろと言い出す。

 

 

 

・・・ここでディスクの交換を促されるわけですが、ゆっくり読んでも1時間もかかっていないので、これでディスク交換はかなり早い気がします(笑)。しかし丁寧に作ってあることはここまでやっただけでもわかるし、音楽も良くて先が気になる演出がされていることが良いと思います。因みに2021年にサントラの価格を調べてみたところ、3万とかになっています。

 

 では、再びストーリーを追っていくことにします。このゲームは主人公の行動で展開が変わるようになっています。最初のプレイなので、見たいエンディングを狙っていくのではなく感覚で選択を選んでいくようにしてみました。選択肢によってはかなり展開が変わりますが、自分が選択していった流れのみを書いています。

 

 

【第1話「誰かが殺しに来る」】

 

 

 カウンセリング中に突然別人のようになったマリア。看護婦が報告してきたように、マリアは問題児なのだろうかと悩む高野。

 

 高野は再びカウンセリングの時間になると、マリアに昨日の様子を訊いてみる。マリアは急に記憶がなくなったと言い、それが一体何がきっかけだったのかを探ってみることにした。まず看護婦に暴力をふるってしまった時。あの時は高野が置いたバラの花が活けてあった花瓶が落ちて割れている。花瓶が割れたことよりも、バラがきっかけなのではないかとマリアは言う。

 

 バラはマリアの母が好きな花だったという話から、マリアの両親が何故亡くなったのかを高野は訊ねる。マリアの両親はマリアが5歳の時に強盗に襲われ亡くなったという事実が明かされる。

 

 

 その話しを聞いた夜、夜勤の看護婦がマリアの病室の前を通ると男のような声がしたという。看護婦が病室に入ると、パジャマの前をはだけたマリアが看護婦に向かって「勝手に入るな」と怒鳴ったという。このようなことから看護婦のマリアに対する印象は最悪であった。

 

 本田に電話で相談する高野。本田は高野の話しを聞くと、マリアが多重人格症ではないかと仮説を立て、高野から普段のマリアの様子を訊きだす。もし多重人格症なら、早急に手を打たないと大変なことになると…。そして本田は多重人格症について詳細を高野にメールする。

 

 

 カウンセリングの時には本田との会話・メールの内容などを参考にし、高野はマリアが以前自分の中で誰かが命令する声が聞こえるといった話から、過去に衝撃的な体験をしたのではないか、カウンセリングの中でそれを思い出していかないかと提案する。しかしマリアは忘れてしまったことを思い出すのを拒否する。思い出さない方が幸せだということもあるのではないか、マリアは全てを知ることに怯えがある様子だった。

 

 頑ななマリアに、高野は11年前に自分の父親が蒸発(失踪)したことを打ち明ける。もし何かあれば照合が可能なように、父の歯のレントゲンを持っていることも。マリアは高野に真実を知ることが怖くないのかと問うが、高野は何も分からないよりは真実が知りたいと言う。高野が自分の過去を打ち明けたことでマリアも少し心を開いたようだった。

 

 その日はマリアの家族について詳細を語ってもらうことになった。父母が亡くなってからは父方の祖母と二人で暮らしていたこと。母はフランス人で、そちらの親戚とはあまり縁がないこと。祖母はマリアが16になった時に亡くなったこと。その後は知人の神父がマリアの保護者となってくれたこと…。今までよりも大分情報が出てきたところで、今日のカウンセリングは終了する。

 

 その夜…マリアは「こんなところにはいられない」と呟き、病院を抜け出してしまう。

 

 

 

 翌朝、高野の所に慌てた様子で看護婦が飛び込んでくる。それは勤続15年になるベテランの太田看護婦であった。マリアが病院内のどこを探してもいないという。高野はマリアを探しにいくかどうか迷う。

 

 そこへ二階堂と名乗る者が訪ねてきた。二階堂は中麻布署捜査一課の刑事だと言う。二階堂刑事は11年前の筒井夫妻強盗殺人事件を担当していたが、容疑者が絞られず8年前捜査本部は解散になってしまった。自身の定年が近付き、未解決であるこの事件を再び単独で調べるつもりだと言う。それで被害者の娘のマリアの入院先であるこの慈愛堂病院にやってきたのだった。

 

 高野は二階堂刑事から、筒井夫妻殺害の犯行がマリアの目の前で行われたことを明かされる。マリアが目撃したのは「2人組のおじちゃん」であったが、これが近所の人間の目撃情報と一致しなかった。

 マリアが封印している記憶とはこのことだろうかと、本田の「多重人格の者は衝撃的な体験を過去にしている」という言葉が高野の頭の中を過る。

 

 

 高野は姿を消してしまったマリアのことをこの二階堂刑事に話すか迷い、結局今は伏せておくことにした。

 

 

 カルテなどに記載されている住所を元に、マリアの家を訪ねる高野。チャイムを鳴らしても応答はない。マリアは家に戻ってきていないのだろうかとドアの把手に手をかけるが、鍵がかかっていない。高野はマリアの家の中を見て回ることにした。

 

 家の中はシンと静かであった。マリアの部屋ではマリアが描いたらしき絵と、病院で着ていたパジャマを発見する。少なくとも一度はマリアがこの場所へやってきたことは確かだった。バラが何者かに切られているのも見つける。

 

 部屋の中で破られたらしい絵葉書のようなものを集め繋ぎ合わせると墓地の写真が復元され、葉書の内容から希望が丘墓地であることが判明する。マリアの両親が眠る場所だった。そして今日がマリアの両親の命日だということも分かり、高野は一か八か、希望の丘墓地へと向かう。

 

 

 

 

 夕日に沈む希望の丘墓地。高野はそこで倒れているマリアを発見するが、マリアはうわ言のように「誰かが殺しにくる」と言うだけであった。

 

 

 

 

 

【第2話「マリアとマリア達】

 

 

 マリアを無事見つけ出した翌日。高野は疲労が残りながらも、多重人格症について、そして家で見つけた陶器のカケラについて考えていた。そこへ本田から電話が入る。本田の耳にまでマリアが病院を抜け出したという話は聞こえていた。内科医長の桑原先生が騒いでいたという。

 

 高野は本田に、マリアは毎年両親の命日には母親の好きだった赤いバラの花束を供えていたという話を聞かせる。マリアが「誰かが殺しに来る」といううわ言を言っていたことも。本田はそのことについて多少心あたりがあるような素振りをする。そのマリアに危害を加えようとしている者は尻尾を出すだろうと…。

 

 本田との通話を終えると、今度はこの慈愛堂病院の院長、神田から内線が入る。高野は院長室へと向かう。早速神田院長から、昨日のマリアの失踪の件を何故報告しなかったのかと問われる。後から入室してきた桑原医師も加わり、今度またマリアが問題を起こした場合はマリアを施設か精神科へ移すように言われる。

 

 そこへ内線が入り、マリアが発熱と頭痛をうったえていることを伝えられ、高野は急いでマリアの病室へ向かった。

 

 

 高野がマリアの病室へ行くと、看護婦の処置のおかげでマリアの容体は少し落ち着いたと聞く。看護婦が二階堂を待たせているというので、高野は二階堂の元へ。二階堂は一目だけでもマリアの顔が見たいというので、高野は二階堂の熱意におされる形で眠っているマリアの元へ連れて行った。

 

 マリアを見た二階堂は疑問の声を上げた。その声にマリアが起きると、二階堂は部屋を間違えてしまったと言い、慌てて出て行ってしまう。追いかけてきた高野は二階堂の先程の態度の理由を尋ねた。今はまだ事件のことを訊く時ではなかったと、焦りからマリアの気持ちをあまり考えていなかったと反省した素振りをする二階堂。そして、二階堂はマリアが昔見たマリアとは別人のように見えたと言う。5歳から16歳では大分変わるかもしれないが…とも。

 

 

 医局へ戻った高野の元に、またマリアの容体が急変したと看護婦から内線が入る。マリアの病室へ向かうと看護婦から熱が急に上がり、薬を吐き出してしまったと報告を受ける。高野は解熱剤と氷まくらなどの用意を看護婦に頼んだ。

 

 マリアと高野が二人きりになった途端、マリアは「マリアの体は自由自在に出来る。薬は吐き出した」と呟く。マリアではなく、別の人格が現れたのだった。その人格は高野にこの件から手を引かないと痛い目にあうだろうということを一方的に告げ、引っ込んでしまった。

 

 

 突然現れた人格に高野が茫然としていると、太田看護婦が戻ってきた。高野が青ざめた顔をしていると言い、後はまかせて休んでくれと太田看護婦は高野に気を遣う。高野はその言葉に甘えることにして病室を出た。だが、突然病室内から太田看護婦の悲鳴が聞こえたので高野が踵を返し病室内へ戻ってみると、太田看護婦は怒りを露わにし、もう散々だと叫ぶ。そして泣きだしてしまった。そのまま太田看護婦は病室を出ていってしまった。

 

 後に残った高野に、マリアは「お前を待ってたんだ」と言う。表情はいつものマリアとは一変していた。

 

 

 

 先程出てきた人格だと思い、高野は怒りを滲ませる。しかし今出てきた人格は高野とは初めて会ったと言い張る。先程の人格とは別人だという。その人格は沢山の人格がマリアの中にいることを匂わせる。先程太田看護婦を暴言で怒らせたこの人格は短気で荒い性格であり、高野は慎重に話しかけ名前を訊きだす。この人格は自分のことを「セト」と名乗る。

 

 名を名乗った後、凶悪な雰囲気から一転し、マリアは静かな表情へと戻る。マリア本人だった。マリアは記憶が途切れていることで、別人格が出てきたことに気が付いたようだった。昨日のことも合わせて高野に謝罪する。高野はマリアによく休むよう言い、病室を出た。

 

 太田看護婦には先程のマリアの言動が、施設に送られてしまうことへの不安からではないかと説明すると、太田看護婦は納得したようだった。

 

 

 

 次の日、高野はこれまでマリアの周りで見つかった「赤いバラ」「陶器のカケラ」「謎の絵」について訊きだすことにして、カウンセリングに向かった。

 

 マリアは再び病院を抜け出したことを謝罪する。その時の様子は、頭ははっきりしているが体が勝手に動いているようだったという。病院から出たのはマリアの意志でもあり、マリア以外の意志でもあったのだった。

 

 しかし「誰かが殺しに来る」と言ったうわ言についてはよく覚えていないようだった。ただ、病院から抜け出してからずっと皮ジャンパーの男につけられている気配を感じたという。しかしこれもはっきりせず、まるで夢の中の出来事のように曖昧な記憶だともマリアは言った。

 

 高野はマリアの家に行って、中に入ったことを打ち明ける。鍵が開いていたことを注意すると、マリアはしっかりと閉めたはずなのだがと困惑する。高野はマリアの部屋で見つけた絵を取り出す。絵を描くのが趣味だというマリアに、不思議な印象を持つ絵について解説をしてもらおうと思ってのことだったのだが…

 

 その絵を見た途端にマリアは頭痛をうったえだし、別の人格が現れた。

 

 

 控えめな態度のその人格は女性のようだった。高野が名を訊ねると、「イシス」という名だと答えた。エジプト神話にまつわる名だと…。高野は何故エジプト神話なのかと問うが、イシスはあまり喋り過ぎると「オシリス」に怒られてしまうと言って答えようとしない。しかしイシス自身について尋ねると、自分はマリアの悲しみを背負い、マリアの代わりに泣く役割があるのだと答えてくれた。イシスは高野にマリアを助けて欲しいと懇願し、姿を消す。

 

 

 

 

【第3話「突然の告白」】

 

 

 高野はこれまでに現れた人格について確認する。まずは「イシス」。イシスはマリアの悲しみを背負い、かわりに泣く人格だという。そして口が悪く、高野に対して敵意をむき出しにした「セト」。名前は判明していないが、マリアの体を自在に操り薬が嫌いな人格。そしてイシスが言っていた「オシリス」。オシリスはイシスを護り、助ける存在だという。

 

 本田が言っていた、いつか尻尾を出すというのはこのことかと高野は理解した。マリアの内部に、マリアの命を脅かす者がいたのだ。そしてマリアを護ろうとする者も。

 

 高野が考えていると、電話が鳴る。二階堂刑事であった。二階堂は直接会って相談したいことがあると言う。高野は承諾する。しかし高野は二階堂刑事に対して、わずかではあるが疑念を抱いていた。二階堂は本当は別の目的があるのではないだろうかと。

 

 高野はカウンセリングのためにマリアの病室に向かった。マリアは少し元気が出てきたようで、「別の自分」について前向きに考えてみることにしたと言う。高野はマリアに昨日現れた人格について訊くことにした。

 

 まずは「セト」「イシス」と話したことを伝える。この名がエジプト神話からとられているということも。マリアはおぼろげな記憶の中から、エジプト考古学の学者であった祖母から子供の頃にエジプトの話しを聞いたことを思い出す。そして家にエジプト関係の本があり、自分が読んだのは挿し絵が沢山入った本だったことも記憶していた。

 

 高野は挿し絵が何か関係あるかもしれないと言い、週末にマリアの家に行き、その本を取ってくることを提案する。マリアはその提案を受け入れた上で、事件があった書斎は猫やカラスの死体が置かれたことがきっかけで祖母が鍵をかけて封印してしまったので入れないのでその部屋は探さなくて良いと言う。

 

 

 話はマリアの家族に移る。マリアの父は弁護士であり、熱心なカトリック教徒であった。妻と出会ったのは教会だそうで、フランス人の母も同じように熱心なカトリック教徒であった。マリアの名がそれで聖母に因んでつけられたことが分かる。

 

 マリアの父、筒井弁護士は妻の誕生日には毎年バラの花束を送っていた。マリアも色々と誕生日にはもらったが、中でも気に入っているのは世界で一つだけのオルゴールだという。そのオルゴールの曲は筒井夫妻によって作曲されたものであった。そしてこのオルゴールには仕掛けがあり、底の方に扉がついていた。この扉の鍵は祖母からもらい、祖母とマリアで一つずつ鍵を所持し、祖母はエジプトで綺麗な石や水晶を見つけるとこっそりそこに入れておいたというのだ。今は鍵がなくなり、宝物入れとしては使わなくなったらしいが…。

 

 マリアの母は特に赤いバラを好み、庭に植えて育ててもいたらしい。それはマリアの家で見つけた切られたバラからも想像出来る。高野もバラが好きで、この病院の南側にもバラ園があることをマリアに教える。

 

 マリアは命日の11月30日と母の誕生日12月1日にバラを供えるようにしていたのだが、バラについて、事件のことを思い出す。事件当日、花屋の手違いによって筒井弁護士が注文していたバラは一日早くついてしまったという。それを書斎に隠していたことをマリアは思い出すが、それ以降の記憶はぽっかりと空白のままだった。高野はそのぽっかり空いた空白の部分に、マリアにとって衝撃的なことが起こったのだと予想した。

 

 

 

 ここで、マリアは頭痛がすると言い出し、セトが現れる。高野がセトに目的を訊ねると、セトは自分の目的は全てを消すことだと言った。マリアの中にいる多数の人格のことである。

 

 セトは最初に現れた人格がホルスだと高野に教える。これで名前が判明した人格が「オシリス」「イシス」「セト」「ホルス」になる。セトは他の人格を完全に敵視しているが、自分には強い「味方」がいると言う。それは名前が判明していない人格がまだいるということを示唆していると考えられた。

 

 セトは言いたいことだけ言い、去ってしまった。

 

 

 セトが去ると変わりにマリアが現れる。高野はマリアに第三の人格が現れたことを伝える。セトは事件の真相に近付こうとしているのを阻止しようとして出てきたのではないか考えられた。あまりにも出てくるタイミングが良すぎたのだ。

 

 カウンセリング後に高野がたまった書類を整理していると二階堂が約束通り訪れる。二階堂の相談事とは、自分の母の慢性の神経痛が悪化してしまい、病院を探しているというものだった。高野が勤めるこの慈愛堂病院についても詳しいことが知りたいとのことだったので、高野は設備や院長の経歴などを説明し、資料を用意することを約束する。

 

 そこに丁度散歩として先程話に出たバラ園を見に行っていたというマリアとばったり会う。季節的にすでにバラの花は咲いていなかったそうだが、良い気分転換にはなったようだった。話の邪魔をしてしまったと謝罪し、マリアはその場を立ち去る。

 

 二階堂はマリアが立ち去ったあと、眠っている時は別人のような気がしたが、今見たら昔と変わっていないと言う。そして本当に同一人物かとまで高野に訊く。高野が勿論だと答えると、刑事の勘で別人に感じたのだが、勘が鈍ってしまったと笑うのだった。

 

 

 

 二階堂と別れ、医局に戻った高野は書類の整理に取り掛かる。気が付いたら午後のカウンセリングの時間を過ぎてしまっていた。急いでマリアの病室へ向かうが、マリアは今日のカウンセリングを中止にしたいと言う。疲れていることと、一人でじっくり考えたいとのことだった。確かに見るからに疲労している様子だし、頭痛もするというので、何かあれば看護婦を呼ぶように言い、高野は病室を出ようとした。すると背後から声がかけられる。

 

 

 それは「ホルス」と名乗る人格だった。高野とセトが自分の話をしていたので出てきたという。ホルスは「自分達の中には人殺しがいる」と言い出す。しかもその人殺しとはホルス自身だと告白する。

 

 11年前、家に男がやってきた。その男こそマリアの両親を殺した強盗であった。だからホルスはその男を殺して埋めたのだという。ホルスは高野の元に頻繁に訪れている刑事は、この事を調べているのだということをほのめかす。ホルスが殺したということはマリアが殺人を犯したということになってしまう。ホルスは刑事の手帳を見てみろと言い残し、去って行った。

 

 

 

 マリアは高野の顔色が真っ青だと指摘して、出てきた人格が何かとんでもないことを言ったのだと覚り、高野に他の人格が何を言ったのかと追及する。しかし高野は別人格は現れたが、すぐに消えてしまったと嘘をつく。マリアは明らかに様子が変わった高野に対し、自分の中の人格が何か重要なことを話したら、絶対に教えて欲しいと高野にうったえ、約束するように言う。

 

 高野は週末に行く予定だったマリアの家にはこれから行く事にし、エジプト神話の本とマリアの宝物のオルゴールを取ってくることになった。マリアには本当の目的は隠し…。

 

 

 再びマリアの家を訪れた高野。マリアの部屋でオルゴールと陶器のカケラを見つける。高野はマリアの祖母の部屋でも鍵を見つけた。それはあの忌まわしい事件が起こったという、筒井弁護士の書斎の鍵であった。

 

 書斎でエジプト神話の本と、小さな鍵を見つけた高野は、その小さな鍵が、台所の床の扉に合うことに気が付く。床下はすぐに地面となっており、高野はホルスに言われた通りにそこを掘り返してみた。

 

 

 ホルスの言ったことは完全な嘘ではなかったことが証明される。天井に突きだすように伸びた白骨の腕には、金色の腕輪がはまっていた。その腕輪…ブレスレットは高野には見覚えがあるもので激しく狼狽する。11年前失踪した父の腕に光っていたものだったからだ。

 

 

 

 病院に戻った高野は、自分が持っている父の歯のレントゲン写真を取り出す。もし万が一、父に何かあれば照合出来るのだという思いから持っていたもの。もしこれが、あの死体の歯型と一致したら…。

 

 あの死体はホルスが言う事が事実なら、筒井夫妻を殺害した犯人のものということになる。そしてホルス…マリアの手で殺害され、埋められた死体。懊悩する高野だったが、父の歯のレントゲンと、死体の歯型を照合する。

 

 

 歯型は完全に一致した。筒井家の床下に埋められていた死体は、突然失踪した高野の父だったのだ。

 

 

 

・・・ここまででストーリー三分の一程です。衝撃的な事実、高野とマリアの間の奇妙な、哀しい共通点が判明しました。高野は真実があるなら知りたいとマリアに言いましたが、自分に降りかかったこの重い事実を受け止めることが出来るのでしょうか…。

 

 ドラマティックな展開で引き込まれるような作りだと思います。続きも楽しみにプレイしていきますので、もう暫くお付き合いください。

 

 

PS「マリア 君たちが生まれた理由」そして通常エンドへ2 へ続く