『思った事を言っただけ』 | 心よろず屋

心よろず屋

常態行動心理学者の瀬木と申します。
此処では心に纏わる様々な事をテーマに日々綴ります。
心に纏わる凡ての事にお答えを差し上げます。
貴方の心の宿り木は此処に有ります。

或る時、私の事務所に男が血相変えて怒鳴り混んできた。

"貴様!根も葉もない噂を社内にばら蒔きやがって
  どういうつもりだ!俺の親が元犯罪者?俺の兄弟は
   痴漢の常習犯?どこにそんな証拠がある!
   出せるものなら出してみやがれ!"

男は私の胸ぐらを掴み今にも殴りかからんばかり。

"トランキーロ、あっせんなよ
  俺は思った事を言っただけさ、悪気はないんだ"

私は笑顔でそう返し彼の両手を掴み後ろ手に捻り上げた。
彼が悲鳴をあげて振り向いた先には複数の女性がいた。

彼女達は激しい怒りの目を彼に向けていた。

そう、彼の"悪気のない一言"によって心を深く傷つけられ
或る者は結婚を破談にされ或る者は言われなき差別を受け
或る者はストーカー被害に遭い、或る者は貞操を奪われた

然し彼の背後にいる裏稼業の報復を恐れ
沈黙せざるを得なかった犠牲者達である。

表には表、裏には裏。
其々にやり方と言う物がある。

裏稼業には裏家業の暗黙のルールがある。
其を犯せば裏社会から追放される事になる。

彼の背後についていた組織は或る御法度を働いた。
平たく言えば"仲間を売った"訳だ。

それが裏社会にバレたら只じゃ済まない。
恐らくこの世に生きて存続する事は叶わなくなる。

その事をボスにそっと私は耳打ちしたのだ。
ボスの顔から血の気が引いてガタガタと震え始めた。

私はボスと取引をした。
この事を不問にする代わりに奴と完全に手を切れと。

ボスに残された選択肢は一つしかなかった。
その結果、奴は後ろ楯を完全に失ったのだ。

然しその事を奴は未だ知らない。

"お、お前ら、俺に歯向かったらどうなるか?
  解ってんだろうな、ボスが黙っちゃいないんだぞ"
と震える声で息巻いていた。

私は親切にボスへ電話を掛け彼に電話を渡した。
ボスはたった一言彼に告げただけで電話を切った。

"さようなら"と一言だけ。

彼は待ってくれと何度と懇願したが電話は切れている。
何度もかけ直したが電話は繋がらなかった。

遂に完全に形成は逆転した訳だ。

その後、彼の姿を見た者は誰もいないと言う。
"思った事を言っただけ"は注意した方がよいようですね。