やはり上橋菜穂子さんの【香君】は面白い。

香りを言語化して受け取る主人公。
実は私は主人公ほどではもちろんないのだけど、
香りでわかることが多分他の人より少しだけ多い。

随分前のことだけれども、
精油に詳しい方が星座別の香りを調合したものを嗅がせてもらった時、
その香りの変化により感じる風景が変わると伝えた。
夜の森の道は木の枝で覆われていて暗い。
でももっと歩いていくと、その木がなくなる。
広場があり、その広場には焚き火が燃えていて…と言ったら、製作者は私の言葉を待っていられなくて、「そして夜空が見えるでしょ」
そう、夜空がぽっかりと見える風景だった。
蠍座の香りだった。
製作者はそれを意図して調合したそうだ。

以前見沼の女體神社のご拝殿の後ろの林にで、何か酸っぱい、発酵したような匂いが充満していて、私はあの林が危ないと思った。
でもだれもそんなことを言わなかった。
1人の友人が、匂いはわからないけど、やはりおかしいと思ったと言った。彼女だけだった。
こんなに【タヒ】に近いような匂いが強いのに、誰もわからないのか。
でもその何年か後、その友人が神社の周りのゴミ拾いに参加したとき、大丈夫だったと教えてくれて、私も行ってみたら、本当に大丈夫だった。
あれは、なんだったんだろう。宮司さんは中山神社の宮司さんのおばさまだそうだが、
人知れず大変だったのではないかと想像する。

香りと言えば、
私がまだ見えない世界の領域に働きかける仕事をしていた頃、
危篤の弟を残して、東京に戻り、ある重要な講義を受けていた。
あのナグチャンパという強い香りの香が焚きしめられている中で、ふと弟の体臭がした。
弟は40歳だったが、赤ちゃんみたいな匂いがする人だった。その匂い。
私はその時弟が他界したのを悟った。
直後、もう1人の弟から、危篤の弟の逝去を知らせる電話があった。

そんなこと、誰にも信じてもらえないが、
別に私だけが知っていればよい。

香君の主人公はそんなことをもっと具体的に、正確に感じ取る。

特定の種類の稲で、多くの人々が飢えを凌げて助かったのに、その稲を徹底的に避ける民族がいて、主人公はその民族の出自。
その秘密を暴くのは、国の闇に抵触することになる。
武力ではなく、香りの力で主人公は静かに、しかし確かな足取りで見えない闇と対峙していく。

ついつい【関根くんの恋】が氣になって、先にそちらを読んでしまったが
読み終えたので、安心して【香君】を読んでいる。
関根くんの恋のほうが香君より面白いってこと?
ではなく、関根くんがあまりにどうかしていて、放って置けなかった(私もどうかしている)。



※画像は2026.1.1の空