厚生労働省は11月14日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、2009年度の介護報酬改定に向け、「居宅系サービス」「地域密着型サービス」に関する個別の論点を示し、委員から意見を求めた。ケアマネジメントについての評価や、普及の進んでいない「夜間対応型訪問介護」「小規模多機能型居宅介護」の促進策などが話し合われた。

 この日、厚労省が示したのは、▽特定施設入居者生活介護▽福祉用具▽ケアマネジメント(居宅介護支援、介護予防支援)▽短期入所生活介護▽短期入所療養介護▽居宅療養管理指導▽夜間対応型訪問介護▽小規模多機能型居宅介護-の8項目。

 「特定施設入居者生活介護」では、特定施設への入居者の約4割は病院や老人保健施設からの入居であるため、一定の医療ニーズが存在すると説明した。
 また、介護職員の賃金水準が施設サービスと比べて「概して低い」ほか、特定施設の職員で介護福祉士の資格があるのは約2割で、他のサービスと比べても資格保有率は決して高い水準ではないという。
 今後、利用者の選択による手厚い人員配置が利用者負担にできることも踏まえながら、介護と医療の連携などを促す報酬の在り方を検討していくとしている。

 「福祉用具」では、製品の貸与費用の適正化を図るため、都道府県や市町村が、国保連合会介護給付適正化システムなどを活用しながら、適正な貸与価格を分析した上で公表できるようにする提案があったほか、福祉用具サービスの保険給付の在り方について調査研究を行い、「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」で引き続き議論を行うとしている。

■「40件超」での報酬逓減も見直し検討
 「ケアマネジメント(居宅介護支援、介護予防支援)」では、居宅介護支援を行う1事業所当たりのケアマネジメントにおける介護報酬受給者数は、2003-06年3月まで80-85人の水準で推移していたが、06年4月以降は急減。今年2月には約58件となっている。また、居宅介護支援の収支差率が悪化しており、介護支援専門員1人当たりの利用者数も05年の37.6人から08年は26.9人にまで落ち込んでいる。
 報酬の論点としては、「介護支援専門員1人当たりの標準担当件数が40件を超えると、報酬が逓減する仕組みの見直しを検討する」「専門性の高い人材を確保し、特定事業所加算では、計画的な研修を実施する事業所を段階的に評価する仕組みを検討する」「入退院時の調整等の業務について評価を充実させる」「意思疎通が難しい認知症の利用者や状況把握のために頻繁に訪問が必要な独居高齢者など、ケアマネジメントで手間を要する場合への加算を検討する」が挙げられた。

 意見交換では、木村隆次委員(日本介護支援専門員協会会長)が自ら提出した要望書について説明。介護支援専門員が常勤専従でケアマネジメント業務を行って、家族で暮らせる収入を確保できる報酬を要望した。この中で、入退院時の情報提供や調整をした場合の加算や、認知症や独り暮らし支援についての加算などを提案したほか、介護保険施設の入所者100人ごとに1人の常勤のケアマネジャーを置く体制は困難であるとし、50人に1人を配置する施設に対する報酬上の評価を求めた。

 「短期入所生活介護」では、08年の短期入所生活介護事業所の収支差率は7.0%で、05年調査の8.4%から1.4ポイント低下している。経営実態調査の結果などを踏まえ、現行の体系を基本にすることが示されたが、介護従事者のキャリアアップの仕組みや各種加算の在り方などについては検討を加えることとした。

 医療提供施設(病院、診療所、介護老人保健施設)が行っている「短期入所療養介護」は、リハビリテーションやレスパイト(介護者の休養)などの点で効果が見られるため、▽事業所数の拡大▽緊急時体制の見直し▽「泊まり」以外の機能の強化-の必要性が指摘された。
 また、現在の短期入所療養介護と同じ施設要件を満たしていれば、介護老人保健施設、療養病床以外の有床診療所にも事業を認めることや、「緊急時短期入所ネットワーク加算」要件の見直し、短期入所中の集中的なリハビリの提供や日中の「お預かり」などのサービス充実が提案された。

 「居宅療養管理指導」では、看護職員がケアマネジャーや医師と協力して居宅での療養支援をする仕組みづくりや、薬剤師による居宅療養管理指導でケアマネジャーなど他職種との連携を促進する観点などから報酬を見直すことが提案されたほか、居住系施設に入所する要介護者への居宅療養管理指導では、移動などの労力を踏まえた評価についても課題とした。

■夜間対応型訪問介護の24時間活用へ
 「夜間対応型訪問介護」の1事業所当たりの利用者数は23.9人で、導入当初の想定利用者数の300-400人を大きく下回っていることから、事業所の経営安定化に向けた報酬見直しが検討された。
 利用者からの通報を受け付けるオペレーションサービスの機能を、夜間だけでなく日中を含む1日24時間利用できるようにして、利用者の拡大につなげるほか、オペレーターの資格要件の緩和や介護従事者のキャリアアップについても、報酬と共に検討していく。

 「小規模多機能型居宅介護」の利用者の平均要介護度は2.57(予防を除く。今年4月審査分)で、当初予定していた3.5よりも軽くなっており、事業者からは中重度の利用者の確保が難しいとの声が上がっている。また、今年の介護事業経営実態調査では、小規模多機能型居宅介護の収支差率はマイナス8.0%と厳しく、看護・介護職員の給与も他のサービスに比べて低水準であることが指摘された。
 事業所の経営安定のため、在宅サービスから円滑に小規模多機能に移行できるような方策や、人員の効率的配置、既存建物の活用を促すため、これまでの基準を見直すことも検討する。
 当初は中重度者を想定したサービスだったが、現在は比較的軽度の利用者も多いことから、要介護度ごとの報酬設定のバランスを見直すことも示された。このほか、介護従事者のキャリアアップや市町村独自の報酬の在り方などが、今後の検討事項とされた。

 また、この日の分科会では、井部俊子委員(日本看護協会副会長)が訪問看護についての要望書を提出した。要望書は、08年の訪問看護1事業所当たりの1か月の介護保険関連収入が、05年と比べて看護職員1人分の給与に相当する27万7000円の減収となり、その一方でサービス提供量は1.2倍に増えたとして、訪問看護事業の運営は大変厳しい状況に置かれていると指摘。その上で、訪問看護費の引き上げ、ターミナルケア加算の評価アップ、24時間前訪問要件の撤廃、病院などから在宅へのスムーズな移行支援のための評価を求めている。