全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は、介護の日の前日にあたる11月10日に都内で記者会見を開き、介護保険の利用実態とその改善課題を明らかにする「介護1000事例調査」の最終報告書を公表した。

民医連は、9月17日に「介護1000事例」集約運動の中間まとめを発表していたが、今回、調査全体の最終結果をとりまとめた。集約された事例は、5月から9月の期間に29都道府県、334事業所(75法人)から728事例が寄せられた。

■集約事例のプロフィール
●性別
男性:307件(42.2%)
女性:421件(57.8%)
●年齢構成
75歳以上の後期高齢者が70.1%を占めた。70歳~74歳以下が13.3%、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が8.2%だった。
●家族構成
親子34.9%、独居31.9%、夫婦のみ21.2%。
●要介護度
予防給付(要支援1・2)が24.8%、要介護1以下(自立を除く)が41.3%を占めた。要介護4・5は計26%だった。

■事例分析で明らかになった9つの困難
728事例を分析し、介護と生活をめぐって利用者、家族が直面している困難について、以下の9点に整理した。

1.重い費用負担のため、利用を断念もしくは手控えざるを得ない事態が広がっている。
2.認定結果と本人の状態が著しく黍離(かいり)する傾向が強まっており、その結果、サービスの利用に制約が生じている。
3.予防給付への移行や、軽度者に対する福祉用具の利用制限などにより、状態の悪化や生活上の支障を生じている。
4.至急限度額の範囲では、十分なサービスを受けられない、もしくは支給限度額を超えた利用が必要なため、多額の自費負担が発生している。
5.家族との同居を理由とする生活援助の機械的な打ちきりなどの「ローカルルール」の適用、外出支援など、利用に対する様々な制約が広がっている。
6.重度化が進むが施設入所もままならず、家族介護、介護費用の二重の負担が増大する中で、在宅生活の維持、療養の場の確保に困難をきたしている。
7.医学的管理を要する場合の施設入所、在宅生活が困難になっている。
8.独居・老老世帯では、在宅での介護、生活の継続に様々な困難をかかえている。
9在宅での重度記麺症の生活・介護が深刻化している。

■全体の特徴
利用者の経済状態が非常に厳しく、利用料など費用負担の問題が多くの事例で共通している(上記1)、給付を抑制する仕組みによって利用の手控えや取りやめが広がっており、利用者・家族の介護、生活に支障をもたらしている(上記2~5)、「行き場のない」利用者の事例(上記6~9)が過去に実施した調査より数多く寄せられた、などがある。