第10章 負債
第1節 負債の範囲と区分
問10-1☆☆☆ 概念フレームワークにおける負債とは何か説明しなさい。
負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を
放棄もしくは引き渡す義務又はその同等物をいう。


第2節 引当金
1 引当金の本質
問10-2☆☆☆ 収益費用アプローチの下での引当金の意義をその設定目的をふまえて説明しなさい。
収益費用アプローチの下での引当金は、適正な期間損益計算を行うために、
将来の費用又は損失のうち、当期負担分を当期の費用として計上される項目である。

2 引当金設定の要件
問10-3☆☆☆ 企業会計原則に規定する引当金の設定要件を4つ説明しなさい。
引当金の設定要件は、将来の費用又は損失であること、その発生が当期又は
それ以前の事象に起因していること、その費用の発生の可能性が高く、
金額が合理的に見積もれることである。

3 引当金の種類と区分表示
問10-4☆☆ 企業会計原則に規定する引当金の種類を貸借対照表上の表示の違いに着目して簡潔に説明しなさい。
資産から控除する評価性引当金と、負債たる引当金である負債性引当金がある。

第3節 納税義務と税効果会計
問10-5☆☆ 税効果会計の目的を法人税等の性格をふまえて説明しなさい。
税効果会計の目的は、貸借対照表上の資産負債額と課税所得計算上の資産負債額
相違する場合において、法人税等を費用として考え、法人税等の額を期間配分することで、
税引き前の当期純利益を法人税等を合理的に対応させるためである。

問10-6☆☆ 一時差異とは何か説明しなさい。
一時差異とは、貸借対照表計上の資産負債の金額と
課税所得計算上の資産負債の金額の差額である。

問10-7☆☆ 将来加算一時差異と将来減算一時差異とは何か説明しなさい。
将来加算一時差異とは、解消時に課税所得が増加する効果のある差異で、
将来減算一時差異とは、解消時に課税所得が減少する効果のある差異である。

問10-8☆☆ 繰延税金資産の資産性及び繰延税金負債の負債性について説明しなさい。
繰延税金資産は、将来の法人税の支払額を減額する効果を有し、一般的に法人税等の
前払額に相当するため資産性を有する。
繰延税金負債は、将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、法人税等の未払い額
に相当するため、負債性を有する。

問10-9☆☆ 繰延法と資産負債法を採用した場合の適用税率について説明しなさい。
繰延法では、一時差異の発生年度の税率を適用し、資産負債法では、
一時差異解消年度の税率を適用する。

第4節 流動負債
3 短期の負債性引当金
(1)賞与引当金
問10-10☆☆ 役員賞与の取扱いをその理由とともに説明しなさい。
役員賞与も職務執行の対価である以上従業員の賞与や役員報酬と同様の
性格から、発生時に費用処理する。


問10-11☆☆ 修繕引当金が条件付債務に該当するか否かを説明しなさい。
将来の修繕の必要性は法律で定められているものではなく、期日や支払先等も
確定しているわけではないので、条件付債務には該当しない。


第5節 固定負債
1 社債
問10-12☆☆ 社債を時価評価しない理由を説明しなさい。
社債は、市場があっても清算するには事業遂行上等の制約があるため、時価評価しない。

3 退職給付引当金
問10-13☆☆ 退職給付とは何か簡潔に説明しなさい。
退職給付とは、一定期間にわたり、労働を提供してきたこと等の事由に基づいて、
退職以後に従業員に支給される給付のことをいう。

問10-14☆☆ 退職給付債務の算定に現価方式を用いる理由を説明しなさい。
退職給付債務の算定に価方式を用いるのは、退職給付は支給までに
相当期間があり、貨幣の時価価値を評価に織り込むためである。

問10-15☆☆ 退職給付債務を算定する際に使用される割引率について説明しなさい。
使用される割引率は、安全性の高い長期の債の利回りで、
貨幣の時間的価値のみを反映した利率である。


問10-16☆☆ 年金資産を退職給付債務の計算上控除して表示する理由を説明しなさい。
年金資産は、退職給付の支払のみに使用されると決められているので、
収益獲得のための資産と同様に貸借対照表上に計上すると、
利害関係者に誤解を与えてしまうことになるからである。


問10-17☆☆ 遅延認識を行う理由を過去勤務債務と数理計算上の差異の別に説明しなさい。
過去勤務債務の場合、その発生要因である給与水準の改訂等が、従業員の勤労意欲が
将来にわたって向上するとの期待のもとに行われる面がある。
数理計算上の差異の場合、予測と実績との乖離のみならず、
予測数値の修正も反映させることができるからである。


4 資産除去債務
問10-18☆ 資産除去債務の意義とその負債性について説明しなさい。
資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、
当該有形固定資産の除去に関して、法令又は契約で要求される法律上の義務
及びそれに準ずるものをいう。
資産除去債務は、有形固定資産の除去サービスに係る支払が不可避的に生じ、
金額が合理的に見積もることができるので、負債性を有する。


問10-19☆☆ 資産除去債務基準において引当金処理と資産負債の両建処理のいずれを採用しているかその理由について説明しなさい。
資産除去債務基準においては、引当金処理では、資産の取得時にすでに
除去債務を負っているにも関わらず、その債務の全体が負債として認識できないため
資産負債の両建て処理を採用している。


問10-20☆☆ 資産除去債務に対応する除去費用を資産計上するのはなぜか。
除去費用を資産計上すること(有形固定資産の取得原価に含めること)で、

回収すべき金額を引き上げ、減価償却を通じて当該有形固定資産の使用に応じて
各期に費用配分することができるからである。


問10-21☆☆ 資産除去債務の算定に適用される割引率について説明しなさい。
資産除去債務の算定に適用される割引率は、貨幣の時間的価値だけを反映させた
無リスク税引き前の利率を用いる。


第6節 偶発債務
問10-22☆☆ 偶発債務の開示について説明しなさい。
偶発債務が、現実の債務となって損失をもたらす可能性が高く、その損失額が
合理的に見積もれる場合は引当金を設定し、現実の債務となる可能性が低く、
金額が合理的に見積もれない場合は注記とする。