S2 ep116 サバゲ戦記 対決! PSG-1 | イナギFIVE-0 エアガンライフ

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エアガンなどテッポウ遊びの雑感。サバゲ、時々行ってます。

 雨の日曜日、特にすることもなくぼーとしていると、昔あったことを思い出す。



 私がサバゲを始めてしばらく経った頃の出来事だったと思う。


 当時のチームに、地獄の番犬と呼ばれるアイツがいた。比較的アグレッシブなメンバーが多い中で、フラッグ周辺に潜んで、前進してくる敵を待って狙撃していく。まさしく番犬。ヤツの愛銃がマルイのPSG-1だった。


 当時のチームは、小さな川の横の狭いブッシュで勝手にゲームしていた。フラッグ間が70mくらいだろうか。かなり狭いので、フィールドを有効活用できるようホップなしでゲームをしていた。かなりの接近戦になり、これが大変面白かったのだ。ただし、セミの銃はホップありだ。このルールにより、スナイパーライフルがウデ次第でかなり強かった。


 当時のエアコキスナイパーライフルは性能が低かった。各自で独自のカスタム、調整をしていたが、弾道は安定しないし、ホップも不安定でみんな手こずっていた。それでも古参兵の多くは、コッキングのスナイパーライフルを使って、出始めの頃のマルイ電動ガンと対等に戦っていた。いや、強かったな。


 そんな中、出たばかりのPSG-1は当時のエアコキスナイパーライフルを軽々越える性能だった。安定感のあるホップで、集弾性、遠射性が高く、加えて連射も効き、かなりの戦闘力だった。



 そんなPSG-1をもつ地獄の番犬は強かった。しかし、フラッグ周辺で敵を待ち、果敢に前進してくる敵を優位な位置で待って撃つのは、反則ではないが、あまり評判は良くなかった。ましてや、圧倒的優位性のPSG-1なのである。


 確かにやつのウデもよかった。見通しが効かないブッシュのフィールドで、30m超の距離から撃ってくるのである。こちらからはヤツの姿は見えないし、見えたところで、ノンホップでは近づかないと届かないし、フルでもなかなかブッシュは抜けない。私も相手がどこにいるのかわからない状態でヒットされたことが何度もあった。


 その日も何度か番犬にやられていた。セーフティに戻ってくると、番犬はニヤニヤしていて、自信満々、なんだか自慢みたいなことを言うのである。仲間内での和気あいあいのゲームだが、これにはさすがにカチンときた。


 その後のゲーム。私は緒戦で2人くらいの敵をゲットし、中央広場を越えて敵側のエリアに入った。中央広場は開けていて突破が難しく、ここで膠着しがちだ。しかし、敵をクリアしたことで、ササッと広場を渡ることができた。


 ここからはデンジャーゾーンだ。敵が潜んでいる可能性が高いが、ブッシュで見通しはほぼない。息をひそめ、周囲で何か動くものはないかを探りつつ、じんわりとフラッグを目指して前進していく。この緊張感がすごい。遊びだとはわかっていても、恐怖すら感じる。立ってなんか進めない。ガチで匍匐前進だ。


 その時、すぐ近くの丈の高い草に着弾があった。え、ここで? という気持ちがあり、また敵の気配もなく気のせいなのか? とも思うが、瞬時に体は地面に低く突っ伏している。思い返せば、前方遠いところで射撃音があったように思える。


バシッ、シャ。


 射撃後にピストンが下がるプリコックのわずかな作動音。PSG-1、ヤツだ。地獄の番犬だ。


 まずい、いったんこの場からブレイクしなくては。どうしよう。フルで牽制射撃をし、その間に下がりたいが、番犬の位置がわからない。それにしても、このブッシュの中を匍匐前進しているのに、ヤツには見えるのか? いや、そうだ、姿は見えなくても草が揺れるんだ。


 私は持っていたMP5SD6のストックをいっぱいに広げ、腕もぐっと伸ばして、右側2mくらい横の草をザザッと揺らす。バシッ! 着弾があると同時に、左後方に一気に下がる。それを追って二の矢が飛んできたようだが、それはわからない。とにかく、一目散に10mくらい下がって、ベタと伏せる。しばらく様子をうかがうが、弾は飛んでこない。


 くっそ~、それにしてもなんとかしてやっつけたいぜ。しかし、いったいどうすればいい? 近づこうとしても、ヤツに察知される。ここからではノンホップのMP5では山なりで届かない。第一、ヤツの位置がわからない。まずは、位置を特定しないと。


 いま弾が飛んでこないということは、ここまで下がれば、やつの探知範囲外ということか。そうか、よし、それならミラージュ作戦でいこう!


 いまはフィールドの中央、やや右寄りにいる。いったんさらに下がって、もっと右へ行く。ほぼ右端に近いところまで進み、さあ、行くぞ! やや控えめながら、目立つくらいにはガサゴソさせて中腰で前進していく。少し進んだあたりで弾が飛んでくる。サッとしゃがむとさらに一発、けっこうやばいくらい近くに当たる。しかし、さすがにブッシュが濃く、抜けてはこないようだ。2発目でおおよその位置を感じ取り、すぐさまフルオートで撃ち返す。


パラララ~、パラララ~、パラララ~!


 めくら撃ちだが、2、3回ハデにぶちかましてやる。そしてすぐさまパッとしゃがみ、静かに、素早く後ろに下がる。


 開けた中央広場まで下がり、そこで上半身をぐっと下げながら、一気に逆サイド、左端に向かって駆け出す。他の敵に見つかりませんように、と祈りながらも静かに、必死にダッシュ! 幸いにもみんなブッシュに入っているようでみつかりはしなかった。


 逆サイド、境界線ギリギリの左端にとりつく。私のミラージュ、幻影は右端に残してきた。番犬はまだ幻影を見ているはずだ。よし、ここから番犬目指して前進だ。気配を気取られてはいけないが、スピードも重要だ。右ではなく左を選んだのは、左端は比較的ブッシュが少なく、またなんとなく道らしい前進ルートもあるからだ。このルートを、あらん限りの静かさと速さで前進していく。他に敵がいたらアウトだが、それは賭けだ。番犬がいるのだから、ほかの守備隊が残っているとは考えにくい。


 かなり進んだところに、枯れた池の跡がある。そこに滑り込み、身を隠しながらさらに前進。これでもうフラッグと同じくらいのラインまで来たのではないか。番犬も近くにいるはずだ。池の縁から顔をのぞかせ、索敵する。ヤツはどこだ? 



 いた。比較的大きな木があり。その後ろに張り付くようにしてヤツがいた。あんな大きな木がどうしてわからなかったのだろう? おそらく前方からはよく茂っていて木とはわかりにくかったのかもしれない。


 そうか、ヤツは時々あの木に登って俯瞰して索敵していたわけだ。だから位置がばれてしまう。しかも上から撃つから角度のついた弾道になり、ブッシュも抜けてきやすいというわけだ。


 ヤツは木の後ろに張り付き、油断なく体をわずかに乗り出して右端方向を探っている。ヨシ、ヤツは私がまだ右にいると思っている。あそこからここまでどのくらいかかっただろう。1分ということはないが、3分くらいか? 


 さて、ここからが仕上げだ。 ヤツはなかなかカンがいい。あまりに近づけばバレてしまう。そこで、さらに奥まで進み、そこから大回りしてヤツの斜め後方から近づくようにする。ガサゴソしないようにするが、どうしても音はする。いまにもヤツが気づいてしまうのではないかと緊張する。撃たれる怖さより、ここまできたのにふいにしてしまうのではないかという心配、悔しさの方が大きい。


 ヤツまでは25mくらいだろうか。まだ私には気づいていないようだ。この先はブッシュが濃くなる。気配を消して近づくのはかなり難しい。ここからフルで一斉射しようか? いや、普通に撃っても届かないし、かなりの山なり弾道になるから、着弾時間もかかって避ける反応時間を与えることになるかもしれない。ヤツの姿も半分木に隠れているから、しっかり狙わないとしくじりかねない。

 

 静かに、確実に必殺の射撃をしなくてはならない。


 ヨシ、行こう! 最後にもう2~3歩だけ、いけるだけ前に出て距離を詰める。そしてMP5SD6のセレクターをセミにし、ゼロだったホップレバーを溶接痕の丸の位置まで進める。この丸がベストホップの目印だ。文字通りの一発勝負。果たして初弾で思うようなホップがかかるだろうか? 


 膝立ちで隠れていた状態から背を伸ばし、上半身をブッシュからのぞかせる。MP5の狙いにくいアイアンサイトの中央に番犬をとらえ、トリガーを引く。


バシッ!


 弾はきれいな水平弾道で一直線に番犬に向かって伸びていく。


「あっ」と番犬の口が動くのが見えた。ヒットだ!


 右の肩のあたりに当たった。番犬が脱力して銃を下ろそうと動いたその瞬間に、2発めを撃つ。今度はPSG-1にあたって、カンッ、と乾いた音を立てる。


「ヒット」番犬がこちらを振り返りながらモゾモゾという。目が合う。私はどんなリアクションをしていいかわからずに、ただ突っ立っていた。ヒットを見たあとに放った2発目は少し卑怯だったと、すでに後悔していた。


 ヤツはとぼとぼと歩いてきて、私の横を抜けていく。もうついでのことでしかないのだが、私はフラッグに向かって歩を進め、フラッグタッチ。フォーンとホーンを鳴らすと、右端の方から味方が姿を現した。そうか、味方が近づいてきていたので、番犬はそちらに気を取られていたんだ。ミラージュ作戦ならぬ影武者作戦になっていたようだ。


 自分なりにいい戦いができたが、番犬はこれで知恵をつけてしまったのか、これ以後さらに抜け目なくなって、なかなかゲットできなくなった。


 あれはもう何十年も前のことになる。サバゲが自由でエキセントリックな時代のことだった。