理化学研究所(理研)は、同研究所自己免疫疾患研究チームをリーダーとする国際共同研究グループが、全世界の10万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、関節リウマチの発症に関わる101個の感受性遺伝子領域を同定、同時に新たなゲノム創薬手法を見いだし、関節リウマチの治療における新規治療薬候補を同定したと12月26日に発表した。

関節リウマチは、関節の炎症と破壊をもたらす自己免疫疾患であり、遺伝的要因が発症に関与することが知られている。国内に約70~80万人の患者がいると推定されている(平成23年厚生科学審議会報告書)。中年以降の女性に多く発症し、関節が変形・拘縮することから、著しくADLを侵害。介護保険を利用してQOLを維持している患者も多い。

これまでに国内外の研究グループによってGWASが実施され、関節リウマチの発症に関与する感受性遺伝子領域が数多く報告されてきたが、今回、国際共同研究グループは世界中のGWASのデータを統合し、アジア人および欧米人を含む10万人以上を対象としたビッグデータ解析を実施。その結果、新たに発見した42領域を含む、計101領域の感受性遺伝子領域を同定した。

次に、得られた感受性遺伝子領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行った。その結果、関節リウマチの感受性遺伝子の一部が、原発性免疫不全症候群や白血病の感受性遺伝子と共通していることや、関節リウマチの病態が制御性T細胞や多様なサイトカインシグナルによって制御されていることが判明した。

さらに、GWASで同定した疾患の感受性遺伝子領域内の遺伝子と創薬データベース上のターゲット遺伝子のつながりを調べ、候補となる治療薬を探すという、新しいゲノム創薬手法を見いだした。その結果、関節リウマチの感受性遺伝子がタンパク質間相互作用ネットワークを介して、関節リウマチの治療薬のターゲット遺伝子とつながっていることが明らかになった。

また、他の病気に対する既存の治療薬の中で、関節リウマチの感受性遺伝子をターゲットとしているものがあり、それら既存の治療薬を関節リウマチの治療に適応拡大できる可能性を示した。実際に、乳がんなどの治療に使われているCDK4/6阻害薬が有力な治療薬候補として同定された。

関節リウマチの治療方法は近年、飛躍的な進歩を遂げているが、既存の治療方法では十分な効果が得られない場合や、副作用が生じて治療を続けられなくなる場合もある。今回の研究で明らかになった関節リウマチの感受性遺伝子領域内の遺伝子や疾患病態を考慮することで、より効果的で、より副作用の少ない、新たな治療薬の開発に結びつくと考えられる。また、今回見いだしたゲノム創薬手法を関節リウマチ以外の疾患にも適用することで、さまざまな疾患に対する新薬の開発が加速する可能性に期待がかかる。(ケアマネジメントオンライン)