もしも
悪は存在しない、と言うのなら
誰も何も悪くない、と言うのなら
救われない思いが
より強くなってしまう
 
だから
自分を許すことは
自分の全てを許さないことより
はるかに勇気がいることだった
 
そんな幼稚な私の気持ちに
いつの間にか見えない穴をあけ
胸に突き刺さる未練を
私が気づくより、ゆっくりと
解き放っていったのは
一番近くにいた、ハヤだった
 
無慈悲に新しくなっていく時間の中で
ただ息をして生きていくことを
ダウン症の赤ちゃん、ハヤが
ひとつひとつ、教えてくれた
 
手に入らないものは
手に入らない、と
何かを失えば
何かを得る、と
そして
今ここにあるものは
確かに今、ここにある、と
 
何もできないはずのハヤが
生きる姿勢ひとつで
大切なことを教えてくれた
 
恨んでもいい、こんなダメな母親を
ハヤは、一切、責めなかった
何度でも、何度でも、何度でも
嘘が無い、まっすぐな瞳で
”大好き”と、伝えてくれた
 
ハヤは天使じゃないけれど
ただのダウン症の赤ちゃんだけど
ハヤの体温は
無条件に、私の全てを温めていった