枕経の後、娘の車で自宅に連れて帰ってもらいました。

まずお化粧して、喪服などの準備、泊まる支度もして、息子の式服、シャツなども持ってまた葬儀社の安置室に戻りました。





湯灌の儀



通夜の2時間半前、湯灌をしてくださる方が部屋にこられました。


男性1人、女性1人のお二人です。

丁寧なご挨拶をされて、母に手を合わせた後、「準備に入らせていただきます」と言われて、部屋に簡易浴槽のような物を運んで来られました。


下の写真のような感じです。

(こちらの写真は葬儀社よりお借りしました)


頭の方の壁に「大きいエアコンスリーブ」のような穴があったのですが、そこの蓋を開けられて•••あらビックリ!

その穴から二つのホースが出てきました。

そしてその二つのホースを浴槽に接続。

シャワーのホースも接続してました。


写真のような桶や柄杓も用意されました。




男性の方が「湯灌は、ただお身体を清めるだけでなく、この世の穢れや痛み、苦しみを洗い清め来世へ向かうためのものです」この通りではないけど、このようなお話しでしたと説明してくださいました。



それから母の横で、男性が上の写真の紫の布を広げて、私たちの目から(布を持っている男性からも)見えないようにして持って、その布の向こうで女性が母の浴衣を脱がせ、母の身体を別の布で巻いているようでした。


それから2人で母を運んで浴槽の上に横たわらせました。

その上に先ほどの紫の布を掛けました。



女性から「湯灌の後、これを着てもらいたいというお洋服などはありますか?」と聞かれたので「準備していないんです」とお答えしたら「それではこちらをお着せしてよろしいですか?」と白い着物(仏衣って言うのかな?)を見せてくださいました。


「はい、お願いします」


亡くなった時に母に何を着てもらうか、というのは前々から妹と話していたのですが、元気だった頃とはかなり痩せてしまったし、ひとつに絞ることができなかったんです。

父もそうだったし、白い装束で行ってもらおうということになりました。



女性)こちらには手甲、脚半、六文銭などもありますが、浄土真宗では亡くなられたらすぐにお浄土にいらっしゃると言われておりますので、これらのものは使いません。

手に持っていただくお念珠はこちらのセットのものを使ってもいいですか?


「はい、それでお願いします」



女性)先ほどの浴衣はたたんで、棺の足元にお入れします。


「はい、よろしくお願いします。母のお世話になった施設の方から棺に入れて欲しいというベストを預かっていて、それを一緒に入れたいのですが•••」



女性)はい、わかりました。一緒に入れられますのでご安心ください。




男性)まずは【逆さ水の儀】を行います。これはご親族様にもお手伝いいただきます。左手に柄杓を持ち桶のぬるま湯を一杯すくって、足元から胸元へ少しずつ掛けていきます。


と言われて見本を見せてくださいました。


まず喪主様、と言われて私が一番にやって、妹➡️夫➡️娘➡️姪、の順にやりました。


紫の布は防水仕様になっているようで、お湯が玉になってコロコロと転がっていきました。




それから家族は座って母が清められるのを見守ります。


シャワーからお湯が出るようになっていました。


まずは首筋や顔周りなどのマッサージをしてくださって、それから母の顔に泡立てた石鹸をつけて優しく洗ってくださいます。


顔剃りもしてくださいました。

お顔に化粧水や乳液もつけてくださってました。


それからシャンプー。

シャワーで流してリンス。

ドライヤーで髪を乾かしてくださってます。




その間女性は布団の上に先ほど見せてくださった白い着物を広げて準備し、それが終わったら母のところに来て、紫の布の下で母の身体を足元から洗ってくださっています。



浴衣を脱がすときもそうでしたが、家族の者が直接母の身体を目にすることのないよう配慮されていて、亡き母の尊厳も守られているように感じました。



男性の方が髪の毛を終了した後、また紫の布を広げて持たれ、私たちからも男性からも見えないようにして、その向こうで女性が母の身体を洗い、シャワーで流し清めてくださってました。



その後濡れた身体を拭いてまた布でくるんでいるようでした。
ある程度まで進んだら、男性は紫の布を下ろされ、2人でまたしっかりとくるまれて、母をお布団に運びました。

それからまた男性が紫の布を広げて持たれ、その向こうでは女性が母に巻かれている布をとって白い仏衣に着替えさせているようでした。


男性が紫の布を下された後、女性は引き続き母の着替えをなさっていて、その間男性は浴槽の片付けをなさってました。

「少々排水の音がします」と言われてなにやら操作されるとあの2つのホースのうち、1つから浴槽にたまったお湯が吸引され、排水されてるようでした。

シャワーで浴槽内を洗いながら排水。
流れるようにスムーズに後片付けなさっていて、
めっちゃ、うまいこと考えられてるなと感心して見てました。


女性)これからお化粧をいたしますが、何かご希望はございますか?


「母が口を開いてるのが気になるのですが•••」


女性)これは閉じられると思います。見たところ歯を少し触れば閉じると思います。マッサージして歯の処置をしてもよろしいですか?


「えっ、口が閉じるんですか!ぜひ閉じさせてください。お任せしますのでよろしくお願いします」


女性)では処置させていただきます。その間衝立を立てますね。


と言われて母の頭が隠れるような衝立を立てて、処置してくださってました。
しばらくして衝立を取られて、


女性)お口は閉じました。ご家族の皆様こちらにいらしてお顔をご覧ください。


母の側に行って顔を見ると•••

家族から一斉に驚きの声が上がりました!

「わあ〜!お口が閉じてる!」
「笑ったような顔になってる!」
「すごい!良いお顔!」

亡くなった時の顔も「安らかだったんだな」と思える顔でしたが、この時に見た顔は元気だった頃の母を思い出させる表情でした。

母が清められている間、ずっと泣いていた娘や姪も笑顔になっていました。

手もしっかりと合わせられていてお念珠を持っていました。



女性)これからメイクしますが、どのようにいたしましょうか?


「自然な感じでお願いします•••ていうか濃いメイクしてくださいとかの希望される方いるんですか?」つい聞いてしまいましたあせる


女性)はい、いらっしゃいますよ。アイシャドウをしっかり入れて欲しいとか、口紅をしっかりつけて欲しいとか、さまざまです。ではお母様には血色が良くなるような自然なメイクをさせていただきますね。


「はい、よろしくお願いします」

女性が大きなメイクボックスから化粧品を選んで、少しずつ母にメイクしてくださいます。

ファンデーションのおかげで、ツヤのあるお肌になってます。


「あ、でも眉毛はもう少し書いてもらってもいいですか?」


女性)わかりました。自然な感じで足していきますね。


眉も足してもらい、頬に軽くチークも入って、優しい色の口紅もつけていただきました。


お口が閉じた時の驚きも大きかったですが、メイクが終わった後の母は、本当に安らかで、口角が自然に上がり微笑んでいるようなお顔になり、その場にいた家族は全員満足していました。


湯灌師の方々に御礼を言って湯灌の儀は終了です。



葬儀社の担当の方が来られて、
お部屋に棺が運ばれてきました。


パンフレットを見て選んだけど、実物を見ると本当に可愛い!

LINEの写真で見ていた妹も
「実際に見るとこれいいね!これに決めてよかったね。お母さん好きそうだよ」と言ってくれたのでホッとしました。


「ではこれから棺におさめさせていただきます。まずは棺の底に畳を敷きます。『畳の上で死ぬ』ということを表します」

と言われて最初に薄い畳のようなものを入れられました。

その上に敷布団を敷いて、それからいよいよ母を棺に。

「ご家族の皆様もお手伝いください」

と言われて私、妹、娘、姪、と葬儀社の担当者と他のスタッフ方々と女性ばかりでシーツごと持ち上げ母を棺におさめました。

後は皆さんがされるのを側で見守りました。

特養でエンゼルケアの時に着せていただいた浴衣を足元に入れて、母の上に特養から預かったベストを置いていただきました。
私たちも母のお気に入りのフェイラーのタオルハンカチを入れました。

お布団を掛けて、その上に棺と同じ模様の布を掛けていただきました。

とうとう、棺におさまってしまった母。

湯灌をやって本当に良かったです。

純粋に母との別れを実感できたし、
綺麗な姿で母を送ることができます。


時間は順調に過ぎていきました。