北九州市の小倉は、本州から九州への玄関口である。
古くから陸海交通の要地である。
小倉市街の中央を南北に流れる紫川は、小倉のシンボル的な川である。
紫川は平成の初め頃から、水質、川筋、橋等の整備を進め、
河口から2㎞弱の間に10本の橋が、それぞれ異なるコンセプトで架けられた。
紫川十橋は以前から気にかかっていたので、
今回の帰倉の折に、河口の橋から上流の橋まで巡ってみた。
当日はあいにくの雨で、傘を差しながらの撮影だったので、
ISOをかなり上げて手振れ防止をした。
1 海の橋(紫川大橋)87m
海の橋は一番海に近い橋で、橋の直ぐ向こうは玄界灘。
潮の匂いを嗅ぐことができる。
モニュメントは帆船のマストをイメージしている。
車道を挟み、両側の歩道の、三本の橋で出来ている。
歩道は車道よりた高く設定している。
2 火の橋(室町大橋)77m
明治時代に紫川で行われていた鵜飼の漁の火をモチーフとしている。
両側に数本弓なりに突き出ている物体は、ガスの炎が出せるようになっている。
高欄の模様は波をイメージしている。
この橋から上流の橋の区間の河川敷はテラス状態で整備されており、
親水公園的なっている。
3 木の橋(常盤橋)85m
常盤橋は長崎街道等の起点で、古くから橋が架けられていた。
1692年に建て替えられた時に、常盤橋の名前がつけられた。
橋は人道だけで、河畔は花壇などで整備されている。
また、橋の周辺には、江戸時代の石の橋脚や、
伊能忠敬が九州の測量の起点としたことの顕彰碑、
長崎街道の説明パネル等、歴史的背景を知ることができる。
橋を渡った先が長崎街道の起点で、室町筋から長崎街道が始まる。
◎ 長崎街道
長崎街道は江戸と長崎を継なぐ街道で、小倉からは距離 約228㎞、 25宿の街道。
鎖国状態だった江戸時代、
長崎に持ち込まれた海外からの物資・文化・学問・技術・海外情報、等々が往来した。
また、坂本龍馬や吉田松陰など、維新の志士たちも往来したことだろう。
絵図の赤い線が長崎街道で、私の生家は左側の長崎街道に接していたようだ。
4 石の橋(勝山橋)88m
勝山橋は、小倉の東西を結ぶ中核的な橋である。
川の左手(東)が繁華街、右手(西)は旧小倉市役所・旧小倉警察署や小倉祇園の八坂神がある。
以前は、西鉄の市電が走っていた。
人も車も往来の多い橋で歩道も広く、幅員が40mある広い橋である。
小倉城の外堀であった紫川に続く石畳みがモチーフの橋。
5 水鳥の橋(鷗外橋)90m
小倉ゆかりの文豪 森鴎外と、
河口に馴染みのカモメを取り込んでデザインした、ユニークな形の橋。
橋の中央部分がカモメの翼なのか飛び出ている。
橋は人道だけで、西(向う側)に渡れば正面に小倉城、左手に北九州市役所と、
新旧の行政の役所が揃っている。
東(手前側)に真っすぐっ進と森鴎外旧居に行くことができる。
橋の中央には、カモメと戯れる少女像が水鳥の橋の雰囲気をだしている。
6 月の橋(宝来橋)34m
支流の神獄川が紫川に注ぎ込む場所の短い橋。
ここから200m余りの上流には、北九州市の台所である旦過市場がある。
こころあたりから、対岸の小倉城を良く見ることができる。
小倉城は、関ヶ原の戦い後に細川忠興が入り、1602年から本格的に築城を始めた。
細川家が熊本に封じられた後に、九州監視の要として譜代の小笠原家の居城となった。
7 太陽の橋(中の橋)79m
この橋もとてもユニークな橋だ。
広い歩道に、北九州市の市花「ひまわり」を色鮮やかに咲かせている。
さらに、ユニークな別称「マカロニ星人」と呼ばれている7体の立像が興味を引く。
正面の右手の木立の向こうには、松本清張記念館がある。
作家の記念館としては、閲覧をお勧めするピンクラスの記念館である。
橋のウエーブした高欄は、北九州市を取り巻く山々を象徴している。
江戸末期にこの辺りは干潟や洲が広がっていたので、
親水遊びのできる「州浜ひろば」になっている。
対岸からは、新旧役場の小倉城と北九州市役所を一望できる
8 鉄の橋(紫川橋)84m
北九州市は八幡製鉄所を軸として、かっては四大工業地帯として栄えた鉄の街である。
鉄の多様性をモチーフとした橋。
上部が狭くなているのも特徴的である。
鉄骨を額縁に小倉城をズームでアップ。
9 風の橋(中島橋)86m
高さ35mの大きなモニュメントが目立つ橋。
上に何もない空間を走り抜ける風をテーマにしている。
モニュメントは橋の一部を川にはみ出した場所に設定されている。
沢山の風を受け、モニュメントが良く回転するようにしているのだろうか。
10 音の橋(豊後橋)76m
音をテーマにしている。
斜めに張られた鉄筋はハーブを連想する。
◎ 水環境館
鷗外橋と勝山橋の間に水環境館がある。
ここらあたりは海に近く潮の干満により、海水が入れこんでくる。
淡水と海水に生物が、150種類も生息している。
紫川に生息する生物を水族館のように展示しており、体験できる施設となっている。
館内は紫川の水面より低く設営されており、
紫川の水中を見れるように河川観測窓が設定されている。(上の写真の左手庇の下が観測窓)
紫川の淡水の下に玄界灘の海水が潜り込み、ゆらゆらする状態を「塩水くさび」という。
塩水くさびを川の横から観察できるのは、日本ではここだけである。