『未来へ』あんな事やこんな事。~第四章~ | ハチの○○な話

『未来へ』あんな事やこんな事。~第四章~

4.死の淵で見えたもの


私は救急車で病院に運ばれた。
・・・が、結果は4つの病院で受け入れ拒否。
体中が激しい痛みに襲われ、私は声も出せないし目を開けることも出来ない。

やっと受け入れてくれる病院が見つかり、お医者様が何かを話している声が聞こえた。
「お母様を呼んで下さい。死亡する可能性があります」
その声は、凄く静かで、凄く強くて、ずっと私が待っていた言葉だった。

『死亡する可能性があります』

この言葉を聞いたとき、ずっと待っていたはずだったのに。
ずっと心では望んでいたはずの言葉だったのに、

「死にたくない」

そう思った。

私は今まで何をしていたんだろう。
私は今まで何がしたかったんだろう。
まだ、何もしてない。

家族に、ありがとうって言ってない。
家族に、楽しかったって言ってない。

家族に心からお礼が言いたかった。
「楽しかったよ」って。
「ありがとう」って。
「俺の人生は最高だったよ」って。
そう、伝えたかった。

でも、やっぱりウソは言いたくない。
本当に、私は今まで何をしてきたのだろう。

いつもお金の事ばかりで「お金」、「お金!」って。
結局、最期まで家族に何も言えないなんて。

でも、これが私がこれまで生きてきた結果でした。
その現実を感じたとき、心から1つの感情が産まれました。

(死にたくない・・・・・・)

家族に「ありがとう」って言うまでは。
家族に「楽しかった」って言うまでは。
「オレは最高だって」心から伝えるまでは、、、

『オレは絶対に死なない!』

生きて、必ず人生を最高のものにしてみせる。
好きな物もなくて、好きな事もなくて、好きな人もいない人生は、凄く寂しかった。
ずっと1人だったから、本当は凄く寂しかった。

―――そして私は、生き延びました。

入院中に、幼い頃に楽しかった事や、憧れていた物を必死に思い出そうとしました。
それは、想像以上に難しくて、中々思い出せなかったけど、覚えていたことが2つありました。

それは、【写真を撮ること】と【ヒーローになる事】。

そのとき、私の中に、ずーっとあった不安な気持ちがスッと無くなりました。
凄く不思議な感覚だった。

あんなに執着してきたはずのお金に対する欲も無くなりました。
それどころか全く不安を感じない。

私の夢が、見えた瞬間です。


続く。