今さらあいみょんを讃える | 辻明佳のナイフとフォーク

辻明佳のナイフとフォーク

旅、お料理、ときどき女優。

人は変わってゆくものだから、今好きなものを記録しておく。


あいみょんのシングル曲が好きでよく歌う。


あいみょんは、あんな短いフレーズの中にたくさんの思いを詰めこむスキルを、

どうやって身につけたんだろうなあ。


『裸の心』からしてすごくないですか

「裸の心 抱えて」

という、


だれっっっっでも

思いつきそうなくらい

シンプルで、

だれっっっっでも

身に覚えがあるくらい

普遍的なフレーズ。

でも、ありそでなかったフレーズ!!


このたった11音のなかに

ためらい不安ドキドキ! どうしようもなく溢れてもてあましちゃう気持ち!

恋のあまずっぱい部分のすべてがギュッと詰まっちゃってるっすよねぇーーー

メロディーもじつはめっちゃ繊細だしね……

「はだかーの心」で思いきり歌い上げて

「かかーえーーて〜〜」でふるえるように余韻のこす……

あー、あの時のあの状態は「裸の心抱えて」た状態だったんだなー!!!

て誰しも思い出しちゃうよねえー



今さら改めてほめるまでもないけどDISH//に提供した『猫』もいい。


メロでやや具体的な風景を切り取って、主人公の輪郭をある程度浮かび上がらせてから

どちらかというと抽象的な「思い」を語るサビで

みんなをガッと感情移入させる、

というあいみょんお得意のパターン


自分の手をすり抜けていってしまった(亡くなった?)恋人を

「猫になったんだよな君は」

で納得しようとする、でもできないっつう

なにーーー猫になったっていう発想、なにーーーー?

少年のナイーブさぜんぶ乗っかっちゃってるーーーー

これリリース時あいみょん22歳ですよ

天才よ……


最初これ聞いた時泣いちゃって

愛しすぎて逆に『君の膵臓をたべたい』を一生観ない決心をしたくらいだ

なんか……

「あ、私が感動したこのフレーズは映画の中からのあれなのね」とかなんか

がっかりしたらやだから……

(そういう意味でじつは劇場版鬼滅の刃の『炎』は

映画にぴったりよりそいすぎていてなんとなく苦手なんだ……

映画全体がちょっと演出過剰になってしまうというか、お涙ちょうだいになるというと言い過ぎなんだけど……)


それ以上に私脱帽しちゃったのがさ

猫の2サビラストの

「矛盾ばっかで無茶苦茶な僕を

慰めてほしい」

という歌詞……


10年20年前だったらば

「矛盾ばっかで無茶苦茶な僕」のことを、

はげましたり

叱りつけたり

乗り越えさせたり

なんらかの改善に向かわせる力(役目)が

恋人にはあったと思うんだよね。

ひと昔前ならそういう歌詞になってたんじゃないかと思うのよね


でも、そうじゃないんだと。

そんなことはもう散々、

自分でためしてみたんだと。

己の中途半端さとか、きたなさとか、

「心と体が喧嘩」しちゃってコントロールできない感情とか

もちろん、恋人の喪失に向き合いきれない状態とかに

自分ひとりで立ち向かって、勝手にいっぱい苦しんで、

もうあがきくたびれたあとなんだと。


大人の階段今まさにのぼり中の少年の孤独や葛藤に

もうただそっとよりそって欲しいんだと

そういう経緯が凝縮されてますよねえー

一行の歌詞から立ち上ってくる情報量がすごいんよ



『ハルノヒ』もいい……

クレヨンしんちゃんの世界観を反映させたメロもいいけど

やっぱサビが強い……

あいみょんほどナイーブな歌詞も書ける人に

(つまり、生活の不安やつらさをも前提にしたうえで)

こんな強くて明るい歌詞にのせて喜びを全身で歌われちゃうと

もうダメ……泣く……



あいみょんまだ26歳

末恐ろしいです、たのしみ