1996年最後の日の「ゲキ・ガンガー3」 | はばら研ブログ

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アニメーター・アニメ監督の羽原信義さんのファンブログです。

「機動戦艦ナデシコ」第14話で、ゲキガンチームとジュンペイとナナコは
みんなでアニメ「機動戦艦ナデシコ」を観る。新作ではなく総集編であることに
アキラやナナコがコメントすれば、ジュンペイはシリーズ構成における総集編
の必要性について、知ったふうなことを言う。ジョーはといえば、大晦日を控えて
制作会社も大変なのだろうと、ジュンペイよりも深い、アニメの向こうの裏事情
を推測する。第14話の放送日は1996年12月31日、作中の彼らも大晦日の
まっただ中で、アキラはみかんを食べていたりする。ケンはニコニコとみんな
の言葉を聞いている。大人も子どもも、かわいい女の子も一緒になってアニメ
を観て、アニメマニアみたいな議論を日常的に交わす、そういう世界なのだ。

ジョーの言葉のとおり「機動戦艦ナデシコ」第14話を制作している頃の現場
は、なかなかに大変な状況であったという。エンディングクレジットを
みると、この回の新作パートは羽原さんがほぼひとりで絵を描いているよう
な状態だ。それでも研究所のビコビコと光るレーダーはとても96年のアニメ
には見えない、研究され尽くされた表現だし、マス目で区切られた天井が
無造作に映り込んでるレイアウトも、むかしのアニメふうだ。「ナデシコ」
のラブコメ展開にウットリするミーエミーエはどこまでもキュートだし、
オープニング映像では、羽原さんの敬愛するアニメーター・小松原一男さん
が原画を描いていらしたりもする。映像に悲壮感はまったくない。むしろ
「『熱血アニメ』でいこう」というサブタイトルに恥じないために、あえて
むかしふうの少人数の制作体制にしているのかと勘ぐってしまうぐらいだ。

みんなでTVを観ていたそのとき、同じくTVで「ナデシコ」を観ていた
アカラ王子が、作中の「ディストーションフィールド」を参考にした技術
を取り入れたロボットで攻めて来る。ゲキガンガーは苦戦するも、イチか
バチかで試した新必殺技ゲキガンフレアーで勝利した。ゲキガンフレアー
は、じつは博士が「ナデシコ」にヒントを得て生み出したワザだった。

同じアニメを、悪事のために利用する者と平和のために活用する者との戦い。
その勝敗を決めたのは新しいことに挑戦する勇気と、たとえ議論しあう
ことがあったとしても、イザというときには一つになれる、人の心の可能
性だった。そして若者たちを支えていたのは、ナナコというお年頃の娘さん
をもつ年頃になってもアニメに夢中な博士の心だった。

「機動戦艦ナデシコ」の世界の真実があきらかになる直前、アニメの中の
アニメのなかでは、そういう物語が描かれていた。

■「機動戦艦ナデシコ」第14話メインスタッフ■

構成 佐藤竜雄、會川 昇、近衛真守、スタジオ雄
絵コンテ・演出 はばらのぶよし
作画監督 近衛真守
原画 小松原一男 羽原信義

ナデシコスタッフ
作画協力 後藤圭二、St.ジャイアンツ、前田明寿、山岡信一、円谷プロ
アニメーション制作室、門之園恵美、石井明治、トランスアーツ

製作 テレビ東京、読売広告社、XEBEC

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