11月14日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会(座長=大森彌・東大名誉教授)では、10月30日の「新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」で示された3%の介護報酬引き上げ方針について意見が相次いだ。

 大森座長は分科会の冒頭、事務局に「この分科会は介護報酬改定についてどういった立場で議論する場なのか」と説明を求めた。
 これに対し事務局は、介護報酬の改定率は、政府が予算編成の過程で財政事情を考慮しながら決定してきたとし、「分科会は政府で決定した改定率の範囲の中で、サービスごとの介護報酬の単位数などについて政府からの諮問を受けて答申を行うもの」と答えた。
 さらに、大森座長は「プラス3%という数字はどうして出てきたのか。3%の所要額が1200億円なのか」とただした。
 事務局は「2006年の報酬改定からの賃金上昇率0.5%と物価上昇率などを勘案しても、1%に満たない。人材確保が困難になる中、処遇を改善するために1%を大きく上回る3%と政府・与党として決めた」と説明。1200億円の根拠については、「今回の保険料の改定に伴う上昇分を埋めるための経費」とした。

 また席上、日本医師会が全国老人保健施設協会と日本慢性期医療協会との連名で、「次期介護報酬改定率ならびに本分科会のあり方等に関する緊急要望」を提出。三上裕司委員(日医常任理事)が読み上げた。
 緊急要望は、3%の引き上げに対して一定の評価をしながらも、「過去2回のマイナス改定と社会保障費の自然増分2200億円の削減について議論することなく示された3%の引き上げは、決定の根拠が乏しく『焼け石に水』の感が否めない」としている。
 また、「介護報酬改定はこの分科会で議論が取りまとめられると理解していたが、分科会での議論の最中に、全く別次元から介護報酬改定率が公然と発表され、あたかも既定事実のように報道されていることに対し、強い失望を感じる」と訴えている。