好きな本・音楽・映画などの紹介
NICK CAVE FEATURING THE BAD SEEDS

「FROM HER TO ETERNITY」1988


 先日10数年ぶりに、仕事で縁があった人から仕事がらみで電話があった。

ちょー久しぶり。ちょー元気そう。

”若ぞ―”が”ひとかど”になっていた。


 実際彼とは大分前のフジロックで偶然会って(あの人数の中で会うこともスゴイが…)

以来だったらしい。私はフジロックであったこともすっかり忘れていた。

そしてすっかり忘れていたことのもう一つが好きな音楽を編集したMD(これも過去の遺物だ…)

を交換したことだった。何を入れていたのかももう記憶が定かでないが、

この曲だけは入れたな~というのが今日ご紹介する、ニック・ケイヴの「フロム・ハー・トゥ・エタニティ」。

 今回の電話の時も「あのMD、懐かしいっす」みたいなことを言っていた。


 ドイツの映画作家ヴィム・ベンダースの代表作のひとつ、そしてミニシアターという言葉が

できたきっかけの一つとも言える映画、「ベルリンー天使の歌」でこの曲は使われていた。

永遠の命をもつ天使(見かけドイツ人のおっさん)は、サーカスのブランコ乗りの女(私は

あまり綺麗と思えなかった)に恋をする。彼女に恋した天使は彼女を求めて

町を彷徨う。行きついたクラブで彼女はグラスを傾けている。奥ではニック・ケイブが

「フロム・ハ―・トゥエタニティ」(映画「ここより永遠(とわ)に」をもじった題名のようだ)を歌っている。


 私はこの映画でニック・ケイブを知って彼のCDを買うようになった。

そして何年後かの来日の時には渋谷のクラブクワトロで目の合う近距離でお姿を拝んだのだ。

懐かしい思い出。


 さてさてニック・ケイブさんについて少しご紹介。オーストラリア人。ミュージシャン、

そして私の印象では詩人という側面も強い方の気がする。曲も非常に

演劇的な部分もあり…小説なども書いていて、たくさんの表現をしている。

ザ・バッド・シーズという、これまた曲者で音楽的に

とても面白い人たちが集まったバンドを組んでいる。

このアルバムは彼がこの前に組んでいた「バースディパーティ」というバンドを

解散した後のソロデビュー作。そしてこれがバッドシーズの原型を作り上げることになった。

まあ、傑作アルバムです。


曲目

1,AVALANCE

2,CABIN FEVER

3,WELL,OF MISERY

4,FROM TO HER ETERNITY

5,IN THE GETTO

6,THE MOON IS IN THE GUTTER

7,SAINT HUCK

8,WINGS OFF FLIES

9,A BOX FOR BLACK PAUL

10,FROM TO HER ETERNITY


1曲目はレナード・コーエンのカバー。

2曲目、私の好きな曲、キャビンフィーヴァ―(閉所恐怖症)

 付き合っていた女への憎しみその後ろにある愛情、気持ち、それに閉じ込められている男、

 そんなイメージ

7曲目セイントハックは、ハックルベリーへのオマージュ。ミシシッピー川の暗い夜が思い浮ぶ。

そしてこのアルバムで最も印象的、かつ好きなのが

6曲目のムーン・イン・ザガター(どぶに映る月)

歌詞をご紹介


「月はどぶに映る そして星は流しに消える

俺は哀愁の王様 靴の泥を擦り落とし

どぶに映る月の中を歩いて行く


オパール色の光の洪水となった月が

俺の目をくらます

俺は製材所や干し草の山の中を進んでいく

いつの日かルーシーと来るのはずの溝を飛び越し

水に映る月の中で手を洗う


故郷を遠く離れ、月はどぶに映る

俺の目論見はすべてお流れ

俺は思い出を覆う雲となり

あの子の眠る土盛りの上一人途方に暮れる

そして不精な どぶの月に横たわる」


ニック・ケイブの詩世界はまたご紹介したいと思います。