介護をめぐる課題や今後の方向性(ビジョン)を話し合う「安心と希望の介護ビジョン会議」(座長=前田雅英・首都大学東京都市教養学部教授)の第7回会合が11月20日、厚生労働省内で開催され、「安心と希望の介護ビジョン」を取りまとめた。前回議論になった医療行為については、当面は研修を受けた介護従事者が施設内で医師や看護師と連携しながら、安全性が確保される範囲で喀痰吸引などを行うという内容に抑えられ、「療養介護士」の創設は将来の課題とされた。会議の後半に姿を見せた舛添要一厚労相は、介護ビジョンについて「2025年をターゲットに着実に実現したい」と強調し、会議を締めくくった。

 前回示された「コミュニティ・ワーク・コーディネーター」は、地域の高齢者などが抱える課題に対し、解決に貢献したい高齢者を結び付けながら、高齢者が積極的に参加するコミュニティー・ビジネスや互助事業などを育成するキーパーソンと位置付けられた。
 地域で意欲のある高齢者や住民の中から募集し、厚労相が先進的事例や成功につながるノウハウを提供する機会を設けるという。事務局は、「できれば来年からコーディネーターの募集を行いたい」としている。
 また、地域包括支援センターについては、高齢者やその家族が困った場合に最初に相談する「総合相談窓口」として明確に位置付け、機能強化を図っていく。
 在宅生活を支援するサービスの基盤整備では、高齢者がなじみのある事業者からのサービスを受け、住み慣れた地域で24時間365日安心して暮らせることが強調されたほか、前回の議論を受けて、要介護高齢者に対応した慢性期医療基盤の確保や救急医療のネットワークの整備が追加された。

 医療と介護の連携強化策としては、将来的には医師や看護師と連携しながら、介護現場で必要な医療行為を行うことができる資格・研修の在り方を検討することが盛り込まれた。ただ当面は、研修を受けた介護従事者が、医療的なニーズがある施設で医師や看護師と連携しながら、安全性が確保される範囲内で経管栄養や喀痰吸引を行える仕組みを整備することにとどめられた。
 このほか、医療と介護によるチームケアの推進や、地域での医療・介護の在り方を議論する「地域ケア推進会議(仮称)」の設立も示された。
 成年後見人制度についても、弁護士や社会福祉士、司法書士など専門職と、高齢者の相談支援を行う団体が協力・連携してさらに促進することも加えられた。

 また、職場環境の整備のため、効率的な事業経営を行う上で参考となる経営モデルを作成し、提示するとしたほか、介護の質や介護従事者の技能の評価に役立つようなアウトカム指標(施策・事業の実施により発生する効果・成果を表す指標)の在り方を検討するという。
 会議の後半に姿を見せた舛添厚労相は、「介護ビジョンは、特に現場を重視して考えてもらった。25年をターゲットに着実に実現したい。医療ビジョンも具体化しているところだが、医療と介護が対になって初めて国民を守れる。財源、予算の確保は困難だが、国民に安心と希望を与え、セーフティーネットを構築することが国民の活力を生み出す」と訴えた。
 前田座長はこれに対し、「ぜひ報告書を有効に活用してほしい。実現してくれると信じている」と述べた。
 同会議は、今回の議論を受けて取りまとめ案を一部修正し、近く厚労相に報告書を提出する。