1218 1219 1220
1218 福島の復興を考える(37)2019.4.9 ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、農業を続けながら太陽光発電を行うことだ。耕作地の上に藤棚の様に架台を設置。そのうえに細幅のソーラーパネルを並べ、作物とパネルで光を分け合う。これによりパネルから電気を、土地からは作物を創り出し一石二鳥となる。電気は販売することも、自家消費として使用することも可能で、農業の収益性を高める仕組みとして注目されている。日本人の長島 彬氏が発明し、特許は2005年に公開し、誰でも無償で使える。 作物にはある程度の太陽光が必要だが、強すぎる直射光は動物にも植物にも有害で、適切な明るさの光以外は光合成に使えない。農地や牧場などにソーラーパネルを設置し、太陽光を作物と分け合えるようにすれば、太陽光発電の根本的な欠点である「大面積が必要」という問題を解決して日本のエネルギー問題が解消できると長島氏は考えた。農家の夏の作業は大変だが、ソーラーパネルの影で緩和されるという副次効果がある。すでに全国に広がっており実施例は1000件を超えているが、パネル下で栽培している作物としては、米、野菜(ネギ・かぼちゃ・さつまいも・大豆など)に加えて、しいたけ、ブルーベリー、茶など。ソーラーシェアリングは、適地が少なくなり地域住民から自然破壊だと反対されるメガソーラーに代わるものと思われる。 農業従事者や減少している中、農業法人は増加傾向にある。昨今は若者が農業を仕事にしようという意欲も感じられる。ビジネスとしての農業はハウス栽培、水耕栽培など管理上電力を使うので、電力の供給源としてもソーラーシェアリングが役立つ。なによりも副収入で農業経営が安定する。 ソーラーシェアリングに関しては農林水産省も前向きで、農地の一時転用期間が従来3年づつの更新であったが、昨年5月にこれを10年に延長した。また、支柱部分だけの農地転用にして固定資産税が急増しないようにした。環境省も環境基本計画で「営農型太陽光発電の推進」を明記。従来、国は基本的にソーラーシェアリングに対して補助金は交付していなかったが、農林水産省との連携事業としてソーラーシェアリングに関する補助金制度を2018年度から設けた。 現在、福島第一原発事故で避難区域となった市町村ではメガソーラーが全国的に見てもかなりのハイペースでかつて農地だったところに建設されており、首都圏につながる原発用だった送電線へつなぐための送電線建設も行われている。このままでは土地の利用について農業とバランスの取れたものとはならないし、景観上も問題がある。残念ながらソーラーシェアリングに関して福島県は千葉県、茨城県など他県に遅れをとっている。福島県や県内各市町村は独自の補助金制度を設けるなど、積極的にソーラーシェアリングを展開するべきである。 1219 労働力減少に見舞われる原発2019.4.11 2017年に出版されたベストセラー「未来の年表」河合雅司著(講談社現代新書)は、いまだに書店の新書のベストセラーの棚に並んでいる。 この本は表紙に「2020年 女性の半数が50歳超え」とか「2039年 火葬場が不足」などとショッキングな表題が紹介されおり書店で思わず手にとりたくなる。サブタイトルに「人口減少 日本でこれから起きること」とあり、人口問題を取り上げた本の魁となった。この本の内容はワイドショー「ミヤネ屋」でも取り上げ、著者がゲスト出演した。今でもyoutubeで見ることが出来る。 日本の原発の再稼働、新増設については、新規制基準に合わせるための追加投資による発電コストの上昇、住民の納得する避難計画の策定の難しさなどがハードルとされているが、「未来の年表」を読めば、最も心配なのがこれからの急激な人口減少、高齢化による労働力不足だということがわかる。 エネルギー基本計画に取り上げられている電源を労働力の観点から評価すると運転中、最も労働力を必要としないのは水力発電、太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギーで、火力発電や原子力発電はそれなりに労働力が必要だ。火力発電は燃料を海外から運んでくるにも大量のタンカーによる長距離の運航が必要であるが、近年、船員不足も問題になっている。 原発は大出力であるため、キロワット当たりにすると労働力は思ったほどでもないが、実際の発電所では交替勤務の運転員を1機あたり数十人は必要としており、協力会社の作業員も同数程度必要とされている。水力発電所の無人化が進んでいるのとは対照的で、原発の場合は自動運転化が進んでも、一定の人数は中央制御室に座らせておく必要がある。定期検査ともなれば、2~3ヶ月の間、現場に約1000人の労働力が必要となる。 原発は火力の仕事に放射線管理、核防護、事故対応、廃棄物取り扱いの仕事がプラスされ手続き書類の多さも目立つ。とにかく原発は人手を要する。製造業や農業などではこれから自動化が進み、必要となる労働力も減少する可能性が大きいが、原発は設備が複雑で多岐にわたっており、汚染管理の必要から細かく部屋が区切られている。すでに燃料交換などの作業は自動化されているが、ポンプやモーター、弁などの分解点検、組立などにロボットやドローンは投入しづらく省力化投資に見合うだけのメリットは期待出来そうもない。 「未来の年表」によれば今からわずか5年後の2024年には、全国民の3人に1人が65歳以上になる。その頃、数の多い団塊世代ジュニアは50~53歳で、その下の年代からは急に人数が少なくなるため、全国の職場はどこも完全に逆ピラミッド。少なくなった労働力を各産業で奪い合うようになる。現状は地方に行くほど人手不足が深刻化しており、今後は原発で働いてもらえる人の確保に赤信号が灯る。 対策としては日立・東芝と三菱がそれぞれ沸騰水型と加圧水型のメンテナンス専業会社をつくり、そこに従来の下請け作業員クラスまで全員を社員として雇い入れ、全国の原発の定期検査を順次こなしていくことが考えられる。また、いままで原発で外国人労働者を働かせることに抵抗感があったが、安倍政権が導入した労働力確保のための方策を活用し、メンテナンス専業会社が途上国から若者を募集し定着させることも考える必要がある。1220 石炭火力廃止と電力会社の対応(10)2019.4.13 世界的に石炭火力に逆風が吹いている。4月12日付けの朝日新聞は一面トップで日本の大手金融グループが独自の環境対策として石炭火力に対する融資を将来半減すると報じた。我が国では震災後に続々と石炭火力を建設したが、逆風がもっと強まった場合、大丈夫なのだろうか。各大手電力会社が石炭火力から離脱するとした場合、その困難さはどの程度か。個別に状況を確認しているが、今回は九州電力である。九州電力の電源構成(2017年度発電実績)は下図の通りだ。九州電力は電源構成から見ると、火力発電が四国電力とほぼ同じの63パーセントだ。しかし内訳は石炭火力が29パーセントと四国電力の半分に過ぎない。その分、天然ガス火力が31パーセントと大きく、石炭火力と天然ガスが拮抗している。また、原発が5機あり、そのうち玄海原発1号機は廃炉となっているが、玄海2、3、4号機292万キロワットと川内1、2号機178万キロワットが稼働しており合わせて供給の16パーセントを支えている。これは大手電力会社で一番大きい。再生可能エネルギーは太陽光発電が主で、水力発電の4パーセントも加えると自社分、他社分あわせて全発電量の20パーセントになっている。九州電力の火力発電所は関連会社分も含め、10ヶ所、1038万キロワットで、その内訳は次のとおりだ。石炭 262万キロワット (25パーセント)天然ガス 488万キロワット (47パーセント)石油 288万キロワット (28パーセント)九州電力全体の発電実績から見ると、設備として28パーセントを占める石油火力の運転はかなり低く抑えられている。いずれも1970~1980年代に運転開始した古いもので、コスト高のため停止させており、順次廃止させるものと思われる。今後もし、石炭火力の運転に批判が投げかけられた場合、現在発電量の29パーセントを石炭火力が担っており、天然ガス火力あるいは再生可能エネルギーを増やしてカバーすることになろう。原発は470万キロワットもあり、温暖化対策上はこれに再生可能エネルギー開発を合わせることで対応可能である。九州電力には5万キロワット以上の水力発電設備は12ヶ所、297万キロワットある。このうち揚水式水力発電所は120万キロワットの小丸川発電所と60万キロワットの天山発電所である。これにより需要が少なくなる時間帯に原発の出力を吸収することが可能である。ただし、最近は再生可能エネルギー、特に太陽光発電が増加したため、これらの揚水式水力発電所が昼間の余剰を吸い上げる役割を果たしている。水力発電以外の再生可能エネルギーは九州電力以外も含めると、発電量では20パーセントと比較的大きな割合となっている。これからは人口減、労働人口減による地方の衰退が迫っており九州地方の電力需要も減少すると思われる。大型原発の事故や定期検査などによる停止に備えながら、どのようにして需給バランスをとりながら石炭火力を減らしていけるか、時間帯によっては大きな割合を占めるようになった太陽光発電による電力を、揚水式水力を使ってどのように捌いていくのか、本州との連系線の増強も視野に入れて難しい方程式を解いていく必要がある。次回は沖縄電力の石炭火力問題対応状況について。 (つづく)