「Line」のこと  shaudowのひとりごと124   

         H・A・笑童 2024.04.15

 

 

 便利な時代になったものだ。

 

 振り返れば東京23区で当時の電電公社がポケットベルのサービスを開始したのは昭和43年(1968年)だった。

 

 最初は営業マンや経営者、あるいは医療関係者に利用されていたのだが、昭和60年(1985年)、電力の自由化に伴って新規の通信会社がサービスを開始すると、ポケットベルは爆発的に全国に普及した。

 

 当初は固定電話からポケットベル所有者に一方的に呼び出し信号を送ると、それを見た人は近くの公衆電話から送信者に電話をかけるというもので、電話の着信機能だけを働かせたものであった。

 

 それからは数字をポケットベルに表示できるようになり、続いてカナや漢字まで送れるようになると、外出する社員をすぐに連絡することができる反面、呼び出された社員にとっては「こき使われる」という印象を持ち、不評だったのかも知れない。

 

 まだカナ表示がなかった頃、「0840」が「おはよう」、「14106」は「愛してる」、このような言葉遊びが流行ったのも当時の文化であったが、今はその意味さえ知らない人の方が多くなってしまった。

 

 その後、移動式電話の開発、普及とともにポケットベルはその姿を消してしまった。

 

 しかし当初の携帯電話は、補償金200,000円、月々の基本使用料が30,000円、通話料は6.5秒に10円という高価なものであったため、気軽に手の届くものではなかった。

 

 移動式携帯電話が「スマホ」と呼ばれる現在では、一家に一台どころではなく、お年寄りから小学生まで持っているばかりか、子供たちの方がその機能を十分に使いこなしているようにさえ思える。

 

 本体価格や通信料などを眺めると、まだまだ安い買物ではないのだが、便利であるのに加え、子供たちの安全確認を考えて持たせてしまう親の気持ちも理解できる。

 

 そこで今回のテーマである「Line」だが、実際使ってみると便利であることに疑いようがない。

 

 1対1はもちろん複数の人たちとも同時に連絡が可能であるし、映像も動画さえも送信することができる。

 

 しかも今までの電話回線ではなくインターネット回線なので通話も無料というのだから申し分ない。

 

 それほどに言うことなしのLine機能だが、本当に弱点はないのだろうか。

 

 こんな経験をしたことはないだろうか。

 

 何気なく友人とLineをしてると、急に友人が怒り出した。

 

理由を尋ねると、

 

「えっ、そんなつもりで言ったんじゃないよ、私が伝えたかったのは実はこうなんだよ」

 

 普段行っている他愛のない会話であっても、面と向かっていればお互いの顔やしぐさを見ながら、意見の相違に伴うズレを瞬時に発見し、すり合わせすることができる。

 

 しかしLineではそうはいかない。

 

 文字だけで真意を伝えることは難しく、真逆の思いが相手に伝わってしまうこともよくあることだろう。

 

 うまく修復できればいいが、古い友人と疎遠になってしまうことにもなりかねない。

 

 便利なものにはトゲがあるものだ。

 

「トゲ」よりも「便利」を優先してしまうのが現代人なのだろうが、なかには「トゲ」にも気づかない現代人も増えているのかも知れない。